第二十一話 宝石
もう、すっかり夜だ。
飛竜舎に竜を繋ぎ止めて、城の中へと戻る。
国王とソラリスは、二人で謁見の間にいた。マリンを連れて、部屋に入る。
「父様、兄様。ただいま帰りました」
「おお、遅いじゃないかアレーティア。お前が好きな菓子をたっくさん用意しておったのに。遅すぎるから、わしが半分以上食べてしまったぞ。わはははは。そしてその女性は誰だね」
後ろに着いてきたマリンが、一歩前に出して膝を折って挨拶する。やはりこの女性は、仕草が丁寧で美しい。
「あ、この方は、アスセナ族の生き残りのマリンさんです」
「お目にかかれて光栄です、アルディナンド国王」
マリンは深くこうべを垂れたままだ。
「おお……!? な、なんと美しい女だ……」
王は立ち上がったが、またすぐに座った。
「まるで……い、いや、なんでもない……」
「?」
「それで、その人はなんじゃ?」
「あの」
「はい。道端で偶然あったのです。少数民族の女性ということで、城で保護しようかと」
アリアを遮ってじいやが答えた。余計な話をしていない。マリンをあんなに疑ってたのは、じいやだったのに。
「ああ、ああ。構わない! 客室ならいくらでも空いておる。好きな場所で寝泊まりしてくれ」
王の横に座っていたソラリスが立ち上がった。
「王、私はこれで。失礼」
「ああ。今日はありがとうソラリス。お前がいてくれて助かっているよ」
ソラリスはアリアたちの横を通り過ぎて、部屋から出ていった。こちらに一瞥もせずに。
「えっ、ソラリス……。同じ部族の人が来たというのに、全っ然興味なさそうだった……?」
「長い執務で疲れておられたのかもしれんな」
じいやがマリンを客室に案内して、マリンはそこで暮らすようになった。女神の塔へ行くことは、断念した様子だった。女性の足で歩いて行ける距離じゃないのと、これからお世話になる王国で禁止されていることをするような女性ではなかった。
しかしリュウトは、その日の夜突然、例の宝石言葉を思い出していた。
アレキサンドライトの宝石言葉は、秘めたる想いの他にも、ある。たしか『二面性』――。
アスセナ族のマリンと名乗る女性の突然の訪問は、リトレギア王国に何をもたらすのか。
異世界に来てから数日。今日も色々あって疲れた。はやいところ、寝よう。明日からもじいやの訓練がある。明日からは、ちゃんとじいやの言うことを聞こう。なんだっけ、何が重要なんだっけ。ああそうだ。協調性だ。協調性って言葉、難しいなあ。どういう意味だっけ。
頭が回らなくなっている。もう寝よう。
リュウトは、いつもの部屋で、眠りについた。疲れていたからか、深い眠りだった。深く、深い、まるで、闇のような――。
リトレギアの天候は荒れだした。




