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性別の悩み

コーレスの冒険者ギルドがFランク~Dランク冒険者に推奨している宿は全部で9つある。いずれも品質よりも多くの客を泊める方を優先させるそれほどいいとは言えない宿だ。この9つの宿に等分になるようギルドは宿を紹介している。その中で洋たちが紹介された宿、冬の三日月亭は最も品質の低い宿だった。

洋とシェインが宿の戸を開けると中にはガラの悪そうな者達がいた。1階は酒場らしい。それなりに広いが何にせよ汚い。一番奥のカウンターの向こうには厳つい古傷だらけの男がこちらを見定めるように見てきていた。おそらく店員だろう。愛想も何もあったものではないが。とりあえず中に入り店員と思われる男の元に行く。シェインは酒場で呑んだくれている男達を軽蔑するような目で見ながら着いてくる。いくつかの視線がこちらに向かう。観察するようなものが殆どだ。ただねちっこい視線がいくつかあって寒気がした。見た目のいい若い女にまだ幼さの残る顔立ちの可愛らしいエルフの少女にしか見えないのだから仕方ないことではあるが、もともと男だっただけに余計に辛い。店員の元に着くと、ギルドで受け取った紹介状を渡す。

「……フン。部屋は相部屋だ。構わないな?」

「ああ、それでいい。」

「1泊銅貨14枚だ。飯は1食につき銅貨1枚。」

「とりあえず1週間で。飯はいらない。」と里を出る時受け取った財布から銀貨を1枚取り出して渡す。店員は受け取り、代わりに銅貨2枚と鍵を2つ渡してくる。

「部屋は階段を上がって左の突き当たりだ。空いてるベッドを使え。持ち物はベッドの側の箱に入れとけ。それは箱の鍵だ。」

「わかった。」

お釣りと鍵を受け取り階段に行こうとすると酔った男の1人がこちらの道を塞ぐように立ち塞がった。

「おい、女。ここでの礼儀を教えてやる。一緒に来い。」とにやけながら言う。視線が情欲に塗れていた。シェインに向いているならともかく自分に向いているのは勘弁願いたかった。洋は体は女になったが中身は人間の頃のままである。性的対象も女性のままだ。まあ、もし性的対象が変わっていても目の前の男にそそられることはないだろうが。シェインが後から男に殺気を放っているのは、この際置いておく。

「いや、遠慮しておく。」とだけ言って横を通ろうとする。しかし男はこちらの腕を掴み強引に引っ張っていこうとする。

いいかげん鬱陶しかったのでつい腕を振って解こうとしてしまった。男は酒場の端まで吹っ飛んでいった。

「あ……ごめん。」いちおう謝っておく。しかし男は落ちた衝撃で意識を失っているようだった。酒場の全員が目を丸くして唖然としていた。

「はぁ……行くぞシェイン。弓をしまえ。」

2階に上がり言われた部屋に入る。オンボロの二段ベッドが2つ並んでいるだけの部屋だ。四つの場所のうち三つは空だが、一つは誰かが寝ていた。起こさないようにしつつ、誰も使っていない二段ベッドの上の段に入る。汚い布団にシーツ、しかもかなりの数のダニがいた。

「うわぁ……」正直ここで寝たくはないが他に場所もない。仕方ないのでシェインが入ろうとしていた布団と自分の布団に放電を弱めに放ちダニだけを殺して荷物とマントを箱にしまい腰の巾着に魔人の宝珠をしまい、寝ることにした。


翌朝、洋は夜明けと同時に起きた。箱から財布とマントをとりだし、ベッドから出る。シェインを起こしてしまったらしく申し訳なくなる。

「少し外に出てくる。まだ寝ていていいぞ」とだけ言って部屋を出る。寝ていていいと言ったのにシェインもついてきた。宿をでて、裏にまわる。そこにある井戸で顔を洗う。冷たい水が目を覚まさせる。シェインも同じように顔を洗う。

「さて、それじゃあギルドに行って仕事をしてみようと思うんだが、他に何かやりたいことはあるか?」

「いえ、イアス様のお心のままに。」

「……別に絶対服従しろとは言ってないんだから、やりたいことがあれば言ってくれていいんだぞ?」

「なにをおっしゃいます!私はイアス様の物として使われることが最上の喜び!イアス様に意見するなどとてもとても……」

シェインは何故か洋に異常に献身的だ。しかも建前とかではなく、本音から洋演じるイアスに心酔してるらしく、洋の命令を絶対としている。

(なんでシェインはこんなに俺を絶対だと考えてるんだ?俺の命令全てに従うっていうのは、凄いプレッシャーだからやめて欲しいんだがな〜)


シェイン自身気づいていない事だがシェインはイアスという魔物に恋をしていた。同性愛者ではないとシェイン自身は思っているが、シェインは生粋の同性愛者だった。男には一切性的欲望を抱いたことが無かった。ついでにシェインは好きな人にはとことん尽くすタイプの性格だった。さらに命を救われた感謝の気持ちもあった。そのため洋の命令を絶対としておりイアスという魔物に心酔しているのだ。


「まあ、わかった。それじゃあギルドにいくとするか。」そう言って洋はギルドに向かって歩き始めた。


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