34.モフモフだけど強いです
「そんなにデカい斧槍に大剣で2人とも闘えるのか?」
【エルフ姫】の導きによりダンジョンの魔晶核を獲得する事になった俺達はダンジョン『草魔の穴』を攻略中だったのが大草原の臍に位置して冒険者も滅多に潜らない『草魔の穴』は魔物に溢れ暴走寸前だった。
あまりの魔物の数に思うように攻略も進まず、いつもの魔導具工房メンバーでは20階層以下の攻略は厳しいと判断した為、王都の冒険者ギルドのマスター、【英雄】ダグラスタに協力を依頼した所、助っ人として同道する事になったのは可愛い猫耳兎耳の女の子二人だった。
猫耳娘の名はメネ、兎耳娘の名はライ。
メネは斧槍、ライは大剣を背負っているのだが、明らかに本人達の体躯より武器の方がデカい。
斧槍や大剣は独特の緑色の輝きを放っていて、武器としての格を見せつけているが、可愛い容姿の猫耳兎耳コンビには不釣り合いに見えた。
「アタシ達はダグラスタの右耳、左耳にゃ。黙って見てれば解るにゃ」「そうぴょ」
「右腕左腕じゃないのか」
獣人族の間ではそういう表現なんだろうか?
「とっても頼もしいですね♪」
「ヤバい。あのコ達可愛い、モフりたい……」
アヤネは2人の動物的愛くるしさに陶然としている。
「アヤネ、あの二人はステータスってどうなってんだ?」
「え?はい。えーっと……。嘘!Lv.35もあります!」
「本当かよ……確かにそれなら助っ人だ」
「俺だってまだまだやれます!」
ライジはアヤネだけで助っ人二人にも対抗心を燃やす。
双子兄妹の妹、姫様専属のメイド、アルーさんの代わりに猫耳メネ、兎耳ライがダンジョン攻略に加わった。
現行パーティーは俺Lv.58、姫様Lv.24 アヤネLv.26 ライジLv.29 メネ&ライLv.35の6人になる。
『草魔の穴』21階層以降の攻略を再開した。
「鬼人の群れがこっちに向かってきています!」
アヤネが【地図】スキルで魔物の群れの流れを教えてくれる。
魔物で埋め尽くさんばかりだった浅い階層よりは魔物の数も少なくなって戦況的には余裕があるがそれでも上級クラスの魔物が数十匹の群れで襲い掛かっている。
この階層は如何にも洞窟の中という空間と異なり、荒涼とした平野が展開されていた。
鬼人の群れはまだ目視出来ない。
「まずは私が遠距離攻撃しますね♪『必中矢≪穿光≫』」
尽善尽美のエルフ姫がその碧い目を眇めて弓を光の魔法矢を番え、放つ。言葉に違わない閃光の速さで輝きを放つ矢が飛んでいく。
まだかなり距離があるが、姫様の弓術なら鬼人に的中しているのだろう。
この≪穿光≫を込めた魔法矢が通用しなくなったら姫様もパーティー離脱になってしまう。
「さあじゃんじゃん撃ちますよぉ。私もLv.上げたいですし。アヤネさん矢の複製お願いします♪」
「はい!『複製≪穿光矢×30≫』」
「うふふ♪『必中矢≪穿光≫20連発!』」
最初の鬼人の群れは姫様の弓だけで殲滅できたようだ。
それからも姫様の遠距離弓撃が続く。
「ふふふふふふ……連射連射ぁ!!魔法矢じゃんじゃん持ってきてぇー♪」
再び姫様が射手狂状態に突入してしまった。
「……エルフの姫様ってこんな人だったのにゃ?」
「アタシ達の出番がないぴょ……」
「サリー姫は『万感予知』の反動で苛々が溜まりやすいんだ。多めに見てあげてくれ……」
21階層はほぼ姫様の独壇場だった。この階層だけで姫様は習熟値を荒稼ぎしアヤネに並びLv.26に上昇した。
怪鳥が飛んでいた22階層もほぼ問題なく踏破した。
23階層は入り組んだ岩道を進まねばならず、遮蔽物が多い為、姫様の遠距離弓撃が使いづらい階層となる。
どうやらゴブリンジェネラルやグラップラーオーガ、ナイトオーガ等、鬼人の上位互換が群れで棲息する集落が存在するようだ。
その集落を突破しないと次の階層へ進めないと【地図】スキルで戦況確認したアヤネに断言された。
「いよいよアタシ達の腕の見せ所にゃ」
「この大剣の威力見せてあげるぴょ」
いよいよ獣人娘の本格的な対魔戦闘が見られそうだ。
「これってもうお城じゃないですか?……」
「ああ、廃城のように思える」
アヤネの【地図】スキルの情報では上位オーガの群れが固まっている集落があると云う事だったが、俺達の眼前に聳え立つのは土埃に塗れた茶褐色の岩の荒城だった。
百を悠に超えるオーガが棲息する城を落とさないいけないって事か?
「オガ?。オーガッガァ!!」
しかも荒城の高見にある櫓にいたオーガに俺達の姿をはっきり認識されてしまった。どうする?
俺の思考などお構いなしに猫耳兎耳コンビが飛び出して荒城を正面突破しようとする。
「細かい事は気にするにゃ!最初から全開にゃ!『闘身』」「アタシも!『闘身』」
すると今まで可愛いとしか言葉に出来なかった二人の体躯が突如膨れ上がり、膂力を兼ね備えた大人の雌へ変貌した。
「「「「「「ガァアアアアアア!」」」」」」
耳朶を打つ咆哮を上げて廃城から飛び出してきた上位鬼人達に対して二人は目にも止まらぬ速さで駆け上がり、緑に輝く斧槍・大剣を背から引き抜き薙ぎ払う。
強烈な薙ぎを喰らったオーガは吹き飛び、廃城に風穴を空けた。
「どんどん行くにゃ!」「鬼人共喰らえぴょ!!」
連携も阿吽の呼吸で、2人は背中を取られる事無く次々と上位オーガを吹き飛ばして行く。
これが獣人族の本気なのか。人間の膂力とは質の差が火を見るよりも明らかだ。
「凄い……なんですかあれ?」
「流石ダグラスタの右耳、左耳だけはあるな」
「たしかに2人とも格好良く変化されましたけどお耳は可愛いですね♪」
「ああ、アレ見た後だとモフり辛い……」




