第二話 変態
「イ、イヤーーーーーーッ! へ、変態ーーーーーーっ!!」
少女の全力の叫び声が辺りの森に響き渡った。バサバサと近くに潜んでいた野鳥が飛んでいく。
この辺りには獰猛なモンスターたちが生息している。大きな声を出して居場所がバレたら、危険な目に遭う。だからこれまで静かに旅して来たのに。その今までの努力を無に帰すぐらいの大声で叫んでしまった。
山の上で出会った少年が、全裸だったのである。
「だっ……! 誰が変態だよ! 俺だって、俺だって好き好んで真っ裸でいるわけじゃないんだよ! 気付いたらここにいて……。ここがどこだかわかんないし! なんでこんなところにいるのかわかんないし! 辺りには誰もいないし服着てないし! どういうことなんだよ! 誰か説明してくれよ!!」
少年は一方的に憤慨していた。しかし不思議と彼の話す言葉がわかる。顔立ちからして、異国の人間かと思った。全体的に平べったい顔をしているけど、人のよさそうな雰囲気の中に少し無邪気さを感じさせる顔立ちだ。髪には艶があり、日に焼けていないきめ細やかな肌をしている。隣国から逃げ出した奴隷でも、この国の一般国民でもなさそうだ。しかし髪や肌が綺麗だといっても、乱暴な言葉遣いは十中八九貴族の振る舞いのそれではない。見た目や立ち振る舞いで少年の身分を推測できない。せめて服を着ていれば何かもう少しわかりそうなものを……。
「待って! 待って! お、落ち着いて……くださいね。あの、その……。で、できれば前を隠してから話していただけると……」
「!?!? ……うわ、ごめんなさい! はっ、恥ずかしい! って、じゃあこっちをいつまでも見てこないでよな!」
「えっ!? わ、わたしはっ、み、みみみ、見たくてみてたわけでは……!?」
はあ……。見慣れないものを見てしまった。共感性羞恥かわからないが、身体中に血がのぼって、熱い。
白くて細い身体。筋肉が全然ついてない。
それから――はじめて異性の身体をまじまじと見た。なんだか、女の子わたしと全然違う……って、そんなこと考えちゃダメでしょう!? もうイヤ! は、はやく忘れたい!
少女は首を全力で横に振ってこの嫌な記憶を早く消し去ろうとした。
「……それで、あのー。なんか着るもの持ってない?」
全裸の少年が一歩踏み寄った。
「ヒィィィィッ!! こ、来ないでっ!!」
思わず叫ぶ。
「来ないでってなんだよ。感じ悪いなー。こっちは非常事態なんだよ!」
少年を見ないように目をぎゅっと瞑って顔を逸らせて尋ねた。もしこの少年が敵だとしたら、敵に目を背けて隙を見せた大間抜けだ。しかし見たくないものは見たくない!
「……あ、あなたは……。あなた、何者ですか? …………」
「えっ、俺?」
「……はい」
「オレは……リュウト。佐々木リュウト。高校一年生。乙女座のO型。好きな科目は数学、嫌いな教科は英語。好きな食べ物はマックのハンバーガーで〜、犬派か猫派かでいうとー動物は大抵のものは好き! っていうと答えになってないってみんなから怒られるんだよなー。あははは、はははは……」
「はあ」
この人、おしゃべりだ。
一つの質問に、関係ないことまでべらべらしゃべる。おかげでペースが混乱する。『高校一年生』から先の言葉の意味は全然わからなかった。でも……。
『ササキリュウト』?
変な名前。
遠い砂漠の国や魔法の国では変わった見た目や名前の人々が生活していることを、王立図書館の書物を通じて知っている。だけど、ここまで違和感を覚える名前ははじめてだ。
『ササキリュウト』。
偽名の可能性だってある。少年はあどけない表情をしているが、それもこちらを油断させるための罠かもしれない。こんな場所で、衣服を一糸も纏わずに、何をしていたんだろう。怪しさ全開だ。
「君は……? 見たところ外国人なのに、日本語上手だね。ピンク色の頭って芸能人でしか見たことないよ。ねえそれって親が勝手に染めたの? あ、ごめん、偏見とかはないんだけど……キレイだなって思って……」
ニ、ニホンゴ? ゲイノウジン?
