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改名

 洋は内心動揺していた。人間だった頃の洋ならこれほど何も感じずにトロールを殺すことは出来なかっただろう。しかし洋は殺しても蚊を潰したときと同じぐらいにしか感じていなかった。

(……何か鬱陶しいとしか思わなかったんだよな〜。やっぱりゴライアスになって精神も変化してるみたいだな。)

 トロールの長と思われるものは首から上を無くし、血を吹き上げながら崩れ落ちた。

「そういや再生能力があるんだっけ?一応燃やしとくか。」とブレス〈火炎〉を使い死体を燃やし尽くす。

(あれ?何故かエルフ達の目が怯えたような目になってるようなきが……まあいいか。)そして先程切り飛ばしたトロールの腕を拾う。その手ににぎられた黒い球体をもぎ取る。

(……魔人化してさらに強くなれるアイテムだったっけ?使ってみたいとこだが、メリットしかないならあいつは常に魔人化していたはず。何かデメリットがあるのか?)とまじまじと見つめる。すると頭の中で声が響いた。

『破壊をもたらせ。さすれば汝に力を与えよう。』

「……なんじゃこりゃ。なんか気持ち悪いな。周りのエルフ達には聞こえてないみたいだし。」

『な、何故支配の言葉が効かない!』

「何故って言われてもなぁ。こっちが聞きたいよ。」

『貴様、一体なんという種族だ?我が支配の言葉を打ち消せる魔物など初めてだ。』

「ゴライアスっていうやつらしいぞ。」

『も、申し訳ありません!まさか貴方様がかの伝説の魔物だとは!なるほど道理でその凄まじい力!何卒先程の無礼をお許しください!』凄い手のひら返しである。

「そ、そうか。まあ別になんともなかったし許そう。所でお前の能力を教えて欲しいんだが。」

『畏まりました。私は魔人の宝珠といいます。主な力は魔物を魔人に変化させることが出来るということと、魔力の探知、魔法によるダメージを現象させるということでございます。』

「魔人になるとどう変わるんだ?」

『はっ!魔人になりますと身体能力を更に上の段階に引き上げることが出来ます。ただ、魔物の姿からより人間のような見た目になります。』

「……何であいつはお前を常につかっていなかったんだ?」

『はっ!あの愚鈍なトロールは私の支配を恐れていたために私を使っておりませんでした。』

(なるほど……。こりゃいいもん拾ったかな?)

 洋はとりあえず魔人の宝珠から目を離す。すると1人のエルフがこちらに近寄ってきた。確か泉の時にこちらに交渉を持ちかけてきたエルフだ。

「あの、私達は一体どうすれば……?」

「へ?いや、別に元の生活に戻っていいが?」

「は?わ、我々を始末したり、服従させたりはしないので?」

「え?」

「え?」

(……よし落ち着こう。これはつまりあれか、俺がエルフを助けたのはエルフ達を支配するため、又は捕食のためだと思っているのか?いや、別にただオーガなんかが可愛いエルフの少女を犯そうとしたのが童貞の俺的に許せなかっただけなんだけど……。どうしよ、これ。)

「えーと、さっきも言ったと思うが俺は恩を返しただけだ。別に対価を貰いに来た訳では無い。」と優しく言い聞かせる。しかし、何故か目の前のエルフは怯えたままだった。そして気づいた。

(そうか、対価を欲しないから怖いのか。利益も無く助ける者なんてそうはいないしな。確かにタダより高いものはないというし…。それなら……)

「ただ、そうだな…俺はいま寝床を探しているんだ。その寝床を提供して欲しい。もちろんタダでとは言わない。代わりにこの里を護ってやろう。」と、洋は言ってみる。どうやら少しエルフ達の怯えはマシになったようだ。何とか思い通りにいってくれてガッツポーズを心の中でする。



 シェイン達エルフはその後、仲間達の亡骸を全て葬る作業を始めた。あの怪物は父と共に里の奥の一番大きな建物、大図書館へ向かった。あそこならばあの怪物の巨体でも入ることが出来る。

