侯爵夫人と伯爵夫人のお茶会
ふたりとも、最初から考えていた事ではなかった。
ただ子供がある程度大きくなり、話す内容が子育ての悩みから子供の将来の心配になり、ふと気付いただけだった。
そうだ、だったらあの子達を結婚させればいいじゃないか──と。
ある日の昼下がり。
30年来の友人であるロックウェル侯爵夫人とモーズレイ伯爵夫人が優雅にお茶を飲んでいた。
「旦那様がリーナのお婿探しをしようか、なんて言い出したのよ。」
「あらまあ!まだそんなに急ぐこともないのじゃない?」
「そうなのよ。ようやく2ヶ月後に成人よ。デビューすれば出会いもあるのにね。」
「どうしたのかしら。むしろ適齢期ギリギリまで決めないのかと思っていたわ。」
「リーナったらいつまでもそういうことに興味がないみたいで…。本人に任せていたら行き遅れた挙句変なのに捕まるんじゃないかとかおっしゃっていたわ。」
「リーナはのんびりしているものね。可愛いから貰い手はいくらでもありそうだけれど。」
「私も旦那様に言われて確かにそうだわ、と思ってしまったわ。でもねぇ。リーナの好きなようにさせたいの。そういえば、カートはどうなの?」
「あの子?前はそれなりに遊んではいたみたいだけど…。最近はどうかしら。でも特定の誰かを決めたわけじゃないようよ。」
ふとあら、と伯爵夫人が思い出した。
「公爵令嬢とのお話はどうしたの?」
「カートが嫌がってしまって…。畏れ多いことだけど、話が本格的に進む前にお断りさせて頂いたわ。」
「あらまあ」
「リーナよりカートの方が深刻よ。あの子、ちょっと女性不信なのよね。」
「そうねぇ。まあわからないでもないわ。」
ふう、と同じようなタイミングでため息をついた。
その時、侯爵夫人がハッとする。
「ねぇ、私、いい事思いついたわ。あの子達、お見合いさせてみない?」
「まあ!でもリーナとだと少し歳が離れているのではない?」
「6歳くらい大した事ないわよ!リーナは身分や容姿で人を見ないしカートにいいのじゃないかしら!」
「上手くいくかしら。でも楽しそうだわ!」
「でしょう?ただ、あの子たち年頃になってからは疎遠になってしまっているのよね。」
「今度晩餐にでも呼ぶわ。リーナは時々こちらに来てはいるけど会わない時間だものね。」
「そうね!一度顔合わせてから反応を見たほうが良さそうね。良ければお見合いをするのでいいかしら?」
きゃっきゃっと貴婦人たちは計画を立てていく。
ただ、彼女達は知らなかった。
その1年前、カートが偶然会ったカテリーナに恋に落ちたことに。
そして今まさに伯爵家に赴き、婚約の申し込みをしている真っ最中なことに。
数日後。
あら、私たちの出る幕じゃなかったのね、と少々残念そうにしていたのだった。




