第十話 王子
三人は城の正門に並んだ。正門には城中の人間が集まってきていた。ソラリスの帰還を皆喜んでいるのだ。用のない召使いや侍女までも集まってきているので、正門は人でごった返している。まるで大人気アイドルのライブ会場じゃないか。
「来たぞー!」
正門にいた誰かが、叫ぶ。みんな、目を凝らして空を見つめる。リュウトは何故みんなが空を眺めるのか理解に少しだけ時間を要した。が、すぐにわかった。そういえばここは竜騎士の国だった。出掛ける時はドラゴンに乗って行って、またドラゴンに乗って帰って来るから、空を眺めるのだ。
「あれが……」
青く広がる空にまず、豆粒のような点々が見え始めた。やがてそれはカラスのように見えてきて、はっきりと見えるようになったら、畏怖の念に変わった。漂う気迫に背筋が冷える。
飛竜が羽ばたいて風を切る音は重々しく、さらに飛竜の上に跨る騎士たちは全員が武芸の達人だと、遠くからでもわかるほど覇気が伝わってきた。
七人の竜騎士は、統率の取れた動きでこちらへ向かってきていた。
その姿に、圧倒される。
これが、本物の竜騎士。格が違う。
「あれは、リトレギア竜騎士団の中でも特に腕の立つ者を集めて作られた特殊部隊。通称、『ドランディオーソ』。特別に選ばれた七名の竜騎士からなる隊で、一人一人が一度に一師団を壊滅させられる力を持っていると言われているの」
「いや……それは設定盛りすぎ……でも……ないのか……?」
隊の構成員は全員男性で、青年から老人まで、痩せた者もいれば恰幅な者もいる。
『ドランディオーソ』のメンバーにはそれぞれ竜の部位の称号が与えられている。
竜の頭、ランドルフ。
竜の目、ソラリス。
竜の牙、レグナス。
竜の胴、ドミンゴ。
竜の左翼、ファルミナ。
竜の右翼、ミッチェル。
竜の尾、ペルデール。
どれだけの才能と努力があってあんな覇気を出せるようになるのだろう。飛竜も、野生の粗暴な飛竜とは風格が異なる。冷静で、従順で、しかしいざとなれば猛々しく敵を蹂躙できそうな、知能の高い飛竜を操っている。
七人の中心、先頭で飛ぶ人物が一際目立っていた。
リトレギア王国最強の竜騎士団、ドランディオーソに所属する七名は正門に着地した。
それまで大盛り上がりだった召使い、民衆は彼らが帰還すると、皆黙って跪いた。
先頭で隊を率いてた美青年に、リュウトは釘付けになった。
肩まで伸ばした黒い髪。スラリと伸びた長い脚と男らしい屈強な身体。そして特に釘付けになったのが、闇夜の中でも光り輝きそうな涼やかで印象的な翠色の瞳。
なんて美しい男なんだろう。彼の存在で、周りの空気が変わってしまった。
想像上の、ピンク髪のなよい男の像は、音を立てて崩れ落ちた。
もう、あれが誰なのかがはっきりとわかっていた。
「あれが、あれが最強の竜騎士、ソラリス――」
ソラリスはリュウトに目を向けると、涼やかな表情を一変させ、嬉しそうに微笑んだ。長い間離れていた親友と再会を果たしたかのように――。




