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玉砕パティシエ小豆田  作者: 花奏希美
1章 玉砕パティシエ小豆田と、お菓子の甘くてほろ苦い思い出
15/16

petit four

 私の顔を見て「もう大丈夫そうだね」と言った小豆田さんは、


「じゃあ僕は先に駅まで行くから。またね」


 私達を追い越して歩き出す。


「待て小豆田。明日の天気、雨に変わってるぞ」


「え、嘘!」


 振り返って柏森さんが差し出すスマホ画面を凝視した。


 明日と明後日は定休日だ。そのうち明日は、生憎(あいにく)の雨らしい。


「雨の予報は明後日だったのに!」


「俺に言われても」


「あ、でも明後日が曇のち晴れか。じゃあ明後日に行こうかな。香坂(こうさか)さんにも連絡しないと」


 初めて聞く名前だ。思わず訊ねてしまった。


「どなたかと会う約束ですか?」


「会う約束っていうか、製菓学生時代の後輩の旦那さんが花屋でね。おかげで花言葉にも少し詳しくなっちゃったよ。明日予約してたんだけど、明後日に変更できないか聞いてみないと」


 それだけ言うと「じゃ」と言って、再び駅に向かって進んで行く。今度は小走りだ。


「駆け込み乗車だけはするなよ」


 その背に向かって柏森さんが呼び掛けると、彼は片手を上げて少し後ろに腕を倒して、こちらに振るようにヒラヒラと振った。


「ったく、早く家に帰ったところで、明日や明後日が早く来るわけじゃないのにな」


「小豆田さんでも、雨の日に出掛けるのは嫌なんでしょうか」


「都さんのところに行くとなると、晴れた日の方がいいだろ」


「あぁ、奥さんのところですか」


 ということは、花はお見舞い用の花だろうか。出産を控えているだけだから、「お見舞い」という言葉も変かもしれないが。


「でも、病院に行くんだったら雨でも晴れでも、そんなに関係ない気がしますけどね」


「え?」


 わらびさんが驚いたように私を見た。


「え? 奥さん、出産のために入院されてるんですよね?」


 わらびさんはさらに驚愕の表情になる。柏森さんの顔も険しくなった。


「……それ、小豆田が言っていたのか?」


「小豆田さんが言って……?」


 いや、彼からは、何も聞いていない(ヽヽヽヽヽヽヽヽ)


 私はただ、写真と指輪を見せてもらっただけだ(ヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽ)


「ない……、です」


 わらびさんはホッとしていた。


 それ以上に柏森さんが安堵の溜め息を吐いた。


「……あの、どうかしたんですか?」


「ついに小豆田の頭がおかしくなったのかと思って、心底心配しただけだ」


 まずそれだけ言って、息を整える。そして、


「甘樂、小豆田は――」

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