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第十八話 廃村への道

 朝日が昇るころ、僕たちはギルドの前に集合した。


「おっ、ちゃんと来たな。」


 カインが腕を組みながら僕たちを見て、不敵に笑う。


「お前ら、途中で怖くなって逃げたかと思ったぜ?」


「バカ言うな。お前こそ、逃げ出すんじゃねぇぞ?」


 クリスが肩をすくめながら挑発する。カインもニヤリと笑い、互いに軽く睨み合う。


 僕はそのやり取りを横で見ながら、慎重に荷物を確認した。回復薬、包帯、そして貴重な爆発石。何が起こるかわからないし、万全の準備をしておくに越したことはない。


「それじゃあ、出発するか。」


 カインが言い、僕たちは廃村へ向かうことになった。




 森の中を進む。道なき道を歩きながら、僕たちは目的地へと向かった。


 森の奥へと進むにつれ、周囲の雰囲気が徐々に変わっていく。湿った土の匂いが強くなり、頭上を覆う木々の葉が太陽の光を遮る。薄暗い空間が広がる中、僕たちは慎重に足を進めた。


 ——そして、ついに。


「魔物の気配がします。」


 アリスの声が静かに響いた。


「っしゃ、狩りの時間だ!」


 カインがそう言うと、彼の仲間たちが剣を抜く。草むらの中から、獰猛な唸り声が響いた。大量のゴブリン。僕たちは即座に陣形を整え、迎え撃つ。


「二手に分かれよう。僕たちは左から行く!」


 そう僕が言うとカインたちは仲間同士で固まった。

 そして、カインが指示を出すと、彼の仲間たちがすぐさま動いた。彼らの連携は見事なもので、一人が前に出て注意を引きつける間に、別の者がゴブリンの側面から攻撃を仕掛ける。互いの動きを計算し尽くしたかのような連携は、長く共に戦ってきた経験があるからこそ成せるものだった。


「グギィ!」


 ゴブリンの短剣が振り下ろされるが、カインの仲間の一人が巧みに受け流し、すぐさま反撃を加える。鋭い剣閃がゴブリンの喉を裂き、そのまま崩れ落ちる。


「へ、雑魚が」


 カインが不敵に笑いながら、残るゴブリンへと突進する。彼の剣が鮮やかに閃き、次のゴブリンの胴体を切り裂いた。


 一方——


「こっちにもいるぜ!」


 クリスが勢いよく駆け出した。彼女の動きは迷いがなく、軽やかにゴブリンたちの間を駆け抜ける。


「遅い!」


 ゴブリンが短剣を振り下ろすが、クリスはそれを紙一重でかわし、逆に踏み込む。彼女の剣が一直線に突き出され、ゴブリンの胸を貫いた。


「グギィャァ!」


 叫び声を上げる暇もなく、ゴブリンはその場に崩れ落ちる。クリスは一瞬も無駄にせず、すぐに次の敵へと向かう。その動きはまるで舞うようで、敵の攻撃をかわしながら一方的に斬り伏せていく。


 その傍らでは——


「グギィ……ッ!」


 スライムゾンビが音もなく動き出し、草むらに潜んでいたゴブリンを絡め取る。


 その瞬間、絶叫が響いた。


「ぎゃぁぁぁっ!」


 スライムゾンビは容赦なくゴブリンを包み込み、そのまま全身を溶かしていく。その様子を見たカインの仲間の一人が、思わず息を呑む。


「うえっ気味の悪い戦い方しやがる……。」


 カインの仲間の一人がそう呟くが、僕を含めて誰もそれに反論はしなかった。


 そして——


「はぁっ!」


 僕は慎重に剣を構え、目の前のゴブリンと向き合う。ゴブリンは僕に狙いを定め、短剣を構えた。


「来い……!」


 僕はゴブリンの動きをじっくりと観察する。以前の僕なら、焦って動いていただろう。しかし、今は違う。


 ——相手の出方を待ち、隙を突く。


 ゴブリンが勢いよく飛びかかってくる。だが、僕は動じない。

「……そこだ!」


 ゴブリンが短剣を振り下ろす直前、僕は一歩踏み込んで、剣を横に払う。


「グギィッ!?」


 ゴブリンは自分の攻撃が届く前に、その首を刈られた。僕はすぐに体勢を整え、残る敵へと向かう。


 ——僕も、確実に強くなっている。


 そして、戦いが終わった。


「カイン、君たちも強いね。」


 僕は率直な感想を述べた。確かに嫌味ばかり言ってくるが、彼らの戦いぶりは見事だった。


「フン、当然だ。だけど、お前らはクリスと気色悪いスライムだけだな。」


 カインは鼻を鳴らし、煽ってくる。しかし、それは事実だ。僕単体だとカインたち個人と戦い辛勝するくらいだ。彼らには連携がある。僕らは個人で戦っている分、浮いた僕は大きな戦力とはならない。



「へ、俺たちはパーティーだ。俺の手柄もバレットの手柄だ。それに、お前らその人数で倒した数そんだけかよ。」


 そう言ってクリスは意趣返しとばかりに煽る。


「うっせえ!」


 まだ、かなり嫌煙しているようだ。




 結構進んだ、廃村はもう近い。


「このまま進むのは危険です。今日はここで野営しましょう。」


 アリスが提案する。


「おいおい、暗くなる前に行けるだけ近づこうぜ?ビビッてんのか?」


「無理は禁物だ。相手はゴブリンの集団近づくと斥候がいる可能性が高い。」


「ちっわかったよ。」


 カインは渋々頷いた。



カインたちと僕たちは少し距離を取ってテントを設営し、それぞれの野営の準備を進めていった——。









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