最終話 わたしはジェニファー
私はマヤ。
父はアメリカ人、母はマレーシア人。だが、父の仕事の影響で日本に5歳からすんでいる。
保育園へ行き、友達を作ろうとしても誰も相手してくれない。
友達と言えるのは先生ぐらいだった。
でも私は日本で育っているから日本人だ。
友達がいない分一人で色々な遊びを考えた。
バッタとカエルに紐を結び綱引きとか。
ある時保育園の先生が言った。
「何か本を書いてみるとかいいんじゃない。マヤちゃんおもしろいから、みんな読んでくれるよ。」
私はすぐに書き出した。やはり自分が日本人であることをアピールできるほうがいい。
初めて書いたのは(おサムライトラック)というものだ。
(サムライがトラックを運転すると、刀は引っ掛かるし、ちょんまげは天井にあたるし、大変。だから刀を家に置いて、ちょんまげを切りました。でも私はサムライ。)
内容どうこうではなく、サムライらしさをなくしながらも私はサムライという内容だ。
先生は笑った。子供は笑わなかった。
ならばもっと大人を笑わせよう。
そして(日本に来たらわかるのに)を書いた。
相変わらず大人は笑った。
私は先生の名前の(神谷桃子)をもじり、ジングウジモーコという名前で本を書いた。
先生は結婚し保育園を去った。
寂しくて、でも友達も出来なくて、悲しかったが小学校に上がると、一人友達ができた。
カノジョは父と母が自殺し、弟と施設に暮らしていると言った。
私はカノジョを笑わせたくて本を見せた。カノジョは気に入り一緒にジングウジモーコとして本を書いた。
カノジョはよく弟の話をした。弟がかわいくてしかたないそうだ。
その子は突然父と母の幽霊が出てきた、とても怖いといいだした。
私は目と耳を隠したらそんなの見えないし聞こえないと教えた。
ある時、カノジョは父と母の所へ行きたいと言ってきた。
死語の世界は興味があった。だが死にたいとは思ったことはない。
「お父さんとお母さんはどうやって死んだの?」
首をくくり死んだと言った。
そんなことで死ねるのか?
私とカノジョは家にあるロープを使い、近所の土手で首に巻いた。
それだけじゃわからず橋の下へ行き柵にロープを巻いてやってみた。
とても苦しかった。意識がなくなりそうだった。
するとカノジョは足を滑らせた。
助けることもできずカノジョはこの世を去った。
私はそこから逃げた。私がカノジョを殺したと言われたら日本人ではいられなくなる。日本人から嫌われるわけにはいかない。
だが残された弟が可愛そうだった。
弟はあの本の内容を知っている。
私は化粧をし、髪型をカノジョのように三編みにし、弟の前に現れた。
弟の付近を通るたび、「私の名はジングウジモーコ」と呟いた。
話したりはしない。少しでもカノジョを感じてほしかった。このくらいの子供には十分希望になったと思う。
その後私たち家族はドライブ中に交通事故に遭った。
私は生きていたが親は二人とも死んだ。
カノジョが死の世界へ迎えに来たのかと思った。
日本に身内のいない私は施設へ入り友達もできたが2年後に全焼した。
私以外全員死んだ。また私はカノジョが迎えにきたと思った。
私は別の施設へ移った。
そこは100m先に同じような施設がある。
そこに強盗が立てこもる事件があった。
一人以外全員死亡。
その一人は昏睡状態だった。
私は本を書き続けた。
私はカノジョが私を殺そうとしたが施設を間違えたのだと思った。
その子が意識をとり戻したと聞き私はその子に元気になってほしくて本を見せた。
その子はすごく気に入り一緒に書くことになった。
だがその子はある日病院からいなくなった。
私はカノジョに裏切られたと思った。
私は、ある日フィリピン人のお姉さんと出会った。
彼女は施設職員としてやってきた。
その人は日本が大好きだと言っていた。
だから本を見せると私も書きたいと言った。
だがある時フィリピンへ嫁いだと聞いた。
私は恨んだ。いなくなった上にその人は日本人にはならなかったから。
その人に不幸が訪れるように、自分なりの黒魔術をかけた。
