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「なんだか虫が良すぎる気がするんです!!」
バァン!とテーブルに手を付く。
「どうしたの?」
ああ今日も麗しい微笑を惜しげも無く晒しちゃって!
婚約発表がそこそこ社交界を賑わせ、それもようやく落ち着いてきた頃。
待ってましたとばかりにカート様からのお誘いが舞い込む。
忙しいはずなのに…無理をしていないか心配になる。
「カート様に求婚されてほいほいと釣られてしまったような気になるんです!」
「…何の話かな?」
「だって!婚約が決まって、すすすす好きとかって言われたらやっぱり嬉しいじゃないですか!今まで露ほども意識してなかったのに、なんか気になってきちゃうとか、ずるくないですかっ!?」
「露ほども意識してなかった…」
「気になるのそこですか!」
そうだ、モヤモヤするのはそれだ。
成人し、デビューもすませ、カート様に伴われ社交界へ出るようになり。
なんとなく耳にしていたカート様の人気ぶりを目の当たりにすればするほど申し訳ない気持ちになる。
この中には本気でカート様を好いていた方がいらっしゃるんじゃ、と。
そこへぽっと可愛いだけの小娘が出てくる。
しかも熱烈に、彼を好きってわけでもなさそうな。
自分で言っててもなんだか腹立たしいわ…。
すごく嫌な女じゃない!?
「俺としては万々歳だけど。」
「万々歳…」
「だってそうでしょう。このまま単純にアプローチしても冗談だと流されそうだったし。」
「うっ」
ありそう!でもカート様は大人だし、まさか私を、なんて思いもしない。
「結婚を申し込めば少なくとも冗談だとは思わないでしょう。あとはちょっと急を要したというか。」
「急を?」
「リーナは知らなかったのかな。小父上が君の誕生パーティで結婚相手を探すと言ったんだ。そこでリーナが気に入った相手をってね。」
驚きに目を丸くする。
そんなこと、まったく知らなかった。
物事は私の預かり知らぬところで大きく動いていたようだった。
「で?この話はどこに行き着くの?」
なにやらウキウキとした様子で問われる。
…もう気付いているんだろうなぁ。




