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視線と言葉から、私を好きだというのは事実なんだろう。
ただなんで私?と不思議に思う。
正直なところ自分の容姿には自信がある。
でもその容姿だって家柄が伯爵家しかもそれなりに裕福な、特別に質素にしているわけでもなくつまりは身なりにそこそこのお金を投じれるわけで。
そこに可愛い子が産まれればそれはそれは磨きたてられ飾り立てられ、極上のご令嬢の出来上がりとなる。
でも!それだけ!本当にそれだけで、あとは誇れるものは何もない。
「私、可愛いだけが、取り柄ですよ?」
最終的に、この一言に尽きる。
自分でも情けなさすぎて涙が出るけど。
「それを言えてしまう所も好きなんだけどな。」
うわわわ!これはまさに口説かれているってことなんだろうか!これまでそんな素振り少しもなかったのに!
甘い瞳に甘い声。
とにかく全部が甘い。
前に会ったときはこんな雰囲気はまったくなかった…はず。
たぶん。
みるみる顔が赤くなった私にカート様は嬉しそうな笑みを浮かべる。
「珍しいね、動揺してる?少しは意識して貰えそうかな?」
「恥ずかしい…です。」
「私は嬉しいな。少なくとも昨日までと私を見る目が違うでしょう?」
「はい。それは確かに。」
産まれてからずっと、家族に、会う人会う人に可愛いと言われ遠回しに告白めいたものをされたこともあったけれど、これほどのわかりやすさでアプローチを受けたことはなかった。
流石の恥ずかしさに手で顔を覆う私にさっきまでの甘い瞳とは違う真剣な眼差しが注がれた。
「婚約は正式にロックウェル侯爵家から申し込みをした。撤回はないよ。申し訳ないけど爵位は私の方が上だ。断るという選択はないと思って。」
「…はい。わかりました。」
「だから…」
一瞬瞳に迷いが見えた。
迷いと、罪悪感、だろうか。
「だから、今すぐじゃなくてもいい。ずっと、ずっと後でもいい。いつか、私を好きになってくれないか。」
縋るような声色だった。