ドルガーの責務
アンドレが偵察部隊の隊長との話し合いから少しして、ドルガーとの話し合いになることになった。
ドルガーの陣営には150騎ほどの帝国兵、その中にアンドレは単騎で対峙している。
偵察部隊隊長よりドルガーへ魔薬中毒症状の竜の首が渡され、状況を話した後、ドルガー率いる一番特攻隊の中にいる魔薬中毒者の洗い出しが行われた。
隊の中の半数以上が魔薬に溺れていた事実にドルガーは驚きを隠せないでいた。
一部には、常習化しているものまでいたことにより、怒りをあらわにしたドルガーは、その場で事情聴取を行わた。
なんでも、帝国のある大貴族が何処かしらで手に入れた魔薬を自己精製して、粗悪品を市民でも手が出る価格で売り出したのがきっかけらしい。
それを聞いたドルガーは、噂だけの話だと思っていたことが事実だった事に怒りを露わにした。
「クソがぁぁぁ!我が帝国は魔薬が蔓延しているのを放置していると疑わざる負えんではないか」
「その帝国が近隣諸国に魔薬を蔓延させるとなると、見過ごす訳には参りませんので、我が主人は私に一任されました。最悪帝国を滅ぼします。」
「一介の兵士風情に何が出来るか!」
「いえいえ、出来ますよ。こんな風に」
魔薬に侵された兵士と竜はその場に倒れ、絶命したのだった。
「なに、簡単な事です。目に見えないだけの事!」
ドルガーと他数名の兵士は呆気に取られて目の当たりにする他なかったのだ。
アンドレの淡々とした口調は、人の死は虫ケラを踏み潰すも同様だと言わんばかりに冷淡で、面倒事を押し付けられて、不快だと言わんばりであったのだ。
「えぇ〜っとドルガーさんでしたかな?帝国には良識のある方もおられると思います。その命をかけてどうにかする事をお勧めしますよ。でないと、我が主人が慈悲のない鏖殺をお約束いたしますので」
ニヤッ
セイレス近郊の森
今は、夜が明けて朝日が見える前のバニラスカイが空に彩りを作っている。
森に親方一行が入る。
「親方様、周囲の魔物を遠ざけるのは済みました。」
「ありがとう、シェリー、取り敢えず早いが朝食の準備をしてくれないか?腹減った」
「分かりました。エッグトーストと腸詰、珈琲で宜しいですか?」
「それで充分だよ。ソーマ偽装結界を頼む。」
「親方、自分でやれよ!私は自己ブレンドの紅茶を愉しみたいんだ。あぁ、分かったよ、分かりました。やります。なんだよ、私これでもギルドマスターよ」
シェリーは初々しく朝食を準備してくれているが、ソーマは俺の喫煙タイムを邪魔したいらしいので、「あ゛ぁ゛」って言ったら、従ってくれた。
少しすると、サラマンダーが上空から降りてきた。
サラマンダーの背中にはゼローグが騎乗していたが、すぐ様降りてきて、俺に抱きついてきた。
「あなたぁぁぁ!!(◯△♯♭∝∽∮)ピンッムギュっ……なにがあったの?」
「おい、やめろ、抱きつくな!俺のタバコを消そうとするな!ぁぁ、ぁぁ珈琲もまだなのにorz」
ゼローグは抱きつき間際に水魔法で俺のタバコを消しにかかって一旦回避したのに、デコピンで火だけ落として消しやがった。
「その前に、朝食だ!シェリー、頼む」
「はいっ親方様。っでその方はどなたですか?」
「あぁシェリーは初めてだったな。こいつはゼローグだ。サラマンダーの母親だよ。っでゼローグ、こいつがシェリーだ前に話したろ、ワイバーンをめちゃくちゃ早く解体出来る獣人の子が居るって、その子だ」
「いえいえ、親方様には、遠く及びません。サラちゃんのお母さんですか、(凄く綺麗な人です。うぅぅぅ)」
シェリー、最後の方、なんて言ったの?
「そうこの子が…(なんていう身体してんのよ、ウチの旦那を誘惑してるの?キィィィ)」
ゼローグ、目が充血してるけど、寝不足?
「取り敢えず、朝食だ、ソーマ、お前の淹れた紅茶をゼローグにも分けてやってくれ、食べながら話すよ。」
帝国の魔薬の話をゼローグにすると、その件でゼローグも色々と動いていたらしく、サラマンダーを俺に付けたのはそのせいだった。
その他にも、竜種の弱体化をどうにかするだの、男の子が欲しいだの、シェリーがそれはお任せ下さいって言ってただの、後半どうでもいいことばかりだなぁ
ソーマは帝国の紅茶の葉の品質が落ちただの、言っていたが、ドレイクにいつ行くのかって話が出た時は、女性達に詰め寄られて、タジタジになってたなぁ。
「っという訳で、アンドレ待ちだな!」
「それならあなた、例のスライムを帝国に放てば宜しいのでは?」
「ダメだ!俺の言うことしか聞かないから、臨機応変が効かない、しかも帝国全土となると、加減が出来ん」
「あらそう、残念ね!ソーマさん、この紅茶美味しいわね、ウチのところに下ろしてくださらない?」
「いやぁ自己ブレンドなもんで、無理ですよ。っと、そろそろ街に戻りましょう、偽装結界が切れそうです。」