7
重ねられた手。
指先に触れた、私の知らない熱。
「自分でも、まさかって思ったよ。小さい頃から知ってる女の子に惹かれるなんて…。最初は信じられなかった。」
遠い昔、カート様は幼い私の手を引いて遊んでくれた。
優しい手とぬくもり。
でも久しぶりに触れた手は馴染みのあるものではなくて。
「この屋敷に来る度に君を探した。どうすればその笑顔を、君を手に入れられるか…そればかりを考えた。」
気が付くとぐるぐるとカート様の告白が頭の中をまわる。
心臓がドキドキとして落ち着かない。
細やかな訪れは変わらず続いている。
変わったのは別れ際に指先にそっとされるキス。
「…ナ、リーナ!」
恒例になってしまった指先のキスを受け、カート様が帰ったあと部屋でぼうっとしていた私は、自分を呼ぶ声にようやく意識を取り戻した。
「はっはいっ!」
「最近のリーナはぼんやりしてるな。」
「そんなことは…」
「そうか?なんかあっただろ。大好きな兄さまに話してみな?」
ニヤニヤとのたまうお兄さまに白い目を向ける。
なーにが大好きな兄さまよ。
ひとをおもちゃにしてるだけのくせに。
「何かあったとしてもお兄さまにはぜっっったい話さないわ。」
「なんだ。つまらない。」
「…で?なにか御用ですか?」
「いやー?カートが帰ったあとのリーナが面白くてなー。覗きに来ただけ。」
…こっの人格破綻者!
「あいつの人生かかってるし助言してやろうか?」
「カート様の人生?」
「お前のこと一生かけて口説くらしいよ?」
「そんな馬鹿な」
「そんな馬鹿を本気でやるつもりなんだな。さすがに可哀想だろ?」
可哀想と言いながらものすごく楽しそうだ。
「助言はいらないです。」
「そ?じゃあひとつ聞いてもいいか?」
「なんですか?」
「ぼーとしてるときのリーナは何を考えてる?」
「なにって…」
指先にふれるくちびる。微かな吐息。私とはまったく違う少しひんやりとした大きな手。
一瞬で真っ赤になった私を見てお兄さまがニヤリと笑った。