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第十三話:守れ!この世界! 戦隊モノって移動手段が謎な戦隊が結構いるよね!

作者は運転が嫌いなので助手席が好きです!

 俺とシャルルがトウコンジャーになってから1週間、マッドクリーチャー関連の事件もなく平和な日常と言えた。シャルルは農作業やら、図書館に出かけるやら、ということで本来の目的の一つである、技術や知識の習得に多くの時間を割いていた。


 勤勉な彼はあっという間に俺の地元に溶け込んでしまった。朝の登校の見送りや交差点に立つ保護者の活動は、姉ちゃんから引き継いで、ほぼ毎日やっている。

 この前、農作業と時間がだぶったため再度俺が代わりに対応したが、お母さん方と小学生女子のみならず、関係ないはずの女子中学生、女子高生、出勤途中のOLさんからの眼がすごい冷たかった。『なんでお前なんだよ』と目が物語っていて、魔王と相対した時と違う意味で恐怖を感じた。俺が何をしたっていうんだ。


 俺はと言えば、家にいるのはやっぱり居心地が悪いので、外に出ることにした。幸いにしてというか、校長から今後の方針を含めて色々と協議したいとの打診があったので、ちょくちょくと広沢学園に顔を出していた。


 俺が顔を出しやすいようにということで、非常勤の教師になぜか就任することになってしまった。さらば無職、といいたいところだが、受け持った授業数だけ給与を支払われるという歩合制で受け持ち授業はもちろん0!無職教師の誕生である。


 さらにあまり目立ちたくないと言ったところ、全校集会での就任あいさつもなしで辞令だけが掲示板に張り出された。


 いまだにトウコンジャーの3人すらその存在に気づいていない。はたして全校生徒及び関係者のうち何人が俺の存在に気付いているのかはなはだ疑問である。入館許可証さえもらえれば問題ないからいいんだけどね。


 なお、トウコンジャーとしての活動をしているときは、時給換算(1000円)で給与(桜子曰くバイト代)が支給されるらしいが、何で給料もらっているのか説明のしようがないので家族には黙っていることにした。戦闘時はは危険手当(10万円)もでるらしい。

 そのうち、非常勤講師就任とうまいこと組み合わせて、無職脱出の言い訳にしようと考えている。非戦闘時の時給はともかく、危険手当もう少しでないかな………。


 今日も校長室で校長に来てみたものの、校長はなかなか忙しい。校長室は無人だった。昼休みに入ったから、だれか来るかもしれない。


 と思っていたら、ノックなしでおもむろにドアが開く、ノックしないのは一人しかいない。


「あ、葵さん、今日もいるんだ?」


 ノック位しなさいと小言を言おうかと思ったがやめておいた。そのうち何とかなるだろう。


「今日もで悪かったな。暇だけど、家にずっとはいづらいんでな」


「無職はつらいね」


「3年間無休で働いたから、今は充電期間中なの。桜子こそ今日もここで食うのか?」


 俺が校長室にいた日はすべて桜子がやってきた。おそらくは俺のいない日もいるのではなかろうか。


「うん、ここで待機しといたらトウコンジャー活動とみなされてお金でるからね。座っとくだけで時給1000円はおいしいよ」


「しっかりしてんな」


 弁当を食べ始める桜子を見ながら食料の確保を忘れていたことを思い出した。後でなんか買いに行くか。そのあと桜子は授業の5分前になったので自分の教室に戻ろうとした。その時だった。


 左手の変身クロックが警報?を出し始めた。なんだこれ?


