第二十四話 結婚
街に出た日から、数日が経った。相変わらずリトレギア王国は平和で、闇の魔法使いが出たとか、グラン帝国が侵入してきた等の悪い報告は聞かない。
食堂で、アルディナンド国王、ソラリス、アリア、リュウトの四人で(壁際にはじいやも待機している)、朝食を摂っているときだった。突然、リュウトが意を決したように言った。
「あのさ、みんな聞いて。オレ、竜騎士の学校に入りたいんだ!!」
「おお……! おお?」
突然の申告に、食堂は静まり返った。
「突然じゃな、リュウトくん」
「突然でもないんだよ、王様」
「何ぃ?」
リュウトは王様に、竜騎士の学校への入学許可を求めた。街で出会った友だちが、次の季節のはじめに竜騎士学校に入るから、同じタイミングで入りたいこと。自分だけいつまでも城に守られているわけにはいかないこと。強くなりたいことを話した。
国王は頷きながら、黙って聞いていた。
アリアも聞いていたが、一つ疑問に思うことがあった。
元の世界に戻りたい気持ちは、どこに行ったんだろう?
と。
国王が返事をする前に、マリンが食堂に入ってきた。あれから光の魔法使いでソラリスと同じアスセナ族のマリンは、国王に気に入られ、王直属の侍女として迎えられていた。マリンはあれから塔に行きたいとは言い出さず、素直に国王に従っていた。
「アルディナンド国王さま、頼まれていたものをお持ちしました」
「おお、マリンか。ありがとう」
マリンと入れ違って、ソラリスが食堂から出て行った。偶然かはわからないが、ソラリスとマリンは会話をすることもなければ、同じ部屋に長く留まることはなかった。マリンが来るとソラリスが決まって部屋を出ていくのだ。
偶然かな、と思っていたけれど、今日もだ。
アリアは不思議だった。ソラリスはマリンのことが嫌いなのだろうか? マリンは謎が多いところもあるが、美人で聡明で、嫌いになれるようなところが一つもない。アリアも既に度々彼女の部屋を訪れ、本当の姉のように慕っていた。
人間は自分に近い者同士で仲良くなる性質がある。だからてっきり、同じ部族のマリンを連れてきたことが、ソラリスにもいい作用を産むと思っていた。しかしそうはならなかった。何故だろう。アリアにはわからない。
ソラリスにとって、同じ部族の人間がいることが、逆に不利益を被る理由が、あるのだろうか……。
それとも本当に気のせいかもしれない。
「リュウトくん、いいだろう。竜騎士学校の入学を許可する! 君の熱意、しっかりと伝わったぞ。頑張って、一人前の竜騎士になって、リトレギア王国を守る騎士になってくれ!」
「! お父さん、ありがとう!」
リュウトはアルディナンド国王を「お父さん」と呼ぶようになっていた。家族のように過ごしてくれていい、と言ったのは国王だったが、それが建前でなく迎え入れられているのは、流石リュウトのコミュニケーション能力だ。
「ところでだ、リュウトくん。それにアレーティア」
「はい……?」
「お前たち、将来についてはどう考えておる?」
「将来…………とは?」
「リュウトくんが竜騎士学校を卒業して、一人前の竜騎士になる頃には、アレーティアも年頃の娘に成長しておるだろう」
「?」
「??」
「単刀直入に言う。お前たち、結婚をしなさい」
「はぁっ!? け、結婚――!?」
その場にいた召使い、じいや、マリンそしてリュウトとアリア。全員が仰天したことは語るまでもなかった。




