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第十話:新たなる戦士たち 一人だけ生身名乗りはつらいよね!

作者は一人だけ素の状態で生身ポーズを披露する羽目になったキョウリュウグリーンが大好きです!

 その後、桜子が身なりを整えるのを待って(お楽しみだったわけじゃねえぞ)、3人のところに戻ることにする。

 が、なぜかおもむろに変身しようとする桜子。


「もう戦闘終わってるけどわざわざ変身するとか、守秘義務でもあんの?」


「ないではないけど、それよりも変身しないとそれ持ってられないから」


 指差した先にあるのは、彼女が先ほど持っていたバトンだった。


「これがどうかしたのか・・・」


 って、重い。形に見合った重さじゃない。持つだけなら何とかなるだろうけど、逆に言えば普通の人間では持つだけで精いっぱいだろう。なるほど、変身しないと小柄な彼女にはちょっと厳しそうだ。



「なにこれ?すごい重いけど」



 むろん俺にとっては全く問題ないレベルだが、ここは聞いておくべきだろう。


「うちの専用武器だって。バトンロッドって名前らしいよ」


「専用武器あるんだ」


「今回新しく渡されたんだ。これまでとはわけが違うから試作品だけどって。今までは素手だったんだよ。ありえなくない?」


 武器なしで女子校生を怪物と戦わせるなよ。武器があってもどうかと思うけど。いや、その前にそもそも戦うという選択肢があること自体がおかしいな。


「そうなんだ。これ、重いだろうから俺がもっとくよ」


「ホント?助かるー」


 こんな重いの持たせられんし、持たせて変身した状態で一緒に行くとむちゃくちゃ怪しいし。30男と女子校生が並んで歩いているのも、それはそれで文字通り怪しいが。桜子の外見もあれだしな。


 元の場所に戻ると、シャルルと、高校生男女のペア、合わせて3人が戦闘現場の端っこの方で待っていた。おや、あっちも変身解いちゃったか。俺が桜子フォローに回る意味あんまりなかったな。しかし、変身を解いているということは、どうやら敵ではないと理解してもらえたようだ。

 ちなみにグロ状態の現場を直接見ないでいいようにビルの陰に移動している。


「シャルル待たせた」


「先輩達、お待たせ~」


 俺とシャルル、赤と青、それに桜子の2対3で向かい合う。ここまで何があったかを抑えておいたほうがよさそうだが、逃げたほうがいいのかな。特にシャルル。一応声だけはかけとくか。


「大丈夫だったか?」


「何とか我々が先ほどの賊の仲間ではないということは理解してもらえた。そうしたら何やら姿が変わったが、今のが本来の姿なのだろうな。姿が変わる前何の魔力も感じなかったのが不思議だがな」


 ふむ、こちらはようやく誤解を解いたところか。事情の分かる俺がいなかったのだ、対応が遅れるのは仕方ない。むしろこの状況でよく戦闘再開を招かなかったものだ、さすがイケメン。


「ところで、そろそろ逃げ……」


「あの」


 声をかけてくるのはレッドだった少年だ。彼らに関する情報とマッドクリーチャー()とやらの情報を仕入れたいところだが、いろんな意味でこんなところに長居はしたくない。


「いろいろ話したいのは分かるが、ここではまずい。場所を変えようか」


「あ、はい。分かりました」


 うむうむ、素直でよろしい。どこか落ち着く場所でと言いたいところだが、この重たいバトンをいつまでも持っておきたくもないな。先にこれだけ何とかしよう。


「これ重いから俺が持ってきたけど、どうしたらいい?」


「専用の運搬車両がありますからそこに………ってよく変身せずに片手で持てますね?」


「………鍛えてるからね」


 しまった、軽々持ちすぎたか。運搬車両とか部外者に見せてもいいのかねと思いながら教えられたところまで行くと、そこにあったのは軽トラだった。確かに、運搬には便利だが、変身ヒーローとしてはどうなの?


 荷台を見ると、ウェポンラックがあってここだけ正義のヒーローっぽい。しかし収納されているのはバットとカードみたいなナイフ2本ではねえ。そう思いつつも、収納場所と思しきくぼみにバトンを収める。空きスペースがあと2つある。一つは槍と思われる、もう一つはラケットっぽい。槍(推定)以外まともなものがない。誰も乗ってないけど、誰が運転してきたんだ?駐禁切られても知らんぞ。


 ん、おや着信が。


「どうしたシャルル?」


『先ほどの店に移動することになった。そちらで合流しよう』


「了解」


 さっきの店、まだ開いてるのか、逞しいな。ともかくもひとまず向かうことにしようか。




 さっきの店まで戻ってきた。営業再開しているようには見えないが、テラスには確かに4人いる。ドアを開けてみると、様子を見に戻ってきた店員さんがいた。テラスなら使っていいと許可してくれたらしいので、そのままテラスに行くことにする。


