第十七話 星空
王城の上空から少し離れた場所で、竜騎士の特訓がはじまった。今日もリトレギアの天気は快晴、風向きも良好だ。
「まずは基本から教えましょう」
「よろしくお願いします」
「はい、返事の大きさはよろしい」
じいやはまず、飛竜の動かし方の基礎を教えた。
「手綱を左右に引くと左右に進む。止めたいときは手前に引く。風が強い日なんかは、よく風を読むことも大事じゃ」
「こう……やって、こう……?」
飛竜の動かし方を教えた後は、武器の扱い方を教えてくれた。槍や、棒の先端に斧をつけた武器で戦うことが主のようだ。リュウトは非力なので、実践用の武器はまだ持てず、飛竜舎の前に立ち寄って選んだ、若い兵士も使う軽い訓練用の槍を持って出撃していた。
それにしても、異世界に来てなんで飛竜に乗る訓練なんてやっているんだろう?
異世界に来たら、すごい能力を授かって無双するとか、スタイルのいい女の子たちに爆モテするとか、すごい魔法が使えるようになるとか、優しい獣人たちに囲まれてスローライフを送るとか、王宮のラブロマンスがはじまるとか、なんか、もっと、そういう感じでもいいんじゃない!?
なんでオレは、弱々しい人間のままモンスターに襲われて死にそうな目に何度もあっているんだ!?
……あ、文句を言ってるんじゃない。
ただ、イメージとは違っただけ。
だけど、イメージと違ってよかったことがある。それは。
「よし、覚えた。じいや、ひと勝負しようぜ!」
「何!? 勝負ですとな!?」
「うん、ちょっとした追いかけっこしよう。名付けてドラゴンチェイスだ! 三分、オレが逃げるから、追いかけて来なよ。捕まったらオレの負け。捕まらなかったら、オレの勝ちだ!」
「なんと……!?」
リュウト、性格が変わった?
「あの小僧、調子に乗ってるな。ふふん、いいだろう。老骨と甘く見ているその鼻をへし折ってくれよう」
「じいや、大丈夫そう?」
「なあにアレーティア様、安心して見ていてくだされ。伊達に五十年以上竜騎士を続けてはおらぬところを、リュウトにわからせてやろう! 行くぞシリウス、リュウトを懲らしめてやろう!」
シリウスというのは、じいやが五十年以上相棒にしてきた飛竜の名前だ。今現在じいやとアリアが乗っている飛竜。
五十年という歳月は悠久の時を生きるドラゴンにとって、僅かな時間でしかない。だが、信頼を築き上げるには十分すぎる時間だった。
若かりし頃、満点の星空の下で出会いを果たしたヴァイゼルとシリウス。
対
数日前に出会ったばかりの、本当の持ち主が違うリュウトと風竜。
の対決がはじまろうとしていた。