「げ!」


「これなに?」


「マッドクリーチャーの出現の警報。たぶん校長からすぐに出現ポイントと出撃指令がでるよ」


「なるほど、他の3人にも連絡いってるの?」


「いってるよ!」



 なら問題ない、………って問題あるな。シャルルは絶対何のことかわかってないだろう。電話で知らせてやろう。お、すぐに出た。


「葵、これはなんだ?非常に騒々しいのだが」


「マッドクリーチャー出現の反応らしい。なるべく急いで広沢学園まで来てくれ」


「ちょうど向かっていたところだ。10分もあれば着く」


「了解」


 これでよし、と。


「今のシャルルさん?」


「ああ、やっぱり何のことかわかってなかったが、すぐ近くにいたみたいですぐに来る」


「よかった~、葵さんたちがいてくれたら心強いや。うち、あんなのと戦うなんて無茶だもん」


 ほっとした表情を浮かべる桜子。この前も思ったが、やっぱりやる気ないなこの子。その割には毎日校長室にはくるんだよな。なんかわけありだろうか、詮索するつもりはないが。


「校長!敵はどこだ!?」


 松田君到着、暑苦しいな相変わらず。


「これで3人か。シャルルはもうすぐ来るとして矢田さんは?」


「霧瀬ちゃんならすぐそこで見ましたよ!」


 どれどれ、校長室のドアを開けてみてみる。おお、いたいた。たぶん俺よりは若い教師と話している。と思いきや、キスし始めたんですけど、それも深いやつ。


 いくら授業が始まって人目がなくなったからって何やってんだ!?教師はアウトだろ。ってか、この前他校の彼氏いたよな。


 俺がいろいろ考えているうちに教師と別れてこっちにやってきた。


「伊達さん、お待たせしました」


 見られてたのは気づいてるはずだが動じないなこの子。あまりに自然すぎて緊急事態であることを忘れてしまうぜ。


「今の先生だよね」


「職業としてはそうですね」


 それが何かといわんばかりに自然だ。頭のどこかでやめておけというアラームが鳴っているが、怖いもの見たさからつい聞いてしまった。


「付き合ってるの?つか、この前の彼氏と別人だよね」


「ええ、もちろん別人ですよ、大切な人ですし」


 なんかうっとりして答えられたぞ。本来ならのろけられたという状況なんだろうけどなんだこれ?俺がおかしいの?

 と、混乱していたら、松田君からフォローが入った。


「伊達さん、霧瀬ちゃんは常に2桁の男と付き合っている女です!」


「同じ女とカウントされたくないんだけど、うち」


「だって一人にしぼれないんですもの、なら平等に愛するしかないではないですか?」


 いや、その理屈はおかしい。ようやく分かった、シャルルが彼女に苦手意識を感じた理由が。アレとはベクトルが異なるが、彼のセンサーが反応してしまうのも無理はない女だったか。


 しかし、1人や2人どころか、2桁とはね。しかし、正義のヒーローとして、これはOKなのか?

 よし、決めた。彼女はシャルルの最終関門として、このまま放っておくことにしよう。刺されたりしないでくれよ、この場合ちっとも感傷的になれないからな。


「すまない、遅くなった」


 最後にシャルル到着で全員そろったところで、設置してあるテレビが勝手にオンになった。画面には校長が映っている。


『すぐ戻れそうにないので、済まぬがこのまま指示をだすぞ。マッドクリーチャーの出現予想ポイントはN区の海沿いじゃ。なお、専用武器はまだ最終調整が完了していないから、専用武器はなしで出撃じゃ!』


