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第八話:新たなる闘い 蹂躙ともいう。変身ヒーロー?何のことですか!?

作者はテラフォーマーズが大好きです。

 突然の女性の悲鳴、混んではいるがテラスを含め、この店の敷地内ではない。パッと見えるところではないが、そう離れてはいないはずだ、

 そして、はじめの悲鳴を皮切りとばかりに、悲鳴や怒号、助けを求める声、何よりこちらにも大勢の人が向かってきていると思われる。

 周りもざわつき始めた。何が起こっている?


 分かっていることは、飯食ってる場合ではないということだ。この感覚、久しぶりだ。まさか、この日本で戦いの気配を感じる日がくるとは。


「シャルル!」


 力強く頷く。戦友にはこれだけで十分に通じる。


「みなさん、落ち着いてください。私と彼で様子を見てきます。その間に皆さんは声が聞こえたのと逆のほうへ落ち着いて避難してください」


 早く逃げないといけないが、そうはいっても落ち着いていないとかえって危険だ。こんな時はカリスマ持ちの彼に任せるに限る。彼ほどの適任者を俺は他に知らない。

 俺はと言えば、まだ騒ぎの収まっていない方に向かう。何か胸騒ぎがする。力を隠している場合ではなさそうだ。普段一般人に見せかけているフリをやめスピードを上げる。


 そう離れていなかったのもあって、すぐにたどり着いた。な、なんだこいつら???


 そこにいたのは2足歩行でヒト型のフォルムの集団だった。全体のフォルムで言えば間違いなく人間。しかし、昆虫のような、より正確に言えばどことなく蟻をイメージさせる。


 何やらお互い声を掛け合って、周りの者を破壊したり、逃げ遅れた人や、(いきがって挑んで敗れたのであろう)ヤンキーらしき若者を襲っていた。


 いや、正確には声ではない。とても人の言葉には聞こえない。鳴き声でお互いの意思の疎通を図っているようだ。人間ではないのか?

 しかし、この姿かたちは人間以外にはありえない。というか、地球にモンスターなんているわけないし。テロリストかなんかか?


 それに考えている時間ではなさそうだ。


「何やってんだ!この害虫ども!」


 大声で吠え遠慮せずに敵意をぶつける。虫っぽいので、挑発もかねて。並の人間ならこれだけで気絶する奴もいるくらいだが、やはりというか効いていない。

 

 俺の感じる違和感が何かは分からない。だけどこいつら全員ただものじゃない。俺を新たな標的と見て取ったか、ギイギイ言いながら、謎の集団は俺に向かってきた。


 あれ、速い?普通の人間の出せるスピードじゃないぞこれ?や、やばい。

と、普通の人間ならここで数の暴力でふっとばされて終わりだろう。普通の人なら。そこで倒れているヤンキーのように。

 しかしながら、残念ながら俺は普通じゃない。例え、並の人間よりは早くても!


「遅い!」


 真っ先に向かってきたやつをカウンターで殴り返す。殴った奴は文字通り吹っ飛んで行った。お約束のようにゴミ箱捨て場に頭から突っ込んで止まった。


 今度はほんとにやべえっ!殺したかもしれん。

テロリストだか何だかよく分からんが、殺しちゃまずい。俺が逮捕されてしまうではないか!


「おい、さっき吹っ飛んだ奴、大丈夫か?」


 他の奴を無視して吹っ飛んだ奴の様子を見る。本気で殴ったらえらいことになってしまうのでもちろん手加減したつもりだったが、思ったよりは早く動いてたもんで、手加減を誤ってしまった。頼む!生きていてくれ!


 そんな俺の願いが通じたのか、声には反応していないが痙攣しているのが分かった。とりあえず、死んではいないようだ、けっこうぎりぎりだが。

 よかった、本当によかった。本気で敵の心配をしたのは生まれて初めてだ。しかし、気をつけねば。


 痙攣してるやつを見ても、他の奴らはひるまず向かってくる。実力差が分かっていないのか、数で押しつぶすつもりか。どっちだろうが関係ない!


「オラオラ!」


 向かってくるそばから、殴り倒し、蹴り倒していく。もちろん、さっきと同じようなミスはしない。きっちり絶対に死なないように手加減している。お、殴られてたヤンキーが気付いたようだ。


「おい、そこの若者」


 テロリスト?を蹴倒しながら声をかけると、びくっとしてこちらを向いた。なすすべなくやられた(と見て取れた)ことで自信を喪失したのだろう。


「気付いたのなら、そのあたりで倒れている人たちを安全なところまで運ぶんだ。こいつらは俺が食い止めておく」


「は、はいぃっ!でも俺だけじゃ無理です」


「まだ動ける人がいるはずだ、協力し合うんだ。あと、気を失っているやつは踏んで起こせ!」


「ええぇぇーー!」


「優しく起こしてる時間なんかないんだ!さっさとやれ!」


「は、はいぃっ!」


 事態をようやく認識したらしく、ヤンキーが動き出した。物陰で隠れていた人も、俺が食い止めていることが分かったのだろう、それぞれ逃げていく。って、倒れてる人たちを連れてってくれ。ヤンキーひとりじゃ無理だって。


