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38.異世界少女、居酒屋陛下に求婚される





「わ、私がこの国の王妃に?」




 【エルフ姫】による導き(無茶振り)から始まったダンジョン『草魔の穴』攻略も無事に魔晶核(コア)の確保に成功した。

そんな俺達を王都の迎賓館で待っていたのはこの国の宰相をしているグラウス様だった。


 グラウス様の話ではこの国メルフェスの若き国王陛下、ブルスケッタが異世界からやって来た少女、アヤネを娶りたいと申し出たのだ。

確かにブルスケッタはアヤネに恋慕しているのは火を見るよりも明らかだったが、動きが早い。


「宰相様、それは勅令……と云う訳ではありませんよね?」

 

 突然の王族からの求婚に戸惑っているアヤネの代わりにサリー姫が宰相様に尋ねた。


「も、勿論です。アヤネ様はこの国の民、ましてや貴族という訳ではありませんから陛下の申し出を受けるかどうかもアヤネ様本人の自由意志で御座います。ただ一度陛下とアヤネ様が直にお話しする機会を頂きたいのです」


「それって実質『お見合い』なんじゃ?……どうしよう……」


 一度陛下と対面してから断るのは至難の業だ。気軽に一度会ってみればいいとなどとは言えない。


「宰相様、アヤネはダンジョン攻略で疲弊し、突然の求婚の申し出に困惑しています。陛下との御対面の件は後日、返答させて頂いても宜しいですか?」


「う、うむ。それは仕方ないじゃろうな。今日は引くとしよう。行くぞよ」


 宰相様は引き連れていた数人の侍従を連れて、王城へ戻っていった。


 場が落ち着いたかと思えば、迎賓館のメイドさん達やライジ、猫耳兎耳のメネ&ライが騒ぎ出す。



「アヤネさん、この国の王妃様になるんですか!?大出世じゃないですか!?」

緑輝大剣(グリンファルクス)を扱う妃なんて出世どころか伝説になるにゃ」

魔晶核(コア)が纏う膨大な瘴気を祓う姿は【聖女】みたいだったぴょ」


「アヤネ様の専属メイドに立候補したいです!!キャー!」

「アヤネ様の神力(スキル)があればこの国の経済は安泰です!」



 迎賓館のメイドさん達の言葉を聞いて得心した。

宰相様がこんなに早くアヤネと陛下の縁談を持ち掛けたのも万物をいくらでも際限なく複製できる神力(スキル)無彊(むきょう)複製』の持ち主であるアヤネの事をこのメルフェスで囲い込みたいのだろう。



「あの、私は……」


 喧々囂々に盛り上がる周囲とは異なり、アヤネは悄然としている。

いきなり王妃になれますと云われても戸惑うのは当然だ。人生を左右するのだから、しかもアヤネは異世界からやってきたのだから猶更だ。


「はいはい、皆、散った散った。ダンジョン攻略で疲れてるんだ。今日はもう休もう。食事の準備は出来てますか?」

「今宵の晩餐はなんでしょうね♪」


「サリーティス様がお好きなオーク肉のローストビーフを用意しております」


 そう答えたのは姫様専属メイドのアルーさん。

ダンジョン攻略から離脱してからはメイド業に専念してたようだ。


「兄さま兄さま、お家に帰ろう……」「そうだな。では師匠失礼します」


 双子兄妹の妹ライラもライジを迎えに来ていた。ライラは俺の方に向かってきた。


「どうした?」


「師匠師匠……お話があります」


「解った。明日また迎賓館に来てくれ。その時聞く」「はい……」


 迎賓館の大きく豪奢な玄関広間に集まっていた人だかりも三々五々散っていった。




  ***



「ケントさん、ちょっといいですか?陛下との件で……」



 俺にあてがわれた迎賓館の部屋のベッドで寛いでいると、アヤネが扉を軽く叩いて、入室してきた。

陛下からの求婚を受けた少女と一つの部屋で二人きりになって大丈夫なんだろうか?



「こういう相談だったら姫様の方が適任じゃないのか?女性同士で話した方がいいんじゃ?姫様も呼ぼうか?」


「いえ、サリーさんには『アヤネさん自身が選択して決める事ですよ♪』って既に言われちゃいました……」


 未来が視える姫様に相談したらその最適解に従うしかなくなるから姫様は相談に応じなかったのだろう。


「それで陛下の対面の件、アヤネはどうしたいんだ?以前は豪奢でセレブ?な暮らしに憧れてるって云ったが、王妃になれるなんてこれ以上ない好機だぞ?」


「そうですね……」


「ブルスケッタが苦手なのか?若くして陛下の地位を戴冠したからどこか頼りなく見えるだけで中々の美丈夫だぞ?」


 あの紅茶色の髪に精悍な顔つき、ブルスケッタより優れた貌の持ち主なんて国中探しても五指に収まるくらいだろう。


「たしかに凄いイケメンだと思います。自分がお姫様に選ばれて玉の輿きたー!!な感覚もたしかにあります。けど……」


 やはり異世界の表現はどこか慣れないが一々突っ込みを入れるのは野暮だと自制している。


「けどどうした?」


「あの……男の人と恋仲になったらやっぱり抱きしめ合ったり、口づけしたり、見つめ合ったりするじゃないですか?」


「うん、そうだな」


 なんだ。もうそこまで考えているならアヤネも実は陛下との縁談、意外と乗り気なんじゃないか。


「見つめ合いながらお互いの名前を言ったりもしますよね?」


「まあ名前も云い合うだろうな。『○○愛してる』みたいな」


「その時の陛下の名前が……」


「??名前がなんなんだ?」





「『ブルスケッタ』って私がいた世界だと料理名なんです。しかも居酒屋料理になってる時もあるし。見つめ合いながら『ブルスケッタ』って言ったら絶対笑っちゃう……」






……そんな拒絶の仕方ある?






「エルフ姫」100万PV目前となりました。本当に有難うございます。

居酒屋陛下の小ネタを考えてた頃はこの話がこんなに多くの方に読まれるなんて全く思ってませんでした。

Not Guiltyでお願いします……


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