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第六話:過去との再会再び 成人した行方不明のドラ息子が帰ってきてもこんなもんでしょう

作者は家族愛を描いた作品が大好きです!

「家?葵の生家か?」


「ああ、その家だ」


 まずは家族に会いたい。3年もの間行方知れずだったのだ。心配もされているだろう。まさか変えることができるとは夢にも思っていなかったから、正直会うことはあきらめていた。家に帰り無事を伝えたい。


「そうだな、まずは家族の方に息災であることを伝えなければな。それと、先ほどはなし崩しで退去することとなったが、ご家族の方には、今度こそ謝罪をしなければならない」


 それはもういいよ、とは今回ばかりは言えなかった。心配をかけた家族にわびねば、彼も先に進めないだろう。


「それは、顔を合わせた時にだな。まずは、、、」


 このご時世、公衆電話はなかなか見当たらない。会社のビルの1Fコンビニ前にはあったような気がするが、あそこには戻りたくない。しばらく探すとようやく見つかった。10円玉もあるな。


「ほう、これがデンワか。魔術を使わずとも遠方のもの通しで話ができると聞いていたが、素晴らしいな」


 スマホは見せたことあるが、その時よりも食いつきいいな。スマホよりもボタンや受話器があってそれっぽいからだろうか。


 さて、実家の番号を、っとつながった。


「はい、伊達でございます」


 電話に出たのは母だった。


「母ちゃん、俺だよ」


「『俺だよ』って、いまどき俺俺詐欺かい、年寄りだからってなめんじゃないよ!」


「待て!母ちゃん!息子の声を忘れたのかよ!?」


「うちの息子は3年間行方知れずのドラ息子だけだよ!一昨日きな!」


 ガチャ切りされてしまった。お、もう10円あるな、かけなおそう。


「しつこいよ!」


 OH!何か言う前に切られてしまったorz

そういえば、小学校の頃、通知表に『葵君のお父さんへ お母さんにもう少し人の話を聞くように伝えてください。PTAの役員さんが困ってます』って書かれたことがあったっけ。休み明けに先生から、『保護者さんのことを書いたのは初めてです』って言われたなあ。

 なんかことごとく、感動の場面がグダグダになっている気がするが、こうなったら直接変えるしかあるまい。

 さっきの同僚の口ぶりだと、借りてた部屋は引き払われてるみたいだし、今日寝る場所を確保せねばならない。


「なかなか強烈なお母上だな」


 苦笑されてしまった。いや、悪い人じゃないんだよ。人の話は聞かないけど。


「なんかこう、感動の体面とかそういうのを想定してたんだけど、すっかり当てが外れてしまった。もういい、直接顔合わせよう、そうすればさすがに分かるだろ」


「そうだな、デンワとは便利な道具だと分かったし、急いでの連絡するも悪くはないが、やはりお互い直接顔を合わせて話をするべきだと私も思う」


 ……その通りだな。よし、と決まれば、移動開始だ、急いで電車に乗れば1時間程度で着くし、財布を確認したら2人分の電車代くらいはありそうだ。とりあえず、俺達は駅に向かうことにした。

 そして、2時間後。俺たちは伊達家(実家)の前にいた。時間が倍かかったのはシャルルが初めての電車に興奮し、少し行き過ぎてしまい引き返すことになったためだ。その後のバスでも同じことになりそうになったが何とか阻止した。

 お前を元気づけようと思って、と言ってはいたが、半分は素で興奮して乗り過ごしたと俺は思っている。まあ、ある意味お約束だね、このへんは。

 先ほどからあほなやり取りが続いているとはいえ、さすがに緊張する。半年ばかり帰っていなかったから、約3年半ぶりの実家だ。ある意味先ほどの会社よりも緊張する。


「ここが葵の家か。立派なつくりをしているな」


 ふつうの一軒家だが、異世界の平均的な家とではやはりつくりは全く違う。技術レベルが違うのだから、当然と言えば当然だ。

 興味深げに見てはいるが、先ほどのオフィス街よりは珍しくもないと思うので、何がそんなに興味深いか聞いてみる。



「いや、確かに先ほどのカイシャの作りは素晴らしかったが、あれはとてもまねできそうにない。だが、このあたりにあるような家屋の作りならば聖王国に技術を持ち帰ることができるのではないかと思ってな」



 言われてみれば確かにそうだな。今度、いろんな寺社仏閣にでも連れてってやるか。参考になるものも多いだろう。

 ひとまず、シャルルには外で待っておくように言って玄関に向かう。


 チャイムを鳴らす、などということはせず、そのままガラガラと引き戸になっている玄関を開けた。自分の家に帰るのにチャイムもないだろう。そして、この辺の家では、人がいたら鍵なんてかけないしな。

 うん、予想通り空いた。


「ただいま~」


 反応が無い、畑にでも行ってるのか?