フィリピンで不幸な目に遭えと。
私はお姉さんの裏切りに耐えられず、施設を抜け出した。
いく宛もなく公園へ行くと、路上生活者のおじさんが迎えてくれた。
名前を聞かれたが本名は名乗らずジングウジモーコといった。
本を見せると喜んでくれた。
その人は私を見てなぜ顔が外国人なのだといった。
日本人になりたい私はショックだった。
日本人になりたい外国人は好きだ。
だがなりきれない外国人や日本人なのに外国にすんでる人、クォーターなども大嫌いだった。
路上生活2年目。
私は町を歩いていると偶然、かつて病院からいなくなったその子にあった。
その子はその後親戚に引き取られたが、地震にて親戚もなくし、ファストフードで働いているという。
聞きたくはなかったがもう本は書いていなかった。
私は恨んだ。急に消えたうえに、本を書いてないなんて。
私はその子にいたずらした。
その子の仕事帰りに少し深めの落とし穴を掘った。
その子は落ちた。
だが、落ちた先で死んでいた。
私は怖かった。だが怖さは目と耳から入るものだ。
私はその子に本を忘れてほしくないので、その子の顔にあの本の内容に似たことを書いた。
その子は日本人だから、少しニュアンスを変えた。
(朋子は殺された。近くにかまぼこがあった。犯人は捕まった。日本にいたからわかるのさ)
その事件は内容とは反対に迷宮入りした。
ある日、違う寝場所を探していた。
すると目の前にカノジョがいた。
「マヤ……なぜ日本人になりたいの?」
カノジョは聞いてきた。
「日本人にならなきゃ……日本人は差別するでしょ……違うところを見つけると……いじめるんでしょ……」
すべては私の偏見だったかもしれない……
日本人を怖がるあまり、日本人になろうとしていたかもしらない。
私はカノジョにどこかへ連れていかれた。
それがどこかはわからない。
(そこまでしか記憶がない……気がつくと私は自分の姿をなくし……自分の本を読む外国人を殺していた……)
ジェニファーとタイヘイには疑問があった。
「フランスの日本人はまだわかる。外国に住んでるからな。だが警官のタケルは日本人だろ!?なぜだ?なぜ殺した。」
(あいつは祖父がブラジル人だ。だが殺すつもりはなかった……だが……)
止まることはできない……
(それが私が……この呪いから逃れる理由だ……ジェニファーに……身代わりになってもらう理由だ……)
その時だった…………
ジェニファーの目の前にはいるタイヘイの腕に字が現れた!
みるみるタイヘイの体は字で埋め尽くされていた!
その痛みに悶絶し、体を振り回すタイヘイ。
「もうやめて!何が目的なの!?」
違う…違うんだ……
…(目的なんかない……カノジョは……玉森シズエは……弟を迎えに来たんだ……)
どういうこと……!?
(玉森シズエは……国を差別しない……差別なく呪い……差別なく殺す……例え弟でもな……)
タイヘイの体はすべて真っ黒になり、その動きは止まった。
その時、そこに光が出てきた……
光が消えたとき……そこに……扇子と紙が……
(タイヘイは殺された。近くには扇子がある。犯人は捕まった。日本にいるからわかるのさ)
つまり……あなたたちは……
(私は本を呼んだ人を殺したくない……だができない……力がないから……シズエに……逆らえないから……)
だからかわりに……
(シズエを殺してくれ……)
ボビーたちは最後に起きた事件を考えていた。
なぜタイヘイは殺され、ジェニファーは消えたのか……
警察もお手上げだった。
気がつけば事件のことは消え、その後あの本の行方を知るものはいない……
10年後、英会話講師のリンダはある生徒から本を貰った。
その生徒の父が図書館に勤めており、見覚えのない本だったからとくれたらしい。
「先生。簡単な本だから日本語の面白さがわかるよ。」
リンダは外国から来てまだ日本語に馴れない友達へあげようと考えた。
その時別の生徒がきずく。
「先生、ホワイトボードになんか書いてあるよ」
「え?」
〈友達のジェニファーは〉
終