第九話:ヒーローの葛藤 作者はむっつりスケベです!
作者はギャップ萌えが大好きです!
俺の混乱にお構いなしに赤の彼(声的に男と判断)に啖呵をきられる。おいおい、俺達は破壊活動をしていたアリ男をぶちのめしただけだぞ。
「行くぜ!マッドクリーチャー!!こんなに暴れやがって!」
引き続き真ん中の赤の彼の発言のようだ。だから、まわりをよく見ていただきたい。そう思っていたら、ブルーが気付いたようだ。
「松田君、ちょっと待って。倒れてるの全部アリ男だよ」
「そんな馬鹿な………、ってんな馬鹿な!?」
プリンスルナティックさんに負けず劣らず、騒がしいなあ。
「松田先輩ちょっとおちついて、って何これ、ウプ」
ピンクからも声をかけられる。青とピンクの二人は女のようだ。声とシルエット的に。二人の言葉でとりあえずレッドの彼も突撃を断念した。いらぬ争いは避けられそうだ。
その代わりにピンクが茂みの向こうに行ってしまった。えらいことになってるもんね、虫とは言え、グロ耐性ないとちょっときついレベルで。俺はもちろん異世界の戦いのおかげでグロ耐性は高い。
それはさておき、改めて根本的な部分から解決といこう。
「君たち誰だ?」
今一度、依頼人、もとい目の前の2人を見てみよう(ひとりどっか行っちゃったし)。
色は違えど、2人とも基本的なつくりは同じのスーツを身にまとい、顔もマスク(覆面の方のマスクね)で覆われていて人相は見えない。茂みに消えたピンクもちらっとしか見ていないが基本は同じのようだった。
全身タイツではない。革と金属をつなぎ合わせたような素材でできているようだ。結構前にどこかで見たことあるような気がするが思い出せない。
全体的なフォルムはスポーツのユニフォームっぽい。しかしさわやかさというより泥臭いというか暑苦しそう、特に赤。
そしてなによりなんでこいつバット持ってんだ?武器か?青はカードのようなものを両手にそれぞれ持っている、おそらくはナイフだな。
正義のヒーローだよな。到着遅かったけど。そういえばさっきプリンスルナティックさんが、敵対勢力がいることを言っていたな。それと、彼ら自身も名乗っていた、活動内容はよく分からんが、つまり彼らは正義の変身ヒーローで名前が、
「僕たちは熱血戦隊トウコンジャー!そして俺は、そのリーダートウコンレッド!」
「トウコンブルーです。向こうにモドしに行ったのは同じくピンクです」
ということか。
もっといろいろ聞きたいが、次はこちらが尋ねられる番だろう、次の発言を待つことにする。
「これはあなた方がやったのですか?」
名乗ってもらったし疑問には答えることにしよう。
「一応。事情は分からないが、テロリストか何かだろうと思って捕まえようとしたんだけど、人間じゃないって言われたんで、割と遠慮なしでやっちゃった♪」
「見たところ、お二人とも大分鍛えてるみたいですけど、冗談ですよね?」
ブルーの子も会話に参加してくる。
「いたってまじめだ。ところでピンクの子大丈夫?」
「いつものことですから」
青の子は色通りのクール系か。とはいえピンク放置もかわいそうだな。しかたない。
「シャルル、すまんがこの2人に簡単に事情説明しておいてくれ」
「了解したが、私の説明でいいのか?」
「あんまりよくない気がするけど、変身したままのこっちの人たちのほうが話しやすいでしょ」
女相手とはいえ普通に話すだけなら大丈夫なんだけど念のためね。あっちはゲーゲーいってるんだから明らかに変身といてるし。ここからは見えないけど。
「では、そうさせていただこう」
現代の常識そのものには疎いとはいえ、早々ぼろを出すこともないだろう。その間にピンクの子を。
とその前に、壊れた自販機があるから、水を取ってこよう。勇者たるもの泥棒はしないぞ!金は機械の脇に置いておくことにする。
俺も戦い始めた当初はこうだったなあ、と思いながら茂みの奥に行く。知らない男にこんなところ見られたくはないだろうけど、ブルーの子関心なさそうだったし、無理にあの場から離しても、シャルルトレッドだけにしたら会話が進まなそうだったし。
やっぱり変身は解いていた。こちらに背を向けうずくまっている。
が、これは、なんというか。
第一印象ケバい。髪を脱色しているのかほぼ金髪、肌も焼いているのか黒い。黒ギャルかよ。
第二印象若い。幾分着崩しているが制服だ。おそらくはコスプレではあるまい。うずくまってるから分かりにくいがおそらくは小柄だろう。中学生か?でもこんな中学生いたらいやだなあ。と、いかんいかん。
「はい、これ使って」
さっき入手した水とハンカチを手渡すとさっととられた。そのままピンクの子の準備が整うまで待つことにする。
「グスッもうやだ。うちこんなの止める。学校もバイト代ももういい!」
なんか色々たまってるみたいだな。
「内申よくするからって、バイト代も出すからっていうから我慢してたけどもう付き合えない!」
そういいつつこちらを向く、多分あの2人のうちのどっちかが来たと思ったんだろうな。すまんな、さっき初めて会ったばかりの俺なんだ。
改めてもうやめると言いながらこちらを振り向いてようやく、あの2人でないことを認識したようだ。
「誰?……って、さっきの。ごめん、あの2人だと思ったから」
立ち上がったが身長は俺の肩までもない。やっぱり小柄で、ついでに顔も童顔だ。なおのこと幼く見える。
………が、スタイルいいな。て、いかんいかん(2回目)。
「あの、この水とハンカチあなたのだよね。ごめん、ちゃんと洗って返すから」
さらによく見るとかなりかわいいな。童顔だけど整った顔してるし、スタイルも……ゲフンゲフン。
はっ!いかんいかん(3回目)!
