第十二話:結成!トウコンジャー! 主人公はよく怒られますが自業自得だから仕方ないね
引き続き説明回ですね。
作者は出落ちキャラが大好きです!
全員が沈黙したため、一旦休憩をはさんで、情報のやり取りを行うことにした。闘魂スーツとやらの理不尽さは納得したが、性能はまだ聞けてないし。
「校長!闘魂スーツの性能をもう一度説明してくれ。凶器の件は聞いてなかったからな!」
「うむ、と言っても松田君、矢田君、杉君には概ねは説明したとおりじゃがな」
校長の話を箇条書きでまとめると、
・常人の10倍近いパワーとスピードをえることができる
・防御力も高い(というより作成目的を考えるにメインの目標は多分これ)
・スーツは、右手の変身ブレス、左手の変身クロック、右足の変身アンクR、左足の変身アンクLに収納されている
・それぞれ決められた変身の合図を送り、ポーズを決めることで変身する
ということらしい。ここまでは3人も聞いた通りで、次からが追加らしい。
・専用武器があり、ほぼ完成しているが微調整が必要
・専用武器もしくは、凶器を装備して戦うと、闘魂スーツの性能が向上する
・専用武器は組み合わせ合体させることでより強力な武器になる
・凶器の縛りを外すのは時間がかかるので当面このままで戦うこと
とのことであった。ここで一つ疑問が浮かぶ。
「そういえば校長。専用武器は別に運搬してたみたいだけど。変身スーツと一緒に変身アイテムに組み込めないんですか?」
「できなくはない」
「なるほど、であれば、組み込んでしまえばいい。凶器問題はこれで解決ですね」
「いや、できなくはないが、導入は不可じゃ」
「何でですか?これ以上縛りを作る必要もないでしょう?」
「松田よ、質量保存の法則って知ってるか?あんな重たいもの身に着けるものに組み込んだらろくに歩けんぞ」
変なとこで科学に忠実な反応返しやがって。しかし、あの重量を身に着けて生活しろというのは普通の人には確かに無理だな。
俺とシャルルの分だけでも組み込んでもらおうとも考えたが、あまり人間離れしたことはしないようにしないといけないので、黙ってそのままにしておくことにした。
「なるほど、確かに。ところで、専用武器が何でバットなんですか?剣とか銃とかもっと戦いやすい武器にしたほうがいいんでは?」
「俺のバットソードのこと!?ちゃんと剣にもなるよ!」
「でも、もとはバットでしょ?剣そのものとかのほうがよくない?」
「うむ、さすがにプロレスオンリーはどうかと思ったので、若者にふさわしくトウコンジャーはスポーツをモチーフとしておる」
確かにスポーツは若者にふさわしいが、スポーツベースの戦隊スーツはむしろおっさんくさいと思うが。まあいい、どうせは顔は見えないんだ黙っていよう。
「レッドの俺は野球ってこと!赤で1号で野球!あの孤高の男を目指すしかないぜ」
松田君は野球、カ○プの大ファンで、さらに背番号1を背負っていたあの選手(もう引退しているけど)の大ファンのようだ。
「次が現在欠番のブラック。モチーフはラグビーです。これはシャルルさんが担当ですね?さらにその次、つまり3号が私矢田霧瀬、サッカーがモチーフです」
「私が2号か、武器は何が?」
「ブラック専用武器はポールスピア、私の武器はカードダガ―、これだけ2本で一組の武器です」
「槍か、乗馬と槍はあまり得意ではなかったのだが、私で務まるだろうか」
「乗馬されてたんですね。槍も何か武術をされたたんですか?大丈夫です、何かあれば私がフォローいたします」
「ま、まあそのようなところだ。よ、よろしくお願いする」
シャルルは早くも矢田さんに苦手オーラを出してるな。面白そうだが、ちょっと気を付けとこう。残るは俺とピンクの桜子。となると順番としては、
「次がイエローの俺、でいいのかな?」
「あたり。で、最後がピンクのうちね」
「それぞれ武器は、ラケットアックスとバトンロッド、モチーフはテニスとチアリーディングじゃ」
「テニスか、やったことないし、シャルルじゃないけど、俺も斧なんか使ったことないんだよなあ」
「普通に生活してたらそうそう斧なんか使わないよ、葵さん変なの」
桜子には笑われたが、そういやそうだな。仲間には斧振り回してるやつもいたんだけど斧使う日本人なんてごく少数だ。やっぱまだどこか麻痺してるな。
「そうだな。て、話題をそのまま流すとこだった。スポーツモチーフは分かったけど、武器はそれはそれとして、銃や剣を用意すべきだったのでは?」
「それはいかんぞ。そんなことしたら銃刀法違反じゃ。あくまで趣味で作ってたんじゃから、はじめからバレバレの銃剣類つけたら万一の時に儂がつかまるわい」
「そうですね!逮捕されないようにする備えは大切ですしね!」
つかまらないようにするのは大事だ。さっきアリ男が人間だと思ってた時、一瞬動かなくて肝を冷やしたもんな。って、ん?