「ただいま~、葵だよ、帰ってきたよ~」


 もはや感動的な再会など期待していないので気の抜けたいつもの調子で呼びかけてみた。奥からがたがた物音がする、どうやら誰かいたようだ。


「どなた様ですか・・・って葵君?」


 現れたのは姉の旦那、いわゆる義兄の豊さんだった。よし、一番話の通じそうな人が現れた。不幸中の幸いだ。姉ちゃん一家は、離れたところで暮らしてるはずだが、なぜこの場にいるのかはこの際気にしないでおくことにしよう。


「葵君、本物かい?今までどこに行ってたんだい、みんなどれだけ心配したことか」


「すみません、豊さん。心配をおかけしてしまって」


 姉ちゃんとは大学で知り合って結婚した豊さんは、伊達家(正確には違うけど)の周りでもっとも温厚な人だ。姉ちゃんの尻に敷かれてるけど。


「話は後だ、さあ、早く上がって、というのも変な話だね。お帰りなさい。おおーい、みんな、葵君が帰ってきたぞ!」


 ばたばたとみんなが出てくる。父ちゃん、母ちゃん、姉ちゃん、妹に甥と姪(姉ちゃんの子供だ)。


「葵、ほんとに葵なのか?」


 だれともなしに尋ねられる。


「あ、ああ、ただいま」


 そうか、やっと俺は帰ってこれたんだ。数えきれないほどの戦い、死の危険、冒険を潜り抜けて。

 さっきは感動も何もと思っていたが、みんなが俺を出迎えてくれた。それだけで俺の眼がしらが熱くなる。そして、



「この馬鹿息子!どこほっつき歩いてたんだい!」



 思いっきり殴られた。その後、姉と妹からも殴られた。…………orz。

いくら打たれ強くなったからって痛くないわけではないのだが、どうしたものか。


「母ちゃんも姉ちゃんもクミも落ち着いてくれ」


 いちおう、落ち着くよう呼びかけたが、『やかましい!心配ばっかりかけて!』あまり効果はなかった。

 仕方ない、もう少し落ち着いてからと思ったが、


「シャルル、ちょっと来てくれ!」


「なにやら騒がしいがどうした、葵?」


「今までどこ行ってた、このくそ兄・・・・・・、兄さん、みんながどれだけ心配したと思ってるの!」


 成功、妹よ君なら絶対のってくれると思っていたよ。俺の周りでは春日さんと並ぶ肉食系だからな。


「心配をかけてすまない、クミ。だが、俺は彼のおかげで帰ってこれたんだ」


 俺は空気の読める兄、手のひらを反しておしとやかに見せる妹の演技に乗っかる。1人が落ち着いたことで騒動は一旦の収まりを見せた。

 その後、とにかく事情を話しなさいということで、ようやく家に上がることができた。やはり、俺に感動の再開は無理だったようだ。一瞬でも期待した俺が馬鹿だった。

 そして、事情説明。さすがに家族相手に嘘もつけない。到底信じてもらえるとは思えないが、正直に事情を話すことにした。結果。


父「葵、明日病院に行こう」

母「最近大きい病院が近くにできたから、しっかり観てもらいなさい」

姉「頭大丈夫?」

妹「(優しい笑顔で)ゆっくり休むといいよ」

甥「葵兄ちゃん、かっこいい!」

姪「葵ちゃん、お土産は?」

ちなみに義兄はノーコメントだった。


 分かってたよ!そういう反応になるのは!

続いてシャルルが事情説明をする。会社で説明したのと同じように、自分たちが俺を呼び立てたこと、その後連絡の取れない環境にいて、ようやく目途が立ちここに戻ってきたということ、そして、事情を考えずに進め、迷惑をかけてしまったことへの謝罪を行った。結果。


父「しっかりした若者じゃないか。馬鹿息子を連れ帰ってくれてありがとう」

母「外人さんで驚いたけど、日本語上手ね」

姉「弟が迷惑をかけたようでむしろごめんなさい」

妹「滞在先は?え、決まってない?部屋は余ってます。好きなだけここにいてください!」

甥「兄ちゃんでけえな」

姪「お兄ちゃんと結婚する!」

今度も義兄はノーコメントだった。


 言ってることはほぼ同じなのになんで、そんな反応違うんだよ。

やっぱ異世界とか言うんじゃなかった。あと、関係ないコメント大過ぎ。マイペースすぎるだろ、うちの家族。

 なんか納得いかねえ!



短いけどキリのいいところで

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