状況判断ミス
知人の逸話である。
かねてからパチンコ「海物語」のファンであった46歳男性の大失態である。
その日は久々に、彼はパチンコ店へと足を運んだ。ほんの気まぐれではあったが、雨で足元が悪いにもかかわらず、いつもの因縁の店へと向かった。
過去の通算成績から、彼はそのお店に対し、ある種の恨みにも似たような感情を抱いていた。それは初顔で行った当初「お客さん、いらっしゃい的」で大勝ちでイイ思いをさせてもらった後、ジワリジワリと行くごとにもぎ返され、最終的には大負けを食らわせるという、その業界ならではの巧妙な手口・罠にハマった痛い戦果があるからである。
店長も店員も、毎度その接客姿勢や態度が抜群であり、お客は少なくとも悪い気はしないタイプのお店! しかし「表づらを良くして、実はその裏では事務所内コンピューターの遠隔操作による Ctrl が絶対になされている!」と彼は深い疑念を持っていた。店内スタッフは皆、いわゆる インカム という武器を身に付けている。それでもって現場とコントロール室間での極秘の情報伝達や指示が行われていることは、もはや明確! との。
パチンコ店だってただの「営利を目的とする一企業」に過ぎないのだから、このようなことがあったとしても当然であろう。しかし、立証は極めて困難だろうが、この場合の遠隔操作は、あくまでも違法行為である。
ところで彼はその日も、「今日はもぎ取ってくれる!」との野心を胸に、開店時間を少し過ぎた頃に、おもむろに入店して行った。よく言われる 射幸心 の塊である。そして台の一通りの見回しチェックをしたのち、いつものようにこれと思う台を選択し、すぐに打ち始めた。
12,500円を費やしたところで SUPER LUCKY の当たりがやってきた。「お、今日は割りとついてるぞ!」と彼は思いながら打ち続けていると、何と13連チャンもした。
その時点で約9箱を所持。金額にして63,000円相当なので、この時は5万円は勝っていた。と同時に彼女からのメールも届いていた。それを一読したあと、彼は「どうしようかな?」と迷ったものの「時間もあるし、ここは10箱目指して勝負!」と、結果から言うと誤った決断をした。
これが彼の 状況判断ミス だったのである。信じられないことに何と9箱全てを打ち込み、更に追い銭。所持金が底を付き、完全に熱くなった彼は最寄りの銀行キャッシュコーナーから5万円を引き出し、またまた追い銭。「そんなはずはない!」と、もはや後には引けない状態=つまらぬ意地を張る状態へと突入! そしてようやく回転数が考えられないような数字1926回に達したとき初めて、二度目の SUPER LUCKY を表示した。
だがこれも4連チャンだけでストップし、それも打ち込み更なる追い銭……。ここまで来たら、もう誰も止めようがない。よく言われる 克己心 =欲望を抑え、曲がった心に打ち勝とうとする自制心 など、もはや通用する段階ではない。
結局、彼は最終的に1箱も得ることが出来なかった……。通じて95,000円の負け! 5万円勝っていた時との差額は、145,000円にもなる! また最悪なことに、彼は自分の銀行口座の残金を 無 にしてしまった……。
頭では分かっていながら、彼は自分の行動を止めることができなかった。ある人によると「パチンコは一日で10万負けてもおかしくはない」という。こんなことがあっていいのだろうか?
たかがパチンコ、されどパチンコ。 怖ろしい !?




