はじめての大会③
将棋大会が終わり帰路につく。もう夕方になっていたけど都営公園にはプール帰りの子供が野球をしていた。大きな笑い声が聞こえてくる。
「元気だなぁ」
まだ私も小学生なのに何オジサン臭いことを言っているんだろう!明日は私もみゆちゃんでも誘ってプールにでも行こうかな。プールは気持ちいい。あんなに無邪気に遊べるものを生み出した人は偉大だと思う。プール上がりにカップヌードルのカレー味を食べるのも最高だ。そんなことを考えていると、グゥーとお腹がなった。そういえば昼は負けた悔しさであまり食べれなかった。今夜のご飯は何だろう。住宅街を子猫のように縫うようにしてかけていく。その足取りはまるで優勝したかのようだった。
家に帰ると靴を脱ぎ捨てた。
「お母さん!!」
お母さんは夕飯の準備をしていた。カレーの匂いが鼻腔をつく。
「大会どうだった?」
「一回戦負け!でもね、すごい強い人と指せてすっごい楽しかった!相手は自分が考えていた手より何手も先を読んでいたんだよ!」
「そう。良かったね」お母さんは頭を撫でてくれた。2人で笑いあった。今日は良い日だったと心底思う。やっぱり将棋は楽しい。中学へ上がったらみゆちゃんも誘って将棋部へ入ろう。
ベッドへ入ると今日の棋譜を頭の中の将棋盤で再現する。まるで夜空に輝く星を置いていくように駒を動かす。そのうち星の煌めきの輪郭がぼやけてきて知らぬ間に深く眠った。