「わ、わたしは……」
少女は固唾を飲んだ。
「私の名前はアリア……です。ただの……。ただの旅人」
目を逸らして吃りながら答える。ぎこちない会話になっていなかったか、不安になる。
「えっ! た、旅人ぉ? ……あー、はいはいわかった。コスプレイヤーか。そーいうアニメの設定があるんだ。あのーごめん! そういうのは今は後にしてほしい! 助けてほしいんだよ。今朝、友だちと映画を観に行ったらさ、いきなり……いきなり目の前が真っ白になって……」
おしゃべりな少年は急に言葉に詰まった。それから少し考えて、言葉を選び直したように見えた。
「……目の前が真っ白になったんだ。……で……気付いたらここにいた」
コスプレイヤー。エイガ。ソーイウセッテイ。
……砂漠の国でも、魔法の国でもなく、本当に遠い場所から来たのかもしれない。知らない言葉をよく使う。ここまでスラスラと謎の単語を用いることができるなんて、演技だとしたら超一流の役者だ。
もし少年が嘘を吐いていないのだとしたら、高位の魔法使いだけが扱える『空間転移魔法』を浴びて、どこか遠い、書物にも載ってない、大陸外のどこかからやって来たのかもしれない。その可能性は高そうだ。
「あの、ササキリュウト……さん」
「はい。え、フルネーム? 照れくさいからリュウトでいいよ。友だちみんなリュウトって呼んでるし」
『リュウト』の話し方は、無駄におしゃべりだし、かなり軽い印象を受ける。頭が空っぽそうだ。
「では、あの、リュウト、さん。……それでは、今から服を準備します。……うまくできるかどうかわかりませんが……。とりあえず今はこれで前を隠してください」
アリアはリュウトに手が届く位置まで近付いて、先程汗を拭うのに使った手巾を渡した。花の刺繍が施され、ずっと前からお気に入りだったのに。男の子の股間を隠す為に使われることになるなんて、せつなすぎる。
「今から、『転移魔法』を使います。……うまくいくかわかりませんが……」
うまくいくかわかりませんが、というのはもちろん相手に聞こえないレベルの小声で呟く。
「ま、ま、ままま、魔法ォ〜……?? えー、もしかしてまだそーいう設定で話してる……ってこと? はぁ……なんていうか、オレ、つくづく不運だ。あいつらと映画なんて、行きたくなかった誘いだったもんなあ。こんなことになるなら、ちゃんと断ればよかった」
魔法を使おうとしていることを、信じてもらえていないらしい。魔法を知らない国から来たら、無理もないかもしれない。この国の人々も魔法の奇跡には慣れていない人の方が多い。
高位の魔法使いは『空間転移魔法』が使える。
低位の魔法使いは、『簡単な転移魔法』が使える。
アリアはというと。
「うまく行きますように、うまく行きますように、うまく行きますように……!」
うまく行くようにと、何度も念じながら、転移魔法の詠唱をはじめる。
アリアは低位の魔法使いで、さらに言えば、この魔法の成功率も極めて低かった。
失敗したらリュウトはどこかへ吹き飛ばされる。
「うまく行きますようにぃぃぃっ!!」
アリアの周りから、眩い光が溢れ出した。
「うおっ、眩しいっ! えっ!? まさか、本当に、魔法が……!?」
転移魔法を成功させるには、条件が二つある。まず一つ、精巧なイメージ力が必要だ。そして次に、魔法を使うものに近しくなければならない。
――ごめんね、じいや。
紳士ものの服をしっかりイメージできて、アリアに近しい人物といえば、『じいや』しかいない。アリアの教育係で、本当の祖父のように厳しく優しいじいや。
今ここで転移魔法を使うと、じいやの服を勝手に借りることになってしまうが、きっとじいやならなんとか乗り切ってくれる! ……はず!