「確かショッピングモールがあるよ」


「よし!じゃあ!その辺に向けて出撃だ!」


「了解。ところで移動手段は?専用の車とバイクとかあるの?」


「一応バイクが3台と車が1台あるんですけど・・・」


 なんだかんだで、それなりに装備はあるんだな。せっかくだし使わせてもらうか。


「よし、なら分乗して行こう」


「待ってください。私たちは免許を持っていません」


「俺今バイクの教習に通ってるぜ!」


 つまりまだ免許取れてないのな。宝の持ち腐れとはこのことか………。一応桜子の方も見てみるが、



「うち、早生まれでまだ15だから、そもそも免許取れないよ」



 やっぱりか。



「俺は車もバイクも免許持ってるけど」


 何と失効せずに済んだからな。3年以上触れていないので不安が無いではないが。


「やった、これで自転車使わなくてよくなった。助手席はうちね!」


 どうやら今まで移動は自転車だったらしい。なんつう正義のヒーローだ。タクシー代くらい出してやれよ校長。


 できれば、俺バイクに乗りたかったんだけどなあ。まあしかたない。今日は運転手だな。



 さて、ということで、車1台での移動となったが、女性陣2名がすこぶる不機嫌だ。理由は分かる。


「シャルルさんの隣が良かったのに」


「うち助手席がいいって言ったのに」


 席に不満があるらしい。車で行こうと決まったので、矢田さんに専用車両の置かれている隠し駐車場まで案内してもらったところ(他の2人はこういう時あてになんないからね)、そこにあったのはかっこいいスポーツカー(3ドアの多分国産車)をほどよく改造したトウコンジャー専用車輌だった。


 ここまでは良かった。そろって正義の味方っぽいね、など感想を述べつついざ乗り込むことにした。

 が、性能と外観に重点を置いたこの車、後部座席が狭かった。車検証を見たら5人乗りになっていたので法律違反の心配はないが、複数の人間が乗ることは想定していないのは明らかだった(バイク3台あるし、車に2人、バイクに残り3人って想定だよね。バイクもかっこよかった)。


 そして、ここで誰がどの席に座るかで、女性陣がもめだした。シャルルは傍観、松田君はおろおろしていた。


 まず、運転手である俺の位置は揺るがない、俺は迷わず運転席に乗り込んだ。当然ながら誰からも不満の声は出ない。


 続いて、周りに遠慮したのであろうシャルルが後部座席に座ろうとした。が、


「みな、すまない。私にはこの席はいささか小さすぎるようだ」


 そう、彼は長身なのだ。席争いはあっさり終了した。



 席は結局、


・運転席:俺


・助手席:シャルル


・後部座席:矢田さん・松田君・桜子(左から順に)


となった。女性陣の要望は完全に無視されたかたちとなり、非常に空気が悪い。俺は久々の運転に必死なので、後ろの状況は無視することにした。


 シャルルは先ほどから珍しくわれ関せずを決め込んでいる。矢田さんの放つオーラのせいだな。松田君だけが非常に居心地が悪そうだ。『俺頑張って早く免許取るね』と普段の<!>が言葉についていない。もうちょっとで着くから耐えろ。


「決まました、私も2輪免許を取得します。シャルルさん、一緒に教習所に通いましょう」


「そうだな、私はそのうち考えるよ」


 シャルルと隣に座るのは絶望的と判断したのか、矢田さんは次の作戦にうつったようだ。でも、不法滞在(?)のシャルルは免許取れないしな。矢田さんの野望成就は遠そうだ。


「そろそろ着くぞ」


と言ったその瞬間、爆発音ならぬ破裂音が聞こえてきた。


「どこからだ?」


「あちらだな」


 シャルルの指差す方向は幸い人気の少なそうな駐車場の端の方だった。そのまま車を飛ばし一気に現場に向かう。


 そこには、複数のアリ男、そして、明らかにアリ男ではない、おそらくは新型の改造生物が1体。幸い周りに人はいない。なんでそんな場所に現れたかしらんが好都合だ。


 新型はおそらく植物ベースだ。なんというか、頭から大きな花が咲いていた。これは頭お花畑ですってことか?


「なんかバカそうなのがいるよ」


 俺があえて黙っていたことを、桜子はよりストレートに表現する。



「うん、バカだな!」

「あれはないな」

「センスを疑います」

「みんな容赦ないな。確かにバカっぽいけど」


 それぞれにツッコミを入れていると、あ、なんか怒ったっぽいぞ。思考能力があるのかは知らんが、どうやら馬鹿にされているというのは伝わったらしい、しゃべらないのでよく分からないが。


 戦闘員のアリ男に命令らしきものをしているが、とりあえずこっちも準備を、と思ったらおもむろに松田君が一歩踏み出す。どうやらレッドたるものとして、前口上を述べたいようだ。

明日でひと段落です。

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