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【僕に託そうとしてたものは
呼吸や言葉だけじゃないでしょう
どうか、思い出して
それがまた僕になる】
僕が彼女にLINEを送ってから、いつも通りのテンポで返信が来ることはなかった。
すぐに既読はついたけど、何も言葉は僕に与えられることはなかった。
やっぱり迷惑だったのか、あの電話は最後の別れの代わりだったのか。
僕は彼女と出会ってから、縛られて生きてきたつもりなど一ミリもなかった。
煙草だって違う銘柄を吸おうと思えば、吸うことだって出来た。
だけど、それを選び続けたのは僕の意思だ。
僕が音楽とちゃんと向き合って、自分が演奏したいと思ったのは確かに彼女の影響だった。
だけど、それも選び、今まで続けてきたのは僕の意思だ。
縛ってしまったと言った彼女はきっと、僕に自身の希望を託してしまった後悔みたいなものがあったのかもしれない。
自分には出来ないと諦めてしまって、それを僕に背負わせてしまったと。
あの時、謝らないで欲しかった。
ありがとう。とたった一言聞ければ、それだけで僕は十分だったのに。




