13
どくどくどくと耳に響く音は私と同じくらい早かった。
そうかカート様も私と同じなんだ、そう思って力が抜けた時縋るようにぎゅっとされた。
ふと、あの日の声が蘇る。
──いつか、私を好きになってくれないか──
カート様の身分から、私には拒否権がない。
たぶん、私の身だけを手に入れることは容易だったはずだ。
でも、きっと、私の心も欲しいと思ってくれたんだ。
好き、と自然に言葉が出た。
同じだけの気持ちかはまだ分からないけど、せめて、今ある分だけの気持ちは伝えなくては、と思った。
「好きだよ。」
何度も何度も伝えられる言葉に顔を上げる。
そこにはこれ以上はない、というほどの笑みが待っていた。
思いが通じてからのカート様の暴走っぷりは凄まじかった。
「リーナがお嫁さんになる日が待ち遠しいな。待ちきれないから少し前倒しする?」
「いえ、予定通りでお願いします。」
「…何故?」
「私!まだ!勉強することいっぱいあるんですよ!」
「嫁入りしてからでも遅くないよ。うちに通うより楽でしょう?」
「私の気持ちの問題です!」
「俺の気持ちの問題は?」
そう言って私の腰を引き寄せ頬に口付けをする。
甘い。甘すぎる。
べったべたのどろっどろだ。
溺愛ってこういう事を言うんだろうか。
正直なところ私自身が胸焼けしそうだ。
「っカートさまっ!」
「何かな?」
「私、ほんとーに普通なんですよ。だからこそカート様に見合うようにならなければいけないんです!」
心持ち体を離し、カート様を見据え力説する。
そんな私を見てさらに瞳を甘くした。
「…リーナ、好きだよ。」
「今そんな話してました!?」
「リーナはきちんと努力してるでしょう?それで出来ないことがあっても誰も悪く言わないよ。」
…いや、それはない、と思う。
カート様はどこまでも私に甘すぎる。
そうこうしているうちに顎に手をかけられ上を向かされる。
「まあ、誰にも何も言わせるつもりないけど?」
にっこりと極上の笑みとともに、あまい、あまい口付けが落とされた。
このまま溶けてしまうんじゃないだろうか、そう思いながら瞳を閉じたのだった。




