表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/18

第5話 傷ついたヒーローと救われた少女

気がつくと、僕は保健室にいた。もう放課後のようだ。


「コウ君……」


村雨さんが心配そうに僕の名を呼ぶ。


「村雨さん……僕は君に謝らないといけない」


僕は決意を込めて話を切り出す。


「小学生の頃の僕には君を助けるだけの力はなかった……かっこつけたいだけだったんだ。僕はただの偽善者なんだよ……君に好かれる資格なんてない」


言葉と共に涙が溢れてくる。村雨さんもこんな僕に幻滅しているだろう。いっそ、もう嫌ってくれて構わない。僕は誰かの期待に応える事も誰かを助ける事もできないのだから。

自分自身すら失望する程に情けないひ弱な男、それが本当の僕だ。

しかし村雨さんが口にしたのは意外な言葉だった。


「それでもコウ君が勇気を振り絞って私を助けようとした事は間違いなく本当だから……私にはそれで充分なんです」


その一言は、優し過ぎた。優し過ぎてそれ以上言葉も出なくて、だけどとてもあたたかかった。

自己否定ばかりでひねくれた僕の心の声をいともたやすく黙らせてしまった。

結局、僕は押し切られる形で村雨さんと付き合い始めた。

あんなに優しい言葉で肯定されたら、うん。仕方ないよね。そりゃあ好きにもなるでしょ。一つだけ村雨さんに教えられた事がある。

僕の行動は失敗ではあったが、間違いではなかった。

しかしこれだけは言える。僕、朱神コウはモブでありたい。それは変わらない。

主役とかヒーローになりたい訳ではない。ただのモブでありたい。その方が比較的平和に過ごせる。僕が過去のトラウマで思い知った人生の教訓だ。

だけど、村雨さんを助けた事は後悔していない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