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39.追放魔導士一行、魔法大国へ

エルフ姫100万PV、本当に有難うございます。





「ブルスケッタの『名前』が駄目なのか?……」




 【エルフ姫】による導き(無茶振り)から始まったダンジョンの魔晶核(コア)の確保も無事に終わったのも束の間、今度は異世界からやって来た少女のアヤネに国王陛下との縁談話が舞い込んだ。

アヤネが若き陛下ブルスケッタとの縁談を逡巡している理由は『名前が気になるかららしい』。

今までもアヤネが生きてきた異世界との文化の差異に戸惑ってはいたがこんな理由で陛下との縁談を辞退するかもしれないとは、開いた口が塞がらない。


 姫様がアヤネの相談を受け付けなかったのはこれが原因か?……

こんなの相談されても答えようが無い。色恋の経験が豊富なら答えられるのか?いやそうじゃないだろ。

例えば料理屋の名前が『魔王』だから怖くてその店に入れませんと言ってるようなものだ。いやその場合はそんな店名にする店主が悪いのか?


 ブルスケッタや宰相様に縁談辞退の理由をどう説明すればいいんだ?

『見つめ合いながら陛下の名前を囁くのはどうしても笑っちゃうんです』なんて言ったらそれこそ本当に不敬罪になりそうだ。


「あの知りたいですか?」


「何を?」


「『ブルスケッタ』という料理はどんな料理なのか?」


「うん。それは知らなくてもいいや」


 詳しい『ブルスケッタ』の料理法なんて知ってしまったら俺まで陛下と謁見するときに思わず吹き出してしまうかもしれない。不敬罪は未然に防がねば。


「……それでアヤネは陛下との縁談を辞退したいのか?」


「自分でもよく分かりません。そもそもあの陛下の男の子の事もまだ全然知らないし……ただ……」


「ただ?」


「ケントさんやサリーさん、魔道具工房の皆と色んな事に挑戦するのが楽しかったというか。王妃様としてお城に閉じこもるのはまだ早いというかなんか違うかなって……」



 つまるところ、まだ若いし色々経験したいと云う事か。

アヤネは今でも以前の世界の衣服である紺色のジャージを寝間着代わりにしている。

まだこの世界で誰かと睦み合い生きていく気持ちには至れないか。


「じゃあ今回の縁談を受けるにはまだ気持ちの整理がつかない。この世界に慣れるのにまだまだ時間が必要、俺達と研鑽を積みたいからと説明すればいいのか?」


「はい……受けるか断るかなんて直ぐには答えられません。結婚なんて一生の問題だし。相手だって慎重に選びたいし……」


 そう呟きながらアヤネは俺の方をまじまじと見る。


「ケントさんは結婚、考えないんですか?」


「俺か?俺は……」



 そう尋ねられ、脳裏を過ぎるのは紅い髪を靡かせながら燃え盛る炎を纏い、凛然として誇り高く闘う【焔闘士】の彼女。

アルべリスは今も【勇者】パーティーの一員として闘っているんだろうか?既にパーティーから追放(クビ)宣告を受け彼女の祖国アズサに戻っているのだろうか?

メルフェスにいてもそう云った風の沙汰は全く届いてこない。


 『万感予知』のサリー姫の言葉通りに動けば俺と彼女(アルベリス)幸運結末(ハッピーエンド)が待っていると信じて行動していたが、魔晶核(コア)を扱っての魔導砲の創作は俺の伝手を当たれと姫様に丸投げされてしまった。


 俺の伝手となると魔法技術学院が存在する魔法大国イルジョニアスか俺に魔法鍛冶技術を習熟させてくれたドワーフの里、ザガンツの二択になる。

まあ先にどちらを訪れるかはまた今度考えよう。



「俺はまず魔導砲を完成させる事が最優先だな。今は姫様と一緒に行動するので精一杯だ」


姫様の無茶振り、いや導きの先に彼女(アルベリス)との暖かい未来があると信じて―――


「そうですか……じゃあ私も魔導砲作りにお供します!魔導砲って完成したらこの国の王城にも備え付けられるんですよね?沢山複製しないと!」


 アヤネの『無彊(むきょう)複製』は魔導砲までも複製出来るんだろうか?

改めて恐ろしい超特殊能力(チートスキル)だ。



「じゃあ縁談の件はもう少し待って欲しいと宰相様に伝えるからな?王族の都合でそこまで待てないと破談になるかもしれないがいいか?」


「そうなったらそれはそれで大丈夫です。魔導具工房の一員として人々の役に立てるよう生きていきながらもっと素敵な人を見つけます」


ダンジョン攻略でアヤネは心身とも逞しくなったようだ。


「じゃあ今日はもう寝ようか。あ。明日は商業ギルドのマリリノ(マスター)に会いに行くからそのつもりで」


「はい!おやすみなさい」



  ***



「おはようございます……師匠師匠」



 翌朝、朝一番に迎賓館を訪れたのは魔導具工房の助手である双子兄妹ライジ&ライラだった。

真剣な眼差しの(ライラ)に対して、(ライジ)はまだ寝ぼけまなこを擦っている。


「そう云えば相談があるって言ってたな。ライラその相談ってのはなんだ?」


「私……魔法技術学院へ留学留学したいです」


「へ?」


 突然の妹の決意表明に目を覚ます兄。


「ひとりでもか?兄さまと一緒がいいなんて云ったら認めないぞ」


 俺はライラの決意のほどを確かめる。しかしライラは揺れる素振りを見せなかった。


「ひとりでもでも行きます。もっともっと強くなりたい……」


 『草魔の穴』の攻略に最後までついてこれなかったのが悔しかったらしい。

良かったなライジ。(ライラ)が自立してくれそうだぞ。そんな気持ちで(ライジ)の方を一瞥すると今にも泣きそうな顔をしていた。嘘だろ?



「嫌だぁああ、俺を置いていかないでくれライラァァァアアァァ!!!」


 迎賓館の玄関広間で突如、妹に縋り付いて泣き叫ぶ兄。


 ええぇ逆パターン?……


「兄貴しっかりしろ!」


「ライラが行くならおでもいぎまずぅぅぅぅ!!!」


……この兄妹、俺の手には負えないかもしれない。


 俺が立ち尽くしていると騒いでるのが聞こえのかサリー姫やアヤネも姿を見せた。

姫様はいつも変わらず鷹揚としながら微笑んでいる。



「あらあら。それでは皆さんで訪れましょうか?魔法大国イルジョニアスへ♪」



 俺達の次の目的地が決まった。



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