 先ほどと同じ席に4人座っている。しかし、テーブルが円形で4人がそれぞれ向かい合うように座っている、俺が座れないのんだが。

 こういう時は力技だ。隣のテーブルを寄せて強引に2対3の席次に変えた。なんかブルーの子からにらまれたけど気にしない。


「では、改めて。先ほどはありがとうございました。トウコンレッド、松田茂治っていいます」


「矢田 霧瀬と申します。私はトウコンブルーです。これって、面と向かって名乗るのは恥ずかしいですね」


 レッドとブルーが名乗る。松田君と矢田さんね。矢田さんからシャルルへ粘つくような視線を感じるが大丈夫かなシャルル?


「葵さんにはもう自己紹介しちゃったけど、うちは杉桜子。いちおうピンクだよ」


 まずは自己紹介からってことね、ではこちらも名乗ろう。


「俺は伊達葵、こっちはシャルル」


 名乗ったところで改めて、対面に座る3人を見る。3人とも制服、つまり学生ということか。

 松田君は俺の正面に座っている。率先して話しているところを見るに彼がリーダーなのだろう。制服(開襟シャツ)のしたが赤シャツ、やけに目立つリストバンド付きといかにもな熱血系な格好だが、根は真面目そうだ。


 隣を見てみる。ブルーこと矢田さん。なんというかクール系の美少女だな。桜子とは対照的にすらっとした長身のモデル体型だ。腰くらいまでありそうな髪の毛は癖一つついてない、日本のお姫様って印象だな。地味なフォルムのメガネをかけているが、これがまた似合っていて清楚そうな印象に拍車をかける。が、先ほどのシャルルへの視線が気にかかる。


 反対の隣は桜子。こうしてみると好対照だな。こっちは童顔だけど、そこから下は………。おっといかんいかん(4回目)。


「いろいろ聞きたいことはあるし、そっちも尋ねたいことがあると思うけど、まず先に一つ。制服ということは君たちは学生?」


「はい、3人とも同じ高校です。松田と私は2年、杉は1年生です」


 マジか。これまでも高校生が戦隊組んでた番組はあったけど、現実に学生さん戦わせちゃいかんでしょ。


「じゃあ、こっちも質問です!さっき、桜子ちゃんからトウコンジャーに加入してもらえると聞いたんですが本当ですか!?お二人ともかなり強いみたいなんで助かります!」


 ちょっと待て、何で手伝うが加入するに切り替わってんだ!



「残りの色はブラックとイエローです!どちらか希望ありますか!?」



「なんだ、葵でそのようなところまで話を詰めていたのか」



「ちょっと待て。手伝うとは確かに言ったが、加入するとは言ってないぞ!」



「え?やってくんないの?」



「いや、手伝うっていったから、ちゃんと手伝うけど変身はないよ。俺30だよ、いまさら変身は無いって!」



 戦うのは承知のうえだが、変身は勘弁してくれ。今更恥ずかしいって。そういうのは若いイケメンにやらせてくれよ。隣にちょうどいいのがいるしさ。



「大丈夫ですって多分!」

「きっと大丈夫ですよ、根拠はないですけど」

「やってくれるって言ったじゃん」


「黒と黄色しかないのか。光の対極であえて黒というのもいいかもしれないな。葵、私が黒でいいか?」


 なんか勝手に選び始めたが、彼なら、戦隊ファンからの不満も出るまい。


「好きにしてくれ」


「分かった、では、葵が黄色だな」


「分かった……って、だから変身はしないって!」


 こいつが天然気味だってこと忘れてた。なし崩しで決められるとこだったぜ。危ない危ない。


「伊達さん!変身しなくてどうやって戦うんですか!?」

「死にますよ」

「いいじゃん黄色、やろうよ!」


「どうした?やはり黒のほうがいいのか。それなら代わるが」


 いかん、このままでは力技で押し切られる。何とか突破口を開かねば。


「だから高校生と20歳の中にひとりだけ30歳はつらいって!」



 シャルルと旅してた時は、もっと年齢的に近かった(最年少シャルルで俺は上から2番目)から気にならなかったが、これはジェネレーションギャップがきつい!


「そんなこと言って一人だけ変身しなかったらなお目立ちますよ!」

「生身でポーズとか決める気ですか?」

「むしろ恥ずかしいって」


「葵、一人だけ輪を乱すのは良くないというのは、いつも君が言っていたことではないか」


 ………こうして、俺、伊達葵(30)はトウコンジャーの4号、トウコンイエローに就任することになった。どうしてこうなった!

明日と明後日はお休みで次回は月曜に更新いたします。

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