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第二話:異世界の事情 異世界では真面目に戦ってました! 

作者は異世界転移が大好きです。

しかし特別な知識が無いので、仮に転移してもえらいことにしかなりませんね!

 今をさかのぼること、半年以上前、俺はシャルルとともに人類の存亡をかけた最終決戦に臨んでいた。


「今だ!シャルル!」


 俺は魔王を羽交い絞めしながら、戦友の名前を叫ぶ。彼は迷いなく俺達-俺と魔王-に聖剣の切っ先を向け、渾身の一撃を放つ。その一撃は狙いを過たず魔王の胸に突き刺さった。


「魔王!覚悟!」


『おのれぇ!勇者どもぉっ!』


 魔王の最期の咆哮にも似た叫び。それは物理的なな力すらもって、俺たち二人だけでなく、決戦の場となった魔王の城の一角すらも吹き飛ばす。だが、そこまでだった。決死の一撃は確かに魔王に届き、その命脈を断つことに成功していた。

 世界を破滅に導こうとした存在の最期、そしてそれは長い戦いの終わりを意味した。


 一瞬意識を失っていたようだが、のしかかる瓦礫の不快感で目を覚ます、どうやら道連れにはならずに済んだらしいが、最期の咆哮で周りの壁ごと吹き飛ばされたらしい。


 無理やり動くと周りが崩れてまずいことになりそうだが、動かないわけにもいかない。助けを頼もうにも、あいつも同じ状況だろうしやむを得まい。



 体の上に積もった瓦礫を無理やり持ち上げていき何とか瓦礫の山から抜け出した。ただでさえぼろぼろだった鎧がさらにボロボロだ。これは直すのに時間がかかりそうだ。ついでにほこりまみれ、まあ、バトルものの最終決戦というのはジャンルを問わず、ぼろぼろになるものだから仕方ない、と現実逃避したことを考えつつ、戦友を探す。


 と、視界の端で、先ほどの俺の行動と同じであろう動きが見える。あそこか。



「シャルル、大丈夫か!?」


「なんとか。と言いたいが、これ以上動けそうにない。葵、手を貸してくれ」



 弱弱しく笑うのは、光の勇者にして、聖王国の第二王子シャルル・サード。この2年あまり、共に戦い続けてきた無二の戦友だ。フルネームは長すぎていまだ覚えきれていない(ちなみに本人も覚えてないらしい)。


 まわりの壁もほとんど崩れ落ちてしまっているが、そのせいで外が良く見える。シャルルに肩を貸しながら周りを見渡してみる。文字どおりの意味で重く暗い暗雲に覆われていた魔王の居城の周辺だが、魔王を倒し邪気が払われたためか、青空が広がっていた。しばらく呆然とした俺達だったが、先に我に返った俺からシャルルに声をかける。



「勝ったな」


「ああ」



「永かった」


「ああ」



「終わったな」


「いや、始まりだ。我が聖王国だけでなく、すべての国が魔王との戦いで打撃を受けている。これから復興だ」



 ぼうっとしていると思ったが、そうではなかったようだ。やっぱりこいつはすごい。俺より10も年下なのに、はるかに先を見ている。


 人間の支配域で最大の版図を誇る聖王国の第二王子で、光の信託を受けた勇者。ついでにまごうこと無きイケメン。天は二物を与えず、というが彼には与えられていないものが果たしてあるのだろうか、というほどのハイスペックである。ちなみに身長も178cmの俺より10cmは高い。


 それでありながら、身分をはなにかけず誰に対しても分け隔てなく優しく、己の身を顧みず常に人々のために行動するという人格者だ。共に旅に出た当初から、今回の魔王との戦いでも俺と2人で常に最前線で戦い続けてきた俺の無二の戦友であり親友でもある。



「そうだな。とはいえ、とりあえず聖王国に帰ろう。ってその前に、みんなとも合流しないとな。今日は魔王を討ち取った平和への第一歩の記念日だ。俺の国では記念日は祝日として休むのが慣習だ、今日くらいは先のことに目をつぶったってばちはあたらないさ」



 はるか先を見る彼に肩を貸し、少しばかりの足止めさせて一息つかせる。炎の勇者として、この世界に召喚された俺には、20年の人生のほぼすべてを世界のために費やしてきたこの若い友の足止めをする権利ぐらいはあるはずだ。こいつは世界の宝だ、この足踏みがきっとのちの世界のためになる。



「いや、まだこれから・・・」



 なんか言ってるが無視。途中途中で足止めのために残ってくれた仲間も回収しないといけないしな。彼らもきっとおれと同意見だろう。



「そうだよ、これからだよ。だから今日は終わり!」


「・・・分かった。他ならぬ葵の言だ、聞き入れねば兄上にも叱られるだろうしな」



 ようやくあきらめたらしい言葉を口にしたその瞬間、シャルルが膝から崩れ落ちた。やっぱり無茶してたのか。気絶してるみたいだし、仕方ないから背負って行ってやろう。


 一番近くにいるのはあいつかな?とりあえず、俺も平和への第一歩を歩むことにした。



ここから先はまさしく目が回るようだった。仲間たちと聖王国に凱旋と行きたかったが、途中の国で引き止められること数えきれず。数十年にわたる、魔王との文字通りの意味で人類の生存をかけた戦いを勝利に導いた俺達勇者一行は引っ張りだこだった。