ただでさえ、アレクサンドラ姫を振り回しているのに。どう見ても姫より年下の子ではないか。何を考えている、落ち着け、俺!
それもこれも、魔王討伐を成し遂げた勇者という将来性抜群の地位を得たのに、地位や金目当てしか近寄ってこなかったせいで禁欲的な生活を送る羽目になったせいだ。
賢者になれ伊達葵(30)!
「気にしなくていいよ。大丈夫か?」
「う、うん、なんとか」
そっぽを向きながら答える。まあ、こんなとこ見られたくないよな、多少不機嫌になるのもやむをえまい。
「後の2人には、俺の友人が事情説明をしてくれている。こういったらなんだが、要領を得ないところがお互いにあったりして、しばらく時間かかるだろうから」
すまんな、シャルル。道化を演じさせて。この埋め合わせに今日の晩酌のビールは○ビス買っておくから許してくれ。
「そ、そう。あの・・・」
何か聞きたいことがあるようだ、先を促す。
「お兄さんは追加戦士の人?」
お兄さんとは分かっているな。て、じゃなくて、なぜそうなる………orz
「いや、今回は通りすがっただけで・・・」
「絶対そうだよね!あいつらを1人であれだけの数倒しちゃうなんて!」
正確には2人でだけど。それよりも先に解かねばならない誤解があるぞ、これは。しかし彼女は止まらない。
「よかったあ。あいつらが一斉に出たって聞いたから、どうしようかって思ってたんだけど。お兄さんみたいな強い人が来てくれるんならもうちょっと続けてみようかな?うちは大歓迎だよ。わりと好みだし。それで、ブラック、イエローどっち?」
「いや、そうでなはなく」
「他の色?でも残りは2色しかないよ?あ!校長が言ってた別口で作ってるっていう追加の分?色決まってないらしいけど」
「そういう意味ではなくて」
「え?違うの?すごく強いのに?」
「通りすがりです」
「じゃあ、今までと変わんないじゃん!やっぱりうちもうやめる!」
なんかよく分からんうちに、ヒーローの人事問題に巻き込まれてしまったらしい。この前、翔に嘘ついた報いがこれかよ。とはいえ、俺のせいでやめたなんてなったら、後で関係者に何言われるか分からないな。どげんかせんといかん!
「まあ、落ち着きなさい。せっかくここまでがんばってきたんだろう?それに何やら事情もあるようだし短気になってはいけない」
我ながらなかなかにおとなな説得だ。しかし、効果はなかった。
「だって、あんなにたくさん来たら勝てっこないよ。いくら単位のためだからってもうやだ」
あらら。また泣きだしてしまった。しかし、単位のためってなんだ?制服着てることから学生なのは分かるが、学業と何の関係が?バイト云々とも言っていたような・・・。て、そんな場合じゃない。泣き止まさせないと俺が泣かせたみたいじゃないか。
「ああもう泣き止めよ。よくわかんないけど、このトウコンジャーとやらをやめたらいろいろまずいんだろ。ちょっとくらいなら手伝ってやるよ」
「……ホントに?お兄さん手伝ってくるの?」
反応アリ。どうやらヒーローはやりたくないがやらねばならない理由があるのは分かった。
「さっきみたいなのが破壊活動してるのを放っておくわけにもいかないしな。腕に覚えもあるし」
「ヤタ!」
さっきまで泣いてたのはなんだったのかというくらい現金な喜びようだが仕方あるまい。何とかする力も持っているわけだし。
「うちは杉桜子。桜子でいいよ♪お兄さんは?」
「伊達葵。よろしくな」
握手のために手を差し出したがスルーされた。最近の若いもんは、と思う間もなく抱きついてきた。これはたまらん、いろんな意味で。
「よろしく葵さん」
背中に手をまわして抱き合ってもいいものか悩んだが、セクハラで殴られてもたまらんしどうしたものか。この年頃の娘の扱いはよくわからん。しかし、非常に柔らかかったことだけは覚えておこう。
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