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晴天の霹靂  作者: 菊花
本編
14/22

13



どくどくどくと耳に響く音は私と同じくらい早かった。

そうかカート様も私と同じなんだ、そう思って力が抜けた時縋るようにぎゅっとされた。

ふと、あの日の声が蘇る。


──いつか、私を好きになってくれないか──



カート様の身分から、私には拒否権がない。

たぶん、私の身だけを手に入れることは容易だったはずだ。

でも、きっと、私の心も欲しいと思ってくれたんだ。


好き、と自然に言葉が出た。

同じだけの気持ちかはまだ分からないけど、せめて、今ある分だけの気持ちは伝えなくては、と思った。


「好きだよ。」


何度も何度も伝えられる言葉に顔を上げる。

そこにはこれ以上はない、というほどの笑みが待っていた。






思いが通じてからのカート様の暴走っぷりは凄まじかった。



「リーナがお嫁さんになる日が待ち遠しいな。待ちきれないから少し前倒しする?」

「いえ、予定通りでお願いします。」

「…何故?」

「私!まだ!勉強することいっぱいあるんですよ!」

「嫁入りしてからでも遅くないよ。うちに通うより楽でしょう?」

「私の気持ちの問題です!」

「俺の気持ちの問題は?」


そう言って私の腰を引き寄せ頬に口付けをする。

甘い。甘すぎる。

べったべたのどろっどろだ。

溺愛ってこういう事を言うんだろうか。

正直なところ私自身が胸焼けしそうだ。



「っカートさまっ!」

「何かな?」

「私、ほんとーに普通なんですよ。だからこそカート様に見合うようにならなければいけないんです!」


心持ち体を離し、カート様を見据え力説する。

そんな私を見てさらに瞳を甘くした。


「…リーナ、好きだよ。」

「今そんな話してました!?」

「リーナはきちんと努力してるでしょう?それで出来ないことがあっても誰も悪く言わないよ。」



…いや、それはない、と思う。

カート様はどこまでも私に甘すぎる。


そうこうしているうちに顎に手をかけられ上を向かされる。


「まあ、誰にも何も言わせるつもりないけど?」





にっこりと極上の笑みとともに、あまい、あまい口付けが落とされた。

このまま溶けてしまうんじゃないだろうか、そう思いながら瞳を閉じたのだった。







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