第十五話 指導
リュウトが異世界に来て、翌日ソラリスと空の散歩をした、さらに翌日。異世界に来て二日後の三日目。
「リュウトさん、いるー?」
アリアがリュウトの生活のために与えられた客室を訪れていた。昨日、ソラリスと面会してから、すぐに休むことになったらしいが、どこか調子でも崩したのだろうか?
アリアは昨日のことは何も聞いていなかった。
「いるよー。……でも、身体が……痛くて、う、ご、け、な、い」
「えっ!」
リュウトはベッドに寝たまま、昨日のあった出来事を滔々と語って聞かせた。
もちろんあったこと全ては語らない。
ソラリスの理想やアリアたち親子に対する想いは、秘匿だ。ああいうのを暴露するのは、男のやることじゃない。
ソラリスに誘われて空中散歩したこと、意外と話しやすくて楽しかったこと、でもスピードを飛ばしすぎでそれで気絶したこと、等、事実ベースで話した。
「本当に楽しかった。オレ、この世界に来て、少しよかった」
「少し?」
「うん、正直言って、少しね。死にそうな目に遭ってばかりの印象の方がやっぱりデカいな……。でも、人がいい。人間関係がいいって重要だよ。学校とか仕事とか、そうじゃない? この人のためなら頑張れるぞーって人が一人でもいるかいないかじゃ、人生のモチベーションって変わってくるよ。リトレギア王国に来てから、そういうこと考えるようになった」
「ふぅん。じゃあ、あんまり死にそうな目に遭わないようにしたら、もっと良くなりそうね」
「そうだね、できれば死にそうな目に遭わないよう、努力したいね」
扉が開き続いてじいやが入って来た。
「リュウト殿!!」
「じいや、どうしたの? 声デカいな〜。筋肉痛に響くだろー?」
「リュウト殿、いつまでも寝ている場合じゃないですぞ! ソラリス様からこのじいやめに、リュウト殿を鍛え上げるよう言われたましたぞ! さあ、立ちあがりなさい! 今日から、君のことも指導させていただきますぞお!」
「え! し、指導って!?」
「もちろん、竜騎士としての指導じゃ。お前にも、竜騎士としての特訓をしてもらうぞ。しかも短期間で鍛え上げるように言われた」
「ええ!? ええ!?」
「ソラリス様が、お前のことを褒めておった! リュウトは筋がいいとな」
「筋がいい!? 昨日ひたすらこわがった後に気絶しただけの情けないオレのどこが筋がよかったんだろう! イケメン王子、節穴で困るな!」
「ソラリス様を愚弄するか!?」
「でも本当なんだよ! オレにセンスがあるわけない!」
「なんだ、特訓から逃げるのか」
「違うよじいや! 今から準備するから、待ってて、すぐいく! ご指導、よろしくお願いしまあああすっ!」
「!?」
リュウトはベッドから飛び起きて着替えをはじめた。
「ねえリュウトさん! ちょっと待ってよ! 危ない目に遭わない努力をしたいって言ってたばかりなのに。大丈夫なの?」
「やべ、オレそんなこと言ったっけ?」
「言ったわ。ついさっきよ!?」
「でも、ソラリスがオレに期待してるんだよ! こんなヒョロガキでしかないオレに! すごいことだよ! オレ、あの人の期待に応えたい。そうだ、オレも竜騎士になる! 最強とは行かなくても、あの七人の中に選ばれたい! たった今新しい目標が出来た!」
「……!? ええっ!? ええっ! ええーーーーっ!?」
支度が終わると、リュウトはアリアを放っぽり出し、走って飛竜舎に向かった。




