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第十一話:トウコンジャーの秘密 校長は主人公の次に作中どうしようもない奴です!

いわゆる説明会です。


作者はハードコアデスマッチが大好きです!

 その後、俺がトウコンジャーになるかどうかで時間を使いすぎてしまい、店のランチタイムが終了してしまった。テラスも掃除して夜の営業に備えたいとのことなので、ひとまず店を出ることにした。しかし、話はまだ全く終わっていない。


「トウコンジャーになるのは分かった。しかし聞きたいことが大量にある。よくよく考えたら君ら全員未成年だろ。長官はいないの長官は?」


「長官っていうか校長がいますよ!」


「松田君だっけ?高校生なんだから学校に校長くらいいるのは分かるよ。そうじゃなくて、君らを指揮してる人間はいないの?」


「うん、だからコーチョーが指揮取ってるよ」


 え?校長が戦隊指揮も兼ねてるのかよ!この学校大丈夫か?ひょっとして桜子が単位云々言っていたのはこれが原因か?


「伊達さん、よろしいですか?」


 頭を抱えていると矢田さんから声をかけられた。さっきまでどこかに電話をしていたが電話が終わったらしい。


「今校長先生に事情を報告してまいりました。先生も直接会って話がしたいと言っています。学校までご足労願えますか?」


 一気に校長かよ。この戦隊、リーダーは松田君だけど、実際に支配してんのは矢田さんだな。

 とはいえ、大ボスの校長が会ってくれるなら話が早い、いろいろ聞きたいこともあるし、彼ら3人よりは事情も詳しいだろう。行かせていただこう!


「分かった行くよ。学校でいいの?」


「はい、では参りましょう」




 そんなこんなでやってきた学校。高校に入るなんてまさしく12年ぶりだ。関係者でもない30歳が学校に入るってでもなんか怪しいな。


「校長室に案内するよう言われています。こちらへどうぞ」


 矢田さんの案内で行内を進んでいくが結構広いなこの高校。お行儀が悪いが、歩きスマホで情報を調べてみる。


 私立広沢学園、っと出た出た。俺が高校受験してた頃はなかった学校だ。できたのはここ10年くらいだろう。なになに。


 広沢長政氏が青少年の育成のために創設した学校法人。小学校~高校までを運営している。最大の特徴は、すべての運営を広沢氏の私費で運営しており、学費が完全免除である点。教師陣も校長を兼任する広沢氏自身のパイプで揃えた実力者ぞろいで、新興の学校にもかかわらず、入試の倍率は激化の一途をたどる。多くの注目を集める教育機関である。


 広沢長政という人物についてもついでに調べてみる。画期的な発明をいくつも発表してきた優れた科学者で、研究成果によって得た資金をもとに広沢学園を設立したらしい。立派な経歴であるが、メディアの前にはほとんど姿を現さず、なかなかに謎の深い人物のようだ。


 すごい学校だが何でこんなことやってるかますます疑問だな。エロゲーの設定みたいに後ろ暗いものがあったりするんじゃなかろうな?