 そんな俺の心の叫びが通じたのか、最強の助っ人が来てくれた。向こうの避難は完了したようだな。


「待たせた、葵!」


「問題ない!おまえの分はとっといたぞ!と言いたいとこだが、まずは倒れてる人たちを頼む!」


「任せろ!」


 すぐに救助に移るシャルル。これで倒れている人たちが襲われたりさらわれたりする心配はなくなった。


 あとは、殺さんように、俺が気を付けるだけだが・・・、こいつら異様に打たれ強い。普通なら気絶するくらいの力で殴ってもあまり効いた様子がない。それに、手ごたえがおかしい。この鎧のせいだろうか。あまり手加減していてもらちが明かない。ギアを一段上げることにしよう。


「これならどうだ!」


 1人を地面に引きずり倒し、その上にパワーボムの要領でもう一人をたたきつける。お、さすがに動きが止まったな。


 だいたいの加減が分かったので、ある程度順調に倒していく。が、数が多い、どんだけいるんだこいつら。魔王討伐の旅の中で魔物の巣に迷い込んでしまったときのようだ。いよいよ、殺す覚悟を決めないといけないか、と思ったその時、あたりに高笑いが響き始めた。


 なんだ、この下品な笑い声は?リアルでこんな笑い方する奴は久しぶりだ。


「フハハハハハハハハハ!」


 うるせえな!誰だよと思ったら、向かいのビルの陰から人影が現れた。


 シャルルには劣るがなかなかのイケメンだ。しかし、そんなことはどうでもいい。ここ地球で日本だよな……?

 何でいかにも悪役っぽい黒い鎧着て剣持ってるやるがいるんだ。銃刀法違反だぞ!


「愚かな人間どもよ」


 なんか言い始めたぞ、親玉っぽいなこいつ。でも戦闘員は気にせず襲ってくるから黙って聞いておくわけにもいかん。統一感の無い奴らめ。


「私はマッドクリーチャー上級幹部のプリンスルナティック。この世界は我らマッドクリーチャーが制圧する!」


 ポーズを決めながら、高らかに宣言する、プリンスルナティックさん。つーか、組織の名前も幹部の名前もダサすぎだろ。


「プッ」


 おっと、笑い声が漏れてしまった。が、どうやら聞こえなかったようで、口上らしきもの続けている.こっちもどつきたおすのに忙しいので気にしていなかったが、先にコスプレ野郎の方がこちらに気付いたようだ。


「む、まだ、抵抗している愚か者がいたか。アリ男と戦うのがやっとのヒーローなどいてもいなくても変わらんぞ、トウコンジャーよ!………って、誰だ貴様?って、なんだこの惨状は?」


 周りの惨状にも気づいたか。どうやら今まで自分に酔っていて周りを見ていなかったようだ。こいつ指揮官には向いてないな。

 あと、戦闘員、アリ男というらしいな。まだ半分ほどは立っている。


 そう、半分ほどは。逆に言えば半分はすでに倒れている。なにやら抵抗勢力はいるが、こんな状態には今までなったことがなかったらしい。


「お前が親玉か、これだけのことやっておいてただで済むとは思ってないよな?」


「無辜の民を害した報い受けてもらうぞ!」


 どうやら避難も終わったようで、シャルルも戻ってきてくれた。装備は(修理のため聖王国に置いてきた、そもそも銃刀法違反だしね!)ないが、暴れさせてもらおう!


