急いでもうまくいくことは少ない
短いけどきりがよいので投稿です。
18-24時の間でアップしようと思います。
夏のような暖かい季節が終わり、森も少し涼しくなってきた。暑い時期だからといっても川で水浴びをすることもなく夏はこれと言って生活に変化はなかったかな。
今は秋のお祭りからしばらく経っていて、もうすぐ一年のうちで一番涼しい時期になるらしい。なのでもうすぐ一年が終わる頃だとか。
母さんは気温でなんとなく季節を感じとっていて、今が1年のどれくらいの時期かっていうのの見当をつけているようだ。そのせいなのか今日がこの日にちなんて考えは持っていないみたいだ。
なぜわかったのかというと夏の終わり頃から妙に朝のうちにそわそわしていることがしばらくあったからだ。後からわかったのは、それがエルクの収穫祭が近づいてきた頃だったということだ。
母さんが落ち着いたのがエルクの笛が聞こえたと思ったら、気がついたときには母さんの背に乗せられてエルクの村まで飛んでいた日までだったので、『ああ、お酒が飲みたかったんだな』とちょっと呆れてしまった。
その日は朝からお酒が振舞われて、予想だけど母さんは酒を樽1つ分以上の量を飲んでいた。お祭りの途中で半分くらい入った大きな樽がそのまま母さんの前に置かれたのでびっくりしたが、それに嬉しそうに嘴を突っ込んで飲む母さんと、その周りにエルクがたまに拝みにきていたのでこれは毎年のことなんだろうなあ…。
その日のお祭りは収穫祭に相応しい豪華なもので酒や食べ物がこれでもかと並んでいた。
久しぶりに普通の料理を腹一杯食べれたので嬉しかったのだけれど、最近は果実よりも肉を食べることが多くなったのを知らないエルクの子どもや女性の多くが、料理じゃなくて色々な果実を食べさせようとしてくるのには困ってしまった。
まあ出された物は全て食べてしまったけどね。
この体は燃費が良いみたいであまり空腹は感じないのだけれど、だからと言って食べられる量が少ないのかと言うとそうでもなくて際限なく食べられるんじゃないかと思うぐらいは食べた。
たぶん母さんは自分の体より大きい体積の酒を飲んだけれど、俺は体より大きな体積の食べ物をお腹に収めたはずだ。
お祭りの間は気にならなかったんだけれど、巣に戻ってからこんなに食糧を消費して大丈夫なのかと思い母さんに質問したら『いつも余ってる分を街に売りに行くぐらい豊作だから気にするんじゃないよ』と笑いながら答えてくれた。
どうやら母さんは俺が生まれる前は、たまにエルクの村に行っては情報を集めていたらしい。
エルクの村だけでなくヒトの王都やヴィスやフェアルの国も行ったことがあるとか。というよりも巣の場所を決めてからも一年中ここに留まることはそんなになくて、数年から十数年は同じ国に顔をだしては別の国へと活動場所を変えていたらしい。
成長が遅いから同じ場所には居ることができず、一度離れれば友人と呼べるほど仲の良くなった人たちにも2度と会うことはない。それでも何度か友人と呼べる人たちの子どもや孫の顔を見ることはできたから嬉しいと語ってくれた。
ただその話をしてくれた笑顔は少し寂しそうだったけど…。
「なんで母さんはグリフォンの住んでいる山を離れたの?」
「突然どうしたんだい?」
「前に住んでいたって言ってたけど、そっちで巣を作らなかったのが不思議にだなって思ったから」
「あー……うーん。そうだねえ」
母さんはとても言いづらそうにしている。収穫祭の事を思い出したら、母さんが色々な場所を見て回ってるのが不思議に感じただけなんだけど…。
「別に言いづらいなら言わなくてもいいよ」
「…もうちょっとお前が大きくなったらしてあげようかね」
「もうちょっと大きくなったら?」
「ああ。ちょっと難しい話だからね。お前がヒトに変化できるようになったら教えてあげるよ」
「それって50年ぐらいかかるんじゃ…」
「はやく聞きたかったらいっぱい頑張るんだよ!ばか息子」
そう言って今日の練習は少し違う注文が入った。
「試しに飛びながら肉体の強化ができるかやってみようか。ほら早く強化をしな」
言われた通りに強化をした瞬間俺の体が枝から空中へと移動していた。何が起きたのか全くわからない。だけど強化が切れていなかったので母さんから「早く飛びな!」と言われて咄嗟にできるぐらいには魔法になれたんだろうな。……飛べたかどうかは別問題だけど。
飛ぼうとした瞬間には強化が切れ、そこで一度は空中に留まることはできたのだけれども、そこで上手くいったのか確認しようと下を見たのがいけなかった。
いつもは徐々に高度が下がっていても床が近い場所だった。でも今は下の地面まで数十メートルはあったのだ。それに気がついたとき今まで飛べていた浮遊の魔法が解け俺の体は再び落下を始める。
しかも集中力が思った以上に必要な魔法は、焦れば焦るほどうまくいかない。
飛ぶことは地面数メートルのところまで成功することはなく、結局母さんに助けられたところで安心感から意識を失ってその日の練習は終わった。
「…そろそろ何か考えないとダメかねえ?」