 まあ、わからないではない。誰だって不安だったのだ。いつ、自分の国が戦火に包まれるか、いつ異形の魔物が牙をむいて襲い掛かってくるか。そんな不安、絶望、そういったものを打ち破った勇者一行が歓迎されない理由はない。



 なかでも、一番人気はシャルルだった。繰り返すが、人類の支配域の中で最大の版図を誇る聖王国の王子にして魔王を討ち果たした光の勇者。ついでにイケメン。人気が出ないはずがない。


 日本人の俺としては義経の人気はこんな感じだったのかななどとのんきに見ていた。何とかしろと何回か怒られたりもした。


 実際問題として、これはシャルル自身の人気だけではない。彼は王子という公人だ。さらに勇者の神託も得ており、それに見合う魔王討伐という世界最大のミッションを成し遂げたのだ。彼に取り入ろうという人間は他国であろうと枚挙にいとまがない。


 そんなこんなもありつつも、何とか数か月の時間を使って、ようやく聖王国までたどり着いた俺達。


 ここは俺にとって始まりの地、勇者として召喚された場所だ。この世界にきて2年以上になる。召喚された目的の魔王の討伐は成し遂げた。闘いの日々の中で俺はいつの間にか三十路になっていた。それにも気づかないくらい過酷な日々だった。


 召喚された時は勝手なことすんなとキレまくったが、この世界は本当に追い詰められていた。これまでに何人もの勇者が魔王を討つべく旅立って行ったが、だれ一人帰ってこなかった。中には裏切って魔王についた最悪な奴もいた。


 最後に残ったのが、聖王国王子という立場上、魔王討伐の旅に出ることを認められなかった光の勇者シャルル。これまでは無理やり引き止められていたが、最後の一人になった以上、もはや立場など関係ないと周囲を振り切り旅に出ようとするシャルル。


 そんな時、神話の時代に異世界から召喚された勇者が災厄から世界を救ったという古い文献が見つかった。事実かどうかの何の確証もない。それでも藁にもすがる思いで、古い記録をもとに召喚の儀式が行われ、そして現れたのが、召喚後、炎の勇者と神託を受ける俺、伊達葵(当時20代)だった。


 会社の屋上で休憩していたらいきなり異世界、そりゃあ驚いたし怒った。しかし、文字どおりの意味で命を懸けて俺を召喚した100人を超える魔術師たち、土下座せんばかりの勢いで、世界の救済を願うシャルルの父上こと聖王はじめ聖王国王族と近隣の国の王族たち(シャルルも含む)。


 ただのサラリーマンの俺に重すぎる期待をかけられ、正直逃げたかったが、どこに逃げたらいいかも分からない。


 そんな時、シャルルの妹(当時12歳)に、『私はどうなってもいいので世界を救ってください』と大泣きされてすがりつかれて、とうとう折れた。折れるしかなかった。


 ちなみにシャルル妹ことアレクサンドラ姫には、日本の法令にならって、16歳になったら考えると遠まわしにお断りをしておいた。


 しかし、今考えれば、この言葉が戦後最大の落とし穴として俺の前に立ちふさがり、現在に至る最大の分岐点となることを当時の俺は分かっていなかった。


 ともかくも、準備を整え、仲間を集め旅立つ俺、そしてそれを見送る王族たち、と言いたいところだったが、そうはいかなかった。シャルルが無理やりついてきた。何度か帰ってもらおうとしたが、挫折した。彼が己の考えを決して曲げなかったこと、魔王側にくみすることで保身を図る者たちの存在、過酷になる戦い、状況がもはや旅における彼の不在を許さなくなってしまった。そうして、2年余りの戦いの末、ようやく世界に平和を取り戻すことができた。


 その間の俺はと言えば、戦いまくっていたせいか、人類の限界をはるかに超える力を身に着けてしまった、この世界では、たまにあることらしい。


 聖王国に帰還後、まず行われたのはもはや何度目か分からない凱旋パレード、何やかやで結局パーティリーダーに収まったシャルルのおひざ元なので、それは盛大だった。そのあとは連日連夜のパーティやら舞踏会やら、寝る間もなく駆り出され続けた。ある意味では、これまでの旅よりハードな1週間だったといえよう。


 そのあとは、ただひたすら復興に尽力、専門的な知識を持っているわけではないが、それでも俺の持つ現代の知識は随分と役にたった。


 そんな数か月を過ごしていたころだ、シャルルが俺のところにお忍びで現れたのは。




今日のうちに何話か投函してポイントゲットだ。


立ち寄っていただいた皆様。よろしくお願いいたします!

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