「葵」


 俺の思考がよからぬ方向に行く前にシャルルから声がかけられた。いかんいかん、助かったぜ。


「なんだ?」


「ここも学校というものなのだな?葵の家の周りにある学校とはずいぶん規模が違うようだが」


 そういえば、シャルルは学校の存在にも関心してたな。身分を問わず平等な教育を受けられる期間があるのはすばらしいって。

 姉ちゃんが都合つかないときに何度か翔とこころの引率で集団登校について行ったら一気に人気者になったっけ。

 姉ちゃんの代わりが俺の時は大ブーイングを女子たちとお母さんたちから食らったな。まじで泣いたわ。


「どうした?」


「………いや、なんでもない。ここは小中高が同じ敷地にあるから敷地も広いみたいだな。しかも俺達を呼んだ校長が全部自腹で賄っているらしい」


「すばらしい。やはり教育というのは未来を支えるためにはなくてはならぬものなのだな」


「さすがにここは特別だよ。普通は高校以上は学費がかかる。全部平等にはできないからな。できるのはスタートラインをそろえてやるくらいだよ」


「それでも素晴らしいさ。わが聖王国ではそれすらできていないのだから・・・着いたようだな」


 話しているうちに目的地に着いたらしい。いかにもな立派な扉だ。学費とって作った設備なら間違いなく不満が出るくらいには。


「桜子さん、校長先生がご在席か確認してもらる?」


「りょーかい、ちょっと待ってね」


 というや、桜子はノックもせず校長室のドアを開ける。


「コーチョーいる~?あ、いるね、電話で言ってた2人つれてきたよ」


『分かった、入ってもらってくれ』


 ドア越しに声が聞こえる。どうやら歓迎されているらしい。伺うとしようか。校長室の扉をくぐると一人の人物が歓迎してくれた。彼が校長の広沢氏か。しかし・・・、


「よく戻った。そして、よく来てくれた、新たな戦士たちよ」


 出迎えてくれたのは、60代と思われる高級そうなスーツをきっちりと着こなした老紳士。ここまでなら学者としても校長としても問題ない。

 が、でかい。178cmの俺より10cm以上高いシャルルよりさらに10cmは高い。体格自体も年齢を感じさせぬがっしりとした肉体だ。今この場でプロレスラーといわれてもうなずけるほどだ。いろいろ聞きたかったが、とりあえず、


「いい体してますね」


 異世界行って以降、俺も相当に鍛えられたので自分のガタイにはかなり自信があるのだが、単純な見た目の筋肉量なら完敗である。


「おお!わかってくれるか!広沢長政68才、2m、120kg、まだまだ現役よ!」


「素晴らしい!俺も30年後はあなたのようにありたいものです」


 がっしりと握手をする。言葉は無用だ。ただ、分かり合えた、それだけだ!

……さて、さすがにまわりの視線が痛くなってきたので本題に入るか。


「失礼しました。わたくしは伊達葵と申します。このたびはお招きいただきましたことに御礼申し上げます。本日は伺いたいことがあり、お招きにあずかりました。こちらはシャルル。わたくしの友人です。同じく今回の件に遭遇したためともに参りました」


 ひとまずは自己紹介。校長はすでに自己紹介済みなので省略でいいだろう。


「うむ、まずはマッドクリーチャーの侵攻を阻んでくれた、という点に御礼申し上げる。そして、確認したいことというのは、こちらが話すべきこととイコールであろう、長い話になるだろうから、まずはかけてほしい」


「失礼いたします」


 来客用と思われる応接用のスペースのソファに腰掛ける。隣にはシャルル、さらにその隣に、矢田さんが座りシャルルがびくっとするがスルーする。

 松田君と桜子は席が足りず、他から椅子をもってきて座った。さて、何から聞こうか。

 


「話すことはいろいろあるが、まずは<マッドクリーチャー>について話すとしようかのう」


 俺が何を聞くか考えていると先に校長から内容をふられた。こちらとしては順番に不満があるわけでもない。話しやすい順番で話してもらおう。


「承知いたしました。お願いできますか?」


「うむ。マッドクリーチャー、これは世界征服をたくらむ科学者、プロフェッサー田中が設立した悪の先頭組織じゃ」


 ………。


 出されたコーヒー飲んでなくてよかった。飲んでたら間違いなく吹いてたわ。いまどき、世界征服たくらむ悪の科学者とかいたのかよ!?しかも、プロフェッサー田中って、プリンスルナティックさんじゃないけど芸名くらい使えよ!

 俺が笑いをこらえて肩を震わせていると、シャルルは至って真面目に質問を返していた、そうだね、君には新鮮だもんね。


「なるほど、詳細は把握しかねますが、先進的な技術を持つ者がこの世界に悪の手を伸ばしている、ということですね?」


「そういうことじゃ。奴は優れた生物学者じゃが、その頭脳を己の欲望のために使うことにした、研究者の面汚しよ」


 校長が憤っている。同じ学者として許せぬ部分があるのだろう。笑って悪かったかな?


「なるほど。あのアリ男という戦闘員はアリをそのまま人間化させ戦闘力としたと聞きました。恐るべき技術ですね。ネーミングセンスには違う意味で恐るべきセンスを感じますが」