 全ての亡骸を葬り終え、シェインは親友を探す。二人は共に一つの墓の前にいた。その墓はエイナの父親の墓だった。その墓の前でエイナは泣き崩れていた。エイナの母は彼女が幼い頃に亡くなっており、エイナは父親に男手一つで育てられた。優しく、繊細な人だった。唯一の肉親を喪ったエイナの悲しみは凄まじいものだろう。

「テオ、エイナ……。」

「シェイン…。お前の母さんの話は聞いたよ。いいのか?母さんにお別れを言わなくて。」

「それはテオも同じでしょ?お父さんを喪って。」

「まあ、俺の親父は石化しただけだしな。世の中には石化を解くことができる薬があるらしいし、お前達とは違い、帰ってくる可能性がある。お前達のほうがよっぽど辛いだろう。」

「私は、お母さんにお別れを言うと泣きそうだったから。お母さんは……いつも私になにがあっても笑って生きろって言ってたんだ。そんなお母さんのお墓の前で泣くのは、嫌だったんだ。」

「確かにお前の母さんは泣き虫だったお前に良くそう言ってたな。しかしお前は強いな。泣き虫シェインだとは思えねぇ。」

「そんな昔のこと言わないでよ……。」とシェインは苦笑する。

「2人とも、ごめんね。二人共親を亡くしたのに私ばかり泣いて。」とエイナが嗚咽混じりに謝ってくる。

「気にしないで。エイナは唯一の家族を亡くしたんだもの。私だって、お父さんも死んじゃったら涙が枯れるまでないちゃうだろうし。」

「ありがとう。シェインは優しいね。うん、もう泣くのはやめ!お父さんも私が泣き続けているのを見ても嬉しくないだろうし。」エイナは立ち上がり、上を向いて言った。

「見てて。絶対にお父さんより凄い料理人になって、お父さんを驚かせてやる。」

「なら、俺が一番最初の客になってやるよ。頼むからまけてくれよ?」とテオがおどけて言う。

「あんたからは倍の金額を取ることにするわ。シェインもお父さんと食べにきてね。まけてあげるから。」

「楽しみにしてるね。」

「ちょ、何で俺はそんなぼったくられるんだよ!」

 そして3人で笑った。



 洋は凄い量の本に圧倒されていた。長老のケイン・エル・フェンリーフと名乗ったエルフに連れられてきたこの場所はどうやら図書館のようだった。天井は10mほどで天井ギリギリの高さまである本棚がズラッとならんでいた。通路の幅も大きくゴライアスの巨体でも問題なく通ることができた。ただ、外から見た所これほど大きくはなさそうだったのが疑問だった。

「この建物見た目より大きくないか?」とケインに尋ねる。

「はい、この建物は魔法により内部の空間を拡げております。ここであれば貴方様でもお過ごしになることができるかと思いまして。」

(別に里のそばで野宿でよかったんだけどな。まあここは厚意にあまえることにするか。)

「この建物はご自由にお使い下さい。もし何かあればこの建物内のエルフにお声をおかけください。夜から貴方様への感謝の宴を開くことになっております。それまではごゆっくりとお過ごしください。」

「ああ、ありがとう。それと、俺のことは……」と言いかけて洋は止まる。(どうしよう。本名をなのるか?ただ、この世界では西洋風の名前が多いみたいだし偽名を作るか?)

「……俺のことはイアスと読んでくれ。貴方様ではムズ痒い。」ゴライアスからゴラを抜いてイアスと言う名前を咄嗟に作りなのる。ネーミングセンスには自信がないので若干不安になる。しかし貴方様と呼ばれるのはちょっと勘弁願いたかったので何かなのる必要があった。

「畏まりました、イアスさま。」とケインは恭しくお辞儀をし、去っていった。

「……さまはいらないんだけどな〜」と洋改めイアスはボヤいた

次回はもしかしたら設定説明回になるかも。

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