春の季節
「え??将棋部は潰れた!?」
職員室で思わず大きな声を出してしまう。私は中学校へ上がった。担任の先生もびっくりしてキョトンとした顔をしている。
「あぁ...残念ながら五年前に無くなったんだ。白海は将棋が好きなのか?楽しみにしていたんだろうが悪いな。」
先生は自分も本当に残念そうに肩を落として私の気持ちを慮っているようだ。
諦めてお辞儀をして職員室のドアに手をかけた時、「あ!でも将棋部つくったらどうだ?部員を白海が集めるんだ!」と先生が私を呼び止めた。
「じゃあつくります!!しょうぎぶ!!何人集めたらいいんですか!!??」
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教室に戻るとみゆちゃんにそのことを報告した、
「あ!そうなんだ、、、千春、残念だったね。でも一緒に部員集め頑張ろうね!」
この子はいつもそうだ。私に寄り添ってくれ、心の曇りを拭い去ってくれる。いったいどれほどの優しさを今まで降りまいてきたんだろう。
「えぇーもう5人どうやって集めたらいいのー!?みゆちゃん入れてあと3人だよなぁ。あ!夏の将棋大会で私が負けた相手ってここの中学の生徒かも!年も同じだし!」
そう思うとかつてモーセが海を二つに割ったように急に状況が好転したように感じた。私は廊下を先生に注意されないような速さで廊下をキュッキュッと上履きでふみ鳴らしながら駆けて行った。
「確かまだ昇降口にクラス表が貼ってあったから私見てくる!」
勢いよく教室を飛び出し跳ね馬のように駆けて行く。時が止まっているようにワクワクしている。あの子がこの学校にいるかも!その気持ちが彼女を突き動かす。千春が思っていた通りまだクラス表は貼ってあった。
千春はまだ受験を経験したことがないが、まるで受験番号を心臓が張り裂ける思いで探す受験生のように彼の名前を探した。一年E組 出席番号5番 大石健吾。あった。天をかけるペガサスのように彼女は喜びで跳ねた。そしてそれ
を見た瞬間に彼女は一年E組の教室に向かって駆け出していた。
彼のクラスの前にきた。恐る恐るドアの小窓から彼を探す。それはまるで隣のクラスの男の子に恋をしている女の子のようであった。他の子がいる雑踏の中から、窓際の席で外をぼんやり見ている大石くんを見つけた。
「大石くん!!」
「おお!あの将棋大会の!久しぶりだな!同じ中学だったのか!」
大石くんが千春の方へ小走りで駆け寄ってくる。おでこに汗をかきながら千春は大石くんをじっと待っている。
「大石くん、将棋部はいらない?」
「え、将棋部?確かここの学校にはなかったと思ったけど?」
「うん。だからつくるの!一から。あのね、私の友達のみゆって子も部員になってくれることになったのね。それであと3人必要なんだけど、大石くんどうかなって!強いし!」
「あぁ。なるほどね。でもごめんね。俺将棋部には入れない。」そういった大石くんはどこか大人びていた。
「え?なんで」千春の心臓がトクトクと緊張してくる。
「俺。将棋のプロになりたい。だから奨励会というところに行かなきゃいけないんだ・・・ごめん」
千春は思わず「どうして?私たちと一緒に指そうよ!強い人と指したいんだったら私もっと強くなるから!ね!いいでしょ?」と声を荒げる。
「ごめん。ごめんな」
「なんでよ!!!!わけわかんないよ!1」
思わずE組のクラスメイト全員が振り向区ような声を出してしまう。気まずい沈黙が流れたあとは、千春が廊下をキュキュと走り去る音が聞こえてくるだけだった。