第十九話 女性
異世界から来た少年リュウトは、竜騎士になるため、竜騎士学校の教官も務めているじいやに特訓をつけてもらうことになった。しかしその日の暮れ、森の方から怪しげな衝撃音が聞こえてきた。それも何度も。
リュウト、じいや、アリアの三人は音のする方へと向かった。
「あれだ! あそこから音がしているんだ」
森の上空に、飛竜が集まって暴れている場所が一箇所ある。森の中から、眩い光線が放たれると、飛竜が続々と落ちていく。衝撃音の正体は、あの光に倒された飛竜が、地面に落ちる音のようだ。
「ねえ、でもこの方角って……」
じいやの後方に座るアリアが、じいやの服をぎゅっと掴む。
「『女神の塔』の方面……よね?」
それを聞いていたリュウトは聞き返す。
「やべっ。女神の塔って何だったっけ。最近どっかで教えてもらったと思ったのに、もう忘れちゃった!」
「では説明しよう」
じいやが、説明してくれる。
「女神の塔、正式には『運命の女神の塔』と言う……。この世界を作り出した女神が住んでいる、天に続く塔じゃ。この国の、いや世界の聖域とされている。我々人間は、絶対に中に入ってはいけない。もし禁を破り中に入ったら、神の裁きを受けることになるであろう!」
「えー、裁きを受けるって何? 女神ってさ、神様なのに、優しくないの?」
「優しい神様とはなんじゃ?」
「日本では、神様は優しいよ。仕事運が上がる神様とか、金運が上がる神様とか、勉強運が上がる神様とか、恋愛運が上がる神様とか、色んな種類が、いっぱいいるよ」
「おお、それは面白い話じゃな。今はそれどころではないが」
森の中から放たれる光線の出所が、竜の上から見えた。
光線は、光の魔法だった。
「みんな、あそこを見て! お、女の人だ!」
森の中から、光の修道士が着る白いローブを纏った女性が飛竜に向かって光の魔法を放ち、次々とドラゴンを倒している。魔法は一撃も外れていない。かなり高位の魔法使いだろう。
「一体なんなのじゃ、あのおなごは!?」
「もしかして、最近よく出没してるっていう、闇の魔法使い……?」
「でも、あの人が放ってるの、光魔法よ!」
「もっと近付いてみよう!」
「近付いたら野生の飛竜と同じようにわたしたち倒されちゃうわ!」
「じゃあ、降りて近付いて、直接尋ねよう! 何してるのかって」
「ええ!? 直接聞くの!? そんなの危険よ!」
リュウトは風竜を着地させ、森の中を走った。ドラゴンに乗って飛んだ後だと、人間の身体は移動が遅く不便極まりない。
「全くリュウトさん、危機感ないのかしら。まだあの人がどんな人かわからないのに」
「本当に自分勝手じゃ。あのボケ、生まれ故郷は相当平和な国だったのかもですな。でなければあんな勝手な行動はしない! ……しかしアレーティア様。我々もリュウトに続きますぞ」
じいやとアリアもリュウトを追いかける。
「おおーーい! すみませーーん!」
女性は攻撃の手を止めた。飛竜の最後の一匹を、倒し終えたのである。




