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まずは話を、と中庭の東屋へ向かった。
正面に座る彼女からは困惑しか伝わらず、少しばかり落胆する。
まあ、そうだ。
だからこそ馬鹿な真似をしてでも彼女の婚約者という肩書きを手に入れたわけだ。
「冗談…ではないのですか?」
「冗談に見える?これでも必死に勝ち取ったんだけどな。」
「必死…?いったいどんな賭けをしたのですか?」
「それはちょっと言えないな。男のプライドもあるし。レイにも聞かないで貰いたいな。」
「お兄さまも知ってらっしゃるの…。」
呆れた声から程なく恐る恐るといった雰囲気で訊ねられた。
「理由を聞いても良いのでしょうか?」
「理由…ね。普通だよ。君が欲しかったから。」
「私を?何故?」
「何故?本当に分からない?私が君を好きだからだよ。」
そんなにびっくりするのか、という程に彼女は驚いていた。
少しもそんなこと思ったこともなかったと言わんばかりだ。
これでも、家柄容姿と自分自身が多くの貴族令嬢からみて優良物件である自覚はある。
その優良物件を目の前にしても変わらなかった彼女に惹かれた。
だから…意外!という態度に傷つくのはおかしい。
でもやはり少なからずダメージを受けた。
「困っているのは私の事を意識していなかったから?それとも他に意中の人がいる?」
「あ、いえ、思いを寄せるような相手はいないです。」
「もうひとつのは否定しないんだ?」
「えっあのっ本当にごめんなさい…急だったから…。ずっとお兄さまと同じように思っていましたし…。」
「いいよ。君の意識にないのは分かっていた。だから…そうだな、まず兄の親友とか、兄のような、ではなくひとりの男として意識してもらえない?」
「男の人として…?」
「そう。難しい?」
「うーん…わからないです…。それに…なんで私を…?カート様なら他にふさわしい方がたくさんいらっしゃるのに。」
俺にふさわしい方…ね。
本来なら家柄に見合う、もしくはお互いの家に利益がある結婚が普通だ。
客観的に見ても容姿は釣り合い、家柄もさほど問題ない。
気になるのは利益のほうか。
「私に好かれるのは迷惑?嫌かな?」
「いえっ!気持ちはっ気持ちは嬉しいです。迷惑とか、嫌とかではないです!」
「そう…良かった。気持ちが悪いとか言われたら立ち直れないな。」
…だからそんなに驚かなくても。
ちょっとだけ文章を変えました。
カートの心情に少し矛盾が(汗)