7、街へ入る方法
何とかバーナードキューちゃんを負ぶって下山し、やや木々が疎な所まで来た。
「ハァハァハァハァ...もぅ、無理!ハァハァ..キューちゃん..休憩ーー•••!」
もう足腰パンパンだしガクガクだし•••
一歩も動ける気がしない•••••!
『何だ、着いたではないか。さすが吾の案内!大義だマオ!』
えっ•••?着いた??
よくよく見ると木々が疎ではなく、森の出入口。
「つ•••着いたーー!途中キューちゃんを捨ててしまおうかと思ったけど•••やったよ!」
疲労感はMAXだけど、厳しい修行に耐え抜いたような万感の思いだ!!
しかし乳酸の蓄積された足は全く思い通りにならなくて、気持ち的には30㎝はジャンプしてるけど実際には1㎜も上がってなかった。
何ならしっかりと地面に足を付いていられず地面にフォーリンラブ。
いい加減降りておくれ•••
しばし回復に時間がかかったけど、何とか生まれたての小鹿からは脱する事が出来た。
「さて!それじゃ行きますか!」
気合いを入れて声をだした時、魅惑のチャイムが頭の中で鳴った。
ピンポーン
(はい!白崎ですよー!)
(•••シュリムイカイより返礼品のお届けに参りましたー)
やや食い気味に返事をした事に、どうやら引いているらしい雰囲気。
そんな事は気にしない!
受け取りの返事をすると、目の前に何の変哲も無いリュックが表れた。
ピロン♪
"下山ダイエットお疲れ様です。
シュリムの街へ入るに際し、必要であろう物と時空間バック、リュックバージョンでお届けしました。
時間経過せず、お好きなだけリュックへと入れる事ができます。
街の入口にある検問所で必要な身分証も入っています。ご確認下さい。"
何だって•••時空間リュック?何てファンタジー的アイテムなんだろう。
滅茶苦茶便利じゃないか!
身分証ってどれだろう•••
まさかこれ••じゃないよね?
狸を象った乳白色のプレートに紐が伸びて首からかけられるようになっていて•••
例えるなら、園児が付けるようなネームキーホルダー。
恐る恐るプレートを見ると
"シラサキ マオ 23歳(非公開)
シュリム国民
ギルド所属なし"
ええ、これを書き替えるなら
"しらさき まお 23歳(非公開)
〇〇幼稚園 ○組"
まんま園児のネームプレート。
異界神様、身分証もバックも助かります。
でも、この形は如何かな!?
感謝しつつも罰当たりに文句を言いながらリュックを開け財布をしまった。
この財布が全部コインのせいで、地味に重くて仕方がなかったのよ。
そして、気持ちも切り替え街へ向け出発!
山を下りてからは整備されてはいないが平坦な道が続いた。
今だ下山気分の足は不自然な歩き方をしているけど、数倍も歩きやすくて•••
「平坦が1番だ••••」
思わず呟いてしまうほど。
その腕には力を使ってやや痩せたキューちゃんが、グッタリとしている。
『吾はお腹が空いてもう歩けない。スリムな体になってしまった•••。』
いやいや、あなたは一歩も歩いていません。
そしてスリムにはまだまだほど遠いと思われますよ?
この中年ぐうたら狸を痩せさせるのは•••
不可能な気がしてきた•••。
そして人の姿も見え始めた所まで来て、いよいよだと思うと心臓バクバク。
検問所への列に並び周りを見渡すと、色々な格好や姿の人がいた。
犬のような耳に尻尾をつけた人や小柄な体型なのにガッシリした体格の人。ファンタジー小説の中で言われる獣人やドワーフと言う種族だろうか?
感動でキョロキョロしているうちに順番となり、例のプレートを見せた。
「シラサキ マオちゃんだね?
確認しました。良くその幼さで門の外に出るお使いから無事に帰ってこれたね!
後でお使いに出した人を懲らしめねばいけないが•••
マオちゃんお帰りなさい。中にどうぞ!」
実にあっさりしたものだった。
しかし幼いときたか。やはりどの世界もアジア人は幼く見えてしまうものらしい。
腕狸を縫いぐるみか何かかと思ったのだろうか?
いくら乙女でも、こんな太っちょな縫いぐるみなぞ持ち歩かない。
『マオ、今とてつもなく吾に失礼な事を思わなんだか?』
縫い狸をナデナデして誤魔化し、ドキドキしながらいよいよ街へと入った。
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