「光の精霊よ! この者に、着る物を与えよ――!」
アリアの杖の先から出た光がリュウトに放たれる。
「うおおおおおおあ!? ま、眩しいいい〜〜っ!?」
眩しいが、痛みはない。
「この光、魔法って……!? え、え!? アリアさん……え、ほ、本物の……魔法使い…………っ?」
と、転移魔法をたった今掛けているそのとき。アリアに向かって一匹の何かが飛んできた。
長い尻尾は蛇のようで、全身が鰐のような鱗に覆われた、一番の特徴はその巨大な蝙蝠のような翼を持つーードラゴン。
この国の象徴にして残忍なモンスター、飛竜ワイバーンだ!
「!! アリア、危ない!」
転移魔法の途中輝きを放つアリアを、リュウトは素っ裸のまま駆け寄り抱きしめて、またこちらを狙って滑翔してきた飛竜の攻撃をかわした。間一髪だ。
「きゃあああっ! な、何をするの? リュウトさん!」
「アリア、あれ! あのドラゴン! あれは何? あれも君のセットの一部なわけ?!」
飛竜は二人の目の前、山の上に着地し、涎を垂らしてこちらを伺っている。だが一瞬でも隙を見せれば、今にも飛びかかって来そうな気配だ。
「セット……ではなさそうだね。あれ……ほ、本物の、ドラゴン? ほ、本物……!?」
リュウトは卒倒しそうになる。
「リュウトさん、どいて! あれはこの国では一般的な飛竜よ。大きさも普通。大丈夫、父様も兄様もじいやだってあの飛竜を何回も倒してるんだから!」
「ひ、飛竜を……? た、倒す……? な、な、何て……?」
じゃあ、本当に、本物なのだ。セットではない、生きた本当のドラゴン。あれに噛み砕かれたら死ぬ。確実に。
「アリア、そうだ、魔法は? 魔法で倒せるんだよね」
「……」
アリアはそれまで持っていた杖を地面に置き、腰に提げていた短剣を取り出して構えた。魔法同様剣術にも、自信はない。剣を構えたか細い腕は、恐怖で震えている。
リュウトは驚いた。何故剣を構えたのだろう? その魔法の杖から出る魔法で倒した方がはやそうなのに。
か細い少女の腕では、硬いドラゴンの鱗を傷一つ負わせられず跳ね返されることが目に見えている。
「ね、アリア……ってさ……もしかして……」
「り、リュウトさん……今のうちに、逃げて……!」
「逃げてと言われても……」
翼のあるドラゴンからどうやって逃げればいいのだ。背中を向けて走り出した途端、ひとっ飛びで追い付かれて、あの鋭い爪で捕らえられ、喰われるに違いない。
あんな巨大な爪に皮膚を裂かれたらどれだけ痛いだろう。
そうこうしているうちに、飛竜は襲いかかって来た!
「!!! きゃああああっーーー!」
もうダメだ。二人は、死ぬ!
「…………? ? え? あれ……?」
アリアたちは死んではいなかった。目を開けると、飛竜は頭上を通過して飛翔し、大空へ舞って行った。
飛竜の突然の気まぐれで、助かったのだ。
「!? はあ……はあ……っ!」
助かった。生きている。でも……。
「こっ! こ、こわかったぁ〜……!」
アリアはその場にぺたりと座り込んでしまった。剣を手から落とし、杖をつかむ余力もない。
「アリア!」
しゃがみ込んで疲れ果てているアリアの元へ、即座にリュウトが駆け寄る。
「いやー……。すごかったね、ドラゴン。飛竜って言うんだっけ。マジでおしっこちびるところだった。って素っ裸の今のオレが言うとしゃれにならないね」
「……そう……ね」
おそらくはじめてドラゴンに襲われかけたというのに、この少年は恐怖しても無口になることはないらしい。変わらないリュウトに安心感を覚えて、ふっとこころが軽くなる。
「…………ありがとう、リュウトさん」
「え? なんで感謝?」
全裸のリュウトは首を傾げる。
そういえばまだ服を着ていない。魔法で服を転移させようとした最中で、飛竜に襲われたんだっけ。
「服……待っててね。今、魔法を……」
地面に置いていた魔法の杖を掴み、立ち上がる。
「この者に、着る物を!」
今度は無事に転移魔法を唱え終えた。
身体は光に包まれ、やがて徐々に光が消えていくと、リュウトは服を着ていた。
ただの衣服じゃない。これは――騎士が身に付けている鎧だ。鎖帷子に、肩や胸、肘や膝には鉄板がついている。武器は……左腰に鞘だけがある。剣はどこに……?