「おおむね理解しましたが、ブラックだけ思いっきり槍じゃないですか」
「陸上競技の槍投げからスポット参戦じゃ!バットもカードもラケットもバトンも、もちろんスピアも全てスポーツ用品、スポーツ用品じゃ!これは重要じゃぞ!」
大事なことだから2回言ったんですね?それはともかく、どうやらネタ切れしたらしい。一応ラグビーゴールがポールだからそれにかけてるんだろうけど、もういいや。
次はマッドクリーチャーについて聞こう。といっても、あまり情報があるとも思えないが。
「では、マッドクリーチャーについてもう少しわかっていることはありませんか?俺とシャルルは人間の幹部と思われる、プリンスルナティックとかいうコスプレ野郎に遭遇したのですが心当たりは?」
松田君と桜子はあまりのネーミングセンスに吹き出し、矢田さんは冷めた目をしている。うん、これが常識的な反応だ。21世紀にもなっていい年した自称プリンス-しかも鎧着てるし-とか、やはり俺を笑わせに来ているとしか思えん。
「おそらく協力者だと思うが、心当たりはないのう。田中はあれで以外と顔が広かったからのう」
顔広いんだ、プロフェッサー田中。額の面積も広そうなやせぎすのいやらしい表情した男を想像していたのだが、優秀な科学者であるのは間違いないようだし、あなどってはいけないのかもしれない。
それに、遭遇したのは数回だけでは情報がないのも無理はないか。あとは戦いながら情報を得ていくしかないな。
漏らしながら逃げるような間抜けだから何とかなるだろう。
「だいたい、情報はこんなところですね。後は奴らの出現をどう察知するかですが、警察とは協力できないんですか?」
「今回の件もあるし、警察とも多少は連携できると思うがあまりあてにはせん方がいい。怪人が襲ってきますと言ってもふつうは信じないからのう」
………それもそうだな。
さっき俺らが閉口したのと同じ理由だな。テロリストですと言えばもうちょっとはいけるのかもしれないが限界はあるってことか。
「ただ、実際に改造生物が暴れだした後の避難誘導などは十分に任せられるはずじゃ」
「なるほど、衛兵にもそれぞれ役割があるということか」
シャルルがなんか勘違いしてるみたいだけど、面倒だから放っておこう。害はなさそうだし。
「あと、警察の中に内通者がいる可能性が高い。現場到着がやけに遅い気がするのでな」
「あんな間抜けそうな組織なのに?」
「間抜けかどうかはともかく、奴らの技術と資金源はかなりのもの、一人や二人抱き込まれていても不思議ではない」
なるほど、やけに警察が来るのが遅いと思ったのはそういう事情もあるのか。どうやって到着を遅らせているのかは分からんが、気を付けたほうがよさそうだ。あと、逮捕はごめんだ。
「こちらも今分かってる情報はこれくらいかのう」
「そうですね。そろそろいい時間ですし。今日のところはここまでにしましょう」
時計を見れば19:00過ぎ、日の長い時期だからまだかろうじて明るいが、学生はいいかげん家路につくべきだろう。最近の学生がどういう行動を放課後取るのかは知らんが。
「そうじゃな、松田、矢田、杉。君たちは下校するように」
「分かりました!」
「お疲れ様です」
「おつかれ~。じゃあ、葵さんと、シャルルさん?だっけ。親睦深めるためにカラオケでも行こっか?」
おいおい、帰れと指示する校長の前で遊びます宣言かよ。大丈夫か?
「お、いいのう!パッと行くぞい!」
いいのかよ!校長ノリノリだな。
「松田君と矢田君もどうじゃ?」
「行きましょう!」
「デートまでの合間でよければ」
他の2人も行くらしい。しかし、矢田さんは彼氏持ちか。美人だし恋人の1人や2人いてもおかしくはないが、ずいぶんオープンなんだな、最近は。
と、この時は思ってました。
この後、校長がパトロンとなりカラオケ大会が開かれ短時間ではあるものの大いに盛り上がった。矢田さんも楽しかったのか最後まで残り、時間を埋めるためか彼氏が店まで迎えに来た。
この他人から見れば選抜基準が全く分からないメンツ(30歳の認めたくないがおっさんに、明らかにガタイのおかしい老人、金髪の外国人、高校生3人)で構成されたカラオケ大会を見てなお、『今後とも彼女をお願いします』と礼儀正しく挨拶するナイスガイだった。
他校の学生さんらしいが、若いっていいね、とこの時は思ってました(重要なので2回目)。
なお、さらにこの後、『ご飯の時間に遅れるなら連絡しろ!』と、何の連絡もせずにいたことを母ちゃんにめちゃくちゃ怒られた。実家住まいはつらい………。




