第13話:2015年 俳優という名の再生
◆俳優として、そして——◆
舞台の成功、MVの出演、ワークショップ講師としての活動。
小さな成果が、確かな“次”へと繋がっていく。
大劇場からのオファーがあった。
——脇役ながら、映画の出演も果たした。
その映画の撮影現場で、準備を進めていたスタッフのひとりが、ふとシュンの姿を見て呟いた。
「……なあ、君、誰かに似てるな。昔、舞台で名を馳せてた“今井ハヤト”って俳優、知ってる?」
「今井……ハヤト?」
「うん、もう何年も前に亡くなったらしいけどさ。演技の雰囲気が、どこか似てるんだよ。何というか……声の響かせ方とか。」
シュンは曖昧に微笑みながらも、心の奥で、その名前がどこか引っかかった。
(今井ハヤト。演技の雰囲気が似てる?)
(なぜだろう、心が疼く)
映画の撮影は順調に進み、無事にクランクアップ。
その繊細な演技と主役を食うほどの存在感で、監督からも一目置かれ、シュンは確実にステップアップしていった。
ある日、ミュージカル映画の主演候補にも挙がった。
だが——
(ミュージカル映画かぁ……はぁ……でも何でまた歌なんだ……歌は……まだ無理だ……どうする?……)
シュンは、歌を失った過去と、まだ向き合いきれていなかった。
——このままだと、そのチャンスが、また俺の手のひらから滑り落ちていく。
けれど、そこで味わう悔しささえも、今は生きる糧になっていた。
“来栖セナ”という名前が、またひとつ、誰かの記憶に灯りをともしていく。
——そして“今井シュン”という存在も、少しずつ蘇り始めていた。
それは、シュンの再生そのものだった。
(第14話へつづく)