しかしこの鎧。
「この鎧っ……! お、重いーーー……。明日絶対筋肉痛になるよ! できればもう少し、軽装がよかったかな。もっと普通の服って無かったの?」
「あの、ごめんなさい。リアルにイメージできる服が、じいやの鎧しかなくて……。転移魔法は色々制限があって、今の私にはこの程度しかできないの……でも、うまくいって……よかったわ!」
うまく行かなければ、リュウトは吹っ飛んでいたから。なんてとても言えない。
「いやいや、魔法が使えるのってすごいことだよ。剣と魔法とドラゴンか。本当に本物なんだなぁ。RPGはご多分に漏れず、オレも好きだよ!」
ふふふ、と二人は息が投合したかのように笑い合う。
裸のまま旅を続けることにはならなくて二人とも、心底よかったぁぁあ〜〜〜と思い合ったことが、通じ合ったのだ。
リュウトはいい加減、この世界が本当に自分の住む世界とは異なる世界であることを理解していた。魔法を扱う少女に、空飛ぶドラゴン。単なる外国だったらまだ日本に帰れる希望はあるが、もし世界そのものが違ったら――元の世界に帰れるのか?
「魔法、うまく行って本当によかった。でも……今たしか若手の騎士訓練の指導に当たってる時間だったわね、じいや。そのじいやから服を剥ぎ取ったことになるかもしれないけど……。ま、まあ、大丈夫よね? じいや、無事でいてね……!」
祈りとは、魔法使いの基礎にして、最も神聖な行為だ。
寛容なじいやを信じて、祈りを捧げる。
「あーーーー、でもこの鎧、オレには少し大きいな。体格に合ってないよ。見て、動くとガシャガシャ言う。重くてあんまり動きたくないけどね」
「じいやは細身で背が高いから。じいやはね、さっきの飛竜。あれを乗りこなして戦っている竜騎士なのよ!」
「えっ、ひ、飛竜に乗って!? あんな化け物を乗りこなすって……君のお爺さん、とんでもない人なんだね〜」
「じいやはわたしの本当の祖父ではないわ。この国の竜騎士として長らく活躍していた人物で、引退後は兄様の教育係をしていたの。兄様には教えることがないって喜んでたわね……。それで今は、わたしに従事してくれてる……。厳しいけど、優しい素敵なお爺さんよ」
帰ったら確実に怒られることは内緒だ。
「ふーーん。簡単に言うと、執事みたいな人ってことかな? アリアはいいところのお嬢さんなんだな〜。なんか、見たまんまだね。初対面の印象、なんかお嬢さん? って感じだったし。君みたいな子は、学校で見たこともなければ会ったこともないよ。ああこれはもちろん、いい意味でね。とにかく、オレたち、二人とも無事で本当によかったよね」
本当によかった。旅をして一人で命を落とすのならともかく、見ず知らずの男の子を巻き込むわけにはいかない。
「それでさオレ、家に帰りたいんだけど……」
と言いながらリュウトは辺りを見渡す。切り立った山の上から眺められる光景は、果てしなく広がる森だけだ。
「うーん……。まずここ、どこ?」
「ここは、竜騎士の国、リトレギア王国の北部の森よ」
「竜!? ……リト……え? やばい。地理の知識が全くないから、どこにいるのか検討つかない。ヨーロッパ? うーん、ヨーロッパってドラゴンいるっけ? いたようないなかったような……あーあ、もっと勉強していればよかったなーーーー」
しかしまるで聞いたことがない国名だ。ひょっとしたらここは本当に、自分の知ってる世界じゃないかもしれない。絶望の事実に、リュウトは青ざめる。
「そういえばアリアはさ、なんでこんなところにいるの?」
「えっ? わたしは……」
おしゃべりな男の子、ササキリュウト。
この人は信用できるのだろうか?