「まさか奴らのほかにも我らにははむかう愚民どもがいたとは」


 大げさに片手で顔を覆いため息をつき、あきれてますよというポーズを取るプリンスルナティックさん。シャルルほどではないがイケメンだ。格好としぐさで台無しだが。


「御託はいいから、かかってこいよ、プリンスルナティックさん!」


 まずは挑発してみる。


「愚民が、気安く私の名を呼ぶな!」


 おお、面白いように引っかかった。やっぱ指揮官に向いてないなこいつ。て、ん?シャルルが様子がおかしいぞ。


「プリンスだと!?卿は王子という民を導き守る立場にありながら、このような無体を働いたのか!」


 珍しく怒っている。気さくで飾らないことで聖王国では大人気のシャルルだが、王族としての誇りは高い。王族の面汚しに対して烈火のごとく怒っている。


 火は俺の役割なんだけどなあ。あと、あいつのはあれは本名じゃないだろうからの王族じゃないと思うぞ。一応指摘しとくか。


「シャルル落ち着け!日本には皇室はあるが、王室はない、よって王族はいない!さらにいうなら、あいつのプリンスなんちゃらとやらは芸名だ」


「コードネームと言え!」


 あっちまで怒り出したぞ、しかし悪党に人権などない、無視無視。


「そうなのか、しかし、あの者の行動はどちらにせよ許すことはできない。退治てくれよう!」



 そう来なくっちゃ。しかし、これだけ言っておかねば。


「シャルル、殺すなよ。たとえどんな悪党でも、人間を殺せば俺達がつかまることになる」


「分かった。私はこの国にとっては無断の客人。この国の法にあわせよう」


 ということで、向かってきたアリ男を適度に吹っ飛ばす。が、やっぱり打たれ強いぞこいつら。起き上がってきた。どうなってんだ?しかしこれ以上痛めつけては………。


「フッ、我らマッドクリーチャーの科学力の結晶<改造生物>の前には人間など足元にも及ばんわ!フハハハハハ!」


 ん?改造生物?生物だと?普通こういう時って改造人間っていうよな。そもそも改造ってなんだよ?と突っ込みたいがそれは後回し、今やるべきはこれだ。


「改造生物だと?改造人間ではないのか?」


「ベースとなる生物を大型化させ人間の形状にして戦闘力とする。それこそ我らマッドクリーチャーの戦力よ!こやつらは裏切る心配もない、痛みも感じない、無敵の兵士だ!」


 ほう。いいこと聞いた。


「なるほど、人間ではない、と?」


「くどい、愚民どもよ、よく頑張ったが観念したらどうだ?」


 勝利宣言か、まあ、押され気味なのは認めよう、あんまりにも数が多くて、そろそろ疲れてきたし。だが。


 プリンスルナティックさんとやらにパスをする。ボールがなかったので、割と力を入れてアリ男にアッパーを入れたら放物線(○田ぶっ飛び)を描いて、結果として、アリ男をパスする形になってしまった。

 おっ今のをお姫様抱っこして受け止めるとはあいつなかなかやるな、日本でするにはあまりに間抜けすぎる恰好だが。


 もちろん、飛ばされたアリ男はピクリとも動かない。


「え?」


 どうやら伝わらなかったようだ。やっぱり行動だけでなく、言ってわからせないとな。


「シャルル、どうやらあのプリンスルナティックさん以外は人間じゃなくて、本当のアリを大型化させただけらしいよ」


「よいことを聞いた。加減は無用のようだな」


「ふん、こけおどしを!やれい!アリ男ども!」


 向かってくるアリ男、ちぎっては投げ、ちぎっては投げ。一方的な虐殺が終わったのはそれからしばらくしてのことだった。




「ラストォ!」


 アリ男にアルゼンチンバクブリーカーを決めて胴から真っ二つにする。近くを見ればシャルルも最後のアリ男を手刀で貫いていた。


 ふう、終わった終わった。あれプリンスルナティックさんがいない。逃げやがったな、せめて悪党らしく負け犬の遠吠えくらいは残していってほしかったが。


 いちおう手がかりがないか立っていたあたりに近寄ってみると、何やら臭う水たまりができていた。あいつ、漏らしてたのか、汚えなあ。

 とりあえず、次来た時に馬鹿にする材料になるだろうから写真は撮っておこう。イン○タ映えはしそうにないが。


 しかしあいつら何者なんだ?魔力は感じなかったが現代の科学を超えている。そして、反社会的な集団のようだ。危険と言わざるを得ない。


 今回は俺たちがいたからよかったようなものの、俺がいない間に日本はこんな危険な国になったのか?


「葵、遅くなってしまった。すまない」


「ちょっと疲れたけど問題ないよ。人間じゃないって初めからわかってたら、シャルルが来る前に終わらせてたんだけどな」


「そうだな、しかし、日本は平和な国と聞いていたが、このような輩がいるのか」


「いや、俺も初めてだよ。そもそも日本どころか世界中見渡しても、こんな科学力を持っている組織があるなんて、少なくとも公表されてる限りではない」


「ふうむ、疑問が残るな」


「気になることはいろいろあるが、もうすぐ警察が来るはずだ。その前に撤収したほうがいいな」


 しかし、最初に騒動が起きてからそれなりの時間がたっている。いくらなんでも遅いな、と思ったら、ようやくサイレンが聞こえてきた。避難誘導を優先したのだろうか?


 と思ったその時、


「待て!!マッドクリーチャー!!」



 そこに現れたのは、


「目指せ孤高のバットマン!トウコンレッド!!」


「女の子だってサムライブルー!トウコンブルー!」


「応援、実戦、どっちもOK、トウコンピンク」


「闘魂と科学で悪を討つ!!熱血戦隊!!」


「「「トウコンジャー!!」」」



 赤、青、ピンクの戦隊スーツ?をまとった3人組だった。名乗り付きで。



 名乗ってもらってなんだけど、……誰?

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