第十一話 興味
風竜の冒険を果たした翌朝、アリアの兄ソラリスが城に帰ってきた。漆黒の髪に屈強な戦士の身体。そして特徴的な澄んだ翠色の瞳。アリアの雰囲気とはまるで異なり、最強の竜騎士の異名は伊達ではなかった。
あの人がいると、空気が重い。平伏せずにはいられない。
七名の最強の竜騎士隊を迎え入れた王城の正門に集まっていた民衆は皆静かに膝をつき、静寂に包まれていた。
「おかえりなさいませ、ソラリス兄様」
アリアが一歩前に出た。
「あの、お話したいことが……」
「アレーティア、良い知らせだろうな」
「は、はいっ! そうなんです!」
アリアは指笛を吹くと、城の端の、竜騎士の飛竜を繋ぎ止めておく飛竜舎に置いてきていた風竜を呼び寄せた。
キュイーと甲高い声で鳴きながら上空を風竜がぐるぐると回る。
「風竜を倒したか……。よくやったな、アレーティア」
「!」
ソラリス兄様に、褒めてもらえた……。アリアはぎゅっと目を瞑った。嬉しい。
風竜を倒した件について、その一言だけで終わった。
ソラリスの興味は既に別にあった。足取りは真っ直ぐ向かって来る。最強の竜騎士に見惚れていたリュウトもここで、我に返った。
目の前に、漆黒の大男が立つ。身長差が頭二つ分はあるだろう。オーラに圧倒されてしまう。
「はじめまして。俺の名はソラリス。アレーティアの兄で、リトレギアの王子だ。君は……」
「えっ、えっ!? あ、あのっ、オレ。リュウトって言います。佐々木リュウト。高校一年生です」
「ほう……。『異世界人』というわけか」
「い、異世界人?」
その言葉が聞こえた召使いたちがざわついた。
異世界人とは。
この世界とは異なる世界から来た人間。
何年かに一度突然現れ、まるで未来から来たような言動をし、異世界人に導かれた国々は急速に発展していくという。
二十年ほど前、突如大発展を遂げた水の国には、異世界人の出現が記録されている。
近年急速に力をつけたグラン帝国にも、異世界人が関与しているのではと噂されている。
「異世界人……といえばそうなのかもしれない。でもオレからするとこっちが異世界だよ。オレの住んでる日本には、ドラゴンも魔法もないよ。ゴジラはいるけどね! 近所の海にゴジラ岩があるんだ! ゴジラの形に見えるからゴジラ岩っていうの。ゴジラとこの国のドラゴンだったらどっちが強いかなあ? オレはやっぱりゴジラだと思うよ。だってゴジラは……」
しまった。
いつものように、しゃべりすぎた。
こんなイケメンを前に、また無駄なおしゃべりをしてしまった。
ゴジラの話をして何になるんだよ!?
リュウトは顔が赤くなった。
「ふふ、リュウト……くんだったかな。君とは仲良くしていきたいものだな」
「えっ?」
ここでアリアがリュウト前に出て遮る。
「ソ、ソラリス兄様、長旅でお疲れでしょう? 今日は休まれてください」
「いいやアレーティア。それには及ばん」
突然、城の入り口の扉が開いた。中から国王アルディナンドが出てくる。
「おお、ソラリス! 帰って来たか! お前がいなくては仕事が何も進まん! はやく手伝ってくれ!」
「父上……」
ソラリスはふっと笑った。それから、リュウトにだけ聞こえる小声で言った。
「リュウト、君に興味がある。今から話さないか?」
「え? 仕事はいいの? 今、国王が……」
「それならすぐ終わるからあとでいいさ。それよりも異世界のことに興味があるんだ。さっきみたいな面白い話を是非教えてくれ」
「いいですけど……。王子……ゴジラに興味あるんだ……」