雰囲気からは悪い人には到底思えないが。
先日、闇の魔法使いが国に不法に侵入していると報告があったばかりだ。お気楽な闇の魔法使いもいないことはないかもしれない。……信用できるか?
「わたしは……ドラゴン退治の旅に出ているのです」
毅然と言ってみせた。自信ありげに答えるアリアに、リュウトはずっこけずにはいられない。さっきのさっきで何故、自信ありげなのだ!
「え、アリア、ド、ドラゴンを倒すの!? ……でもさっき全く歯が立ってなかったというか……完全に捕食者と被捕食者だったよね! それに、なんでさっき魔法を使わなかったの? 翼のあるドラゴンなんか、剣じゃなくて魔法で倒すべきだったんじゃない? その方が手っ取り早かったと思うね!」
はい、リュウトさん。それは、ごもっとも。しかしあのときはあれで精一杯だった。
しかしもしリュウトが闇の魔法使いだったら、いの一番で飛竜を退治していたはずだ。飛竜は光と闇の魔法攻撃に弱い。
だからおそらくこの人は、闇の魔法使いではない。
「信じます……!」
「えっ、今なんて?」
「実は、あの、その……ここだけの話にしてもらいたいのですが……。実はわたし、攻撃魔法が使えなくて……というか、魔法自体、そんなに使えなくて……」
「こっ! 攻撃魔法が、使えない!? 攻撃魔法が使えないまま、ドラゴンを倒す旅に出ていたってこと!? これがゲームの世界だったら、オレでもまずは一つでも魔法が使えるようになってから旅に出るよ!? なんていうか、無謀じゃない!? あっごめん、初対面の相手にひどいこと言って! でもそれは無謀以外の何者でもないよね、どうしてそんな、なんも整ってない状態で旅なんかしようと思ったのさ! アリア、めちゃくちゃだよ!」
「………………それは、そう、ですね…………。まあ、普通はそういう反応に……なるでしょうね…………」
徹頭徹尾、リュウトの言う通りだ。物理武器も男性のように扱えず、攻撃魔法も使えない。ドラゴンを倒す力なんて、全く持ち合わせていないのだ。
――しかし、行かなければならなかった。行かなければ自分は……。
「…………」
「ふー。これはすぐにでも帰った方がいいよ。出直そうアリア。魔法が使える仲間を見つけてからにしよう。俺も家に帰りたいし。帰り道教えて貰いたいしね」
「…………」
「え? なんで黙ってるのさ。オレなんか間違ったこと言った? 言い方悪くて気分を害したならごめん……」
リュウトはアリアの表情を窺う。アリアは顔を下に向け、地面を見続けている。
「うーーん……」
これはかなりの強情っぱり娘のようだ。てこでも帰る気がないことがわかる。
「……。うーん……そんなに帰るの、ヤなの? ……わかったよ。じゃあ、行こう、アリア。でも本当に危なくなったら大人しく帰ろう。強引に連れて帰るからね! ま、帰る方向はわかんないけど。いいよね!」
「…………はい……。すみません。どうしても、これだけは。これだけは譲れません……!」
「……おお」
行くにするにも帰るにするにも、二人バラバラで行動するよりは、まとまった方がいい。一人で進むのが心細いことよりも、今この子を一人で行かせるのがリュウトは嫌だった。
竜騎士の国リトレギア王国に伝わる風の竜を倒す旅は、攻撃魔法が使えない魔法使いアリアと、異国の少年リュウトを加えた二人で新たにスタートすることになった。