 偽らざる俺の本音である。あいつらは間違いなく俺を笑わせに来ているな、俺は思っている。


「うむ、あのアリ男とは何度か戦ったが、トウコンジャーの通常の状態とほぼ同じ戦闘力を有しておる。しかし、あのアリ男は戦闘員じゃったのか」


 通常の?なんか引っかかるが、とりあえず話を進めるか。


「ええ、今回かなりの数が投入されました。とりあえずは退けましたが」


「ふうむ。これまでは1体ずつでてきていたから、何も疑問に感じていなかったが、今回の件を考えると戦闘員と判断せねばならんのう」


「校長!てことは今後もあいつらは何匹も出てくるってことか!?」


 これまで黙っていた松田君が声を上げた。これまでとは戦いの本質が変わるのだ、見るからに熱血な彼が声を上げるのもわかる。


「そういうことになるのう」


「おお!燃えてきたぜ!」


 さすが熱血系、物怖じせんな。しかし、


「あの、それ私達でどうにかなるものではないと思うのですが」


「危ないことはしたくないんだけど、やっぱやめようかな」


 これが普通の反応だよな。矢田さんと桜子は及び腰だ。


「うむ、しかし、それについては対応できると考えておる。専用武器の完成を急ごう」


「そういえば彼らが持っていた武器?は新たに支給されたと聞きました。それに関係が?」


「そうだ、校長。あのバットソードを装備したらこれまでよりも戦えそうな感じだったんだけどあれ新装備だよな!」


 戦っていないので、あやふやな聞き方である。なんかゴメン。


「持ち主に影響を及ぼすとは、聖剣・魔剣の類ですか?」


 シャルル的にはそうなるよね。本当にそんな祝福やら呪いやらの効果のある武器や防具に囲まれてたんだもん。でも、現代に魔法は無いぞ、多分。


「そんなけったいなものではない。その秘密は闘魂スーツにある」


 え?武器じゃなくてスーツのほうなの?今の松田君の感想を聞くにどう考えても新しい武器で強くなった感じだけど。


「専用武器はまだ未完成。すべての力を発揮しているわけではない。松田がなぜ強くなったように感じたかじゃが、君らの装備する闘魂スーツは武器、いや正確ではないのう、凶器を装備することで性能を向上させることができるようになっておる」


 なんか、すっげえドヤ顔だけど、なんじゃそりゃ?他の4人も俺同様頭に<?>が浮かんでいる。


「凶器って?」


「プロレスなんかでよくあるじゃろ。儂、バックヤードレスリングが好きでの。ハードコア仕様を取り入れたのが現在の闘魂スーツじゃ」


「え?趣味関連ですか?まさか、トウコンジャーという名前は」


「うむ、無論趣味で名づけた。プロレス好きじゃし」


 校長、闘○三銃士はさすがに古いよ。て、そうじゃなくて!

 どうやら現メンバー3人も知らなかったようで呆然としていた。無理もない。いろいろ製作者の趣味で変な機能や縛りをつけられたらたまったもんじゃないし。


「趣味でって何考えてんですか?平和がかかってるんですよ!」


 さすがにこれは変身させられる側の年長者として、代表して抗議しよう。まじめにやってくれ!


「のう、伊達よ」


「なんでしょう?早くまともな仕様にしてください」


「それは無理じゃ。正確に言うと可能じゃが、時間がかかりすぎるから、マッドクリーチャーに対抗するのに間に合わなくなる」


「じゃなんでそんなふざけたもの作ってるんですか?」


「ふざけとは失礼な。儂の持つ最新の技術を余すことなく投じた逸品じゃ。そもそもこのスーツはマッドクリーチャーと戦うために作られたものではないのを今回引っ張り出すことになったんじゃ、仕方なかろう?」


「え?何のために作ったんだよ校長!?」


「私も知りたいです」


「うちも」



「私も伺いたいな」


 他の4人も俺に同意のようだ。当たり前だよね。


「安全にバックヤードレスリングを楽しむ為じゃ!」


 ………。


 あんまりだろそれ、そんなもんで戦わせるな!5人そろってブーイングを繰り広げるが校長は動じない。



「なあみんな。さっきも言うたとおり、闘魂スーツはそもそもマッドクリーチャーと戦うために作られたものではない。わしが趣味で作ったのを引っ張り出してきたものじゃ」


「「「「「だから?」」」」」


「そもそも、世界征服をたくらむ悪の科学者なんか現実に現れるなんて誰も考えんわ、備えなんかあるわけなかろ?これが一番有効そうだったんじゃから、しょうがないじゃろ?」


「「「「「………………………」」」」」


 すったもんだの末、闘魂スーツの縛り機能についてはこれ以上議論しないことになった。そうだよな、世界征服たくらむ悪の科学者なんて、いまどきテレビの中にもいないもんな……。

明日は本編ではなく、登場人物紹介をアップします。

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