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第十四話 ギルドへ

 宿を出て、僕たちは町の中心にある冒険者ギルドを目指した。


 道を歩きながら、会話をする。


「冒険者ギルドってのは、やっぱり戦いの依頼が多いのか?」


 クリスが隣でそんなことを呟いた。


「そうだな……討伐とか護衛とか、色々あるみたいだけど。まあ、初心者向けの仕事が何かは分からないな。」


「私たちみたいな初心者は、まず登録して、雑用からこなすという話は聞きましたね。」


 アリスが可愛らしく微笑む。


 そんな話をしているうちに、目の前に「冒険者ギルド」の建物が見えてきた。



 ギルドの扉を開けると、中にはすでに多くの人がいた。


 鎧を着た戦士、ローブを纏った魔法使い、軽装の盗賊風の者……。


 それぞれが仕事を求めて動き回っており、賑やかで活気に満ちている。


「うわぁ……村とは全然違うな。」


 僕は圧倒されつつも、まっすぐ受付へ向かう。


 受付には、長い金髪を後ろでまとめた綺麗なギルドの受付嬢さんが座っていた。


「いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこそ。今日はどういったご用件でしょうか?」


「僕たち、冒険者登録をしたいんです。」


 僕がそう言うと、受付嬢は微笑んで頷いた。


「なるほど。初めての登録ですね? では、ギルドの規約について簡単に説明します。」


 受付嬢は慣れた口調で話し始めた。


「ギルドでは冒険者をランクで管理しています。最初はFランクからのスタートです。依頼をこなし、成果を上げればランクが上がり、より危険で報酬の高い依頼が受けられるようになります。」


「Fランク……初心者ってことだな。」


 クリスが腕を組みながら言う。


「そうですね。ですが、Fランクの依頼でも十分な収入は得られますよ。例えば……。」


 受付嬢は壁に貼られた依頼書を数枚取り出した。


「こちらは、町の外れにある薬草の採取依頼。比較的安全ですが、魔物に襲われる可能性もあります。そしてこちらは、害獣駆除の依頼。主に森に出没する小型の魔物を討伐する仕事です。」


「へー……討伐系の依頼の方がやりがいがありそうだな。」


 クリスが興味深そうに覗き込む。


「戦闘経験があるなら、こちらの害獣駆除がいいかもしれませんね。」


 受付嬢が微笑みながら言ったその時だった。


「おい、お前ら新人か?」


 不意に後ろから声がかかった。


 振り向くと、僕たちと同じくらいの年齢の少年が立っていた。彼は金髪に鋭い目つきをした、どこか自信満々な雰囲気を纏っている。その後ろには、彼の仲間らしき数人の冒険者が並んでいた。


「なんだ?」


 僕が警戒しながら返すと、少年はニヤリと笑い、僕を軽く一瞥した後、アリスに目を向けた。


「へぇ……お前、なかなかの美人じゃねぇか。」


 アリスが戸惑うように小さく首を傾げる。


「それはどうも……あなたは?」


「俺か? 俺はカイン。この町の冒険者さ。ま、俺たちはもうEランクだけどな。」


 カインは自慢げに鼻を鳴らし、僕たちを値踏みするように見てくる。


「新人にしては、随分いい仲間を連れてるじゃねぇか。特にそこの白髪の嬢ちゃん、俺のパーティーに入る気はないか?」


 アリスは困惑した表情を見せるが、すぐに微笑みながら僕の腕にそっと手を添えた。


「申し訳ありません。私はお兄様と一緒にいたいので。」


「はっ、兄貴?兄妹かよ。」


 カインが嘲るように笑う。


「兄妹だろうがなんだろうが、強い奴と組んだ方が得だぜ? お前みたいな雑魚より、俺といた方がよっぽどいいと思うがな?」


「……僕たちは僕たちのやり方でやるよ。」


 僕は冷静に答えた。すると、カインはふんと鼻を鳴らした。


「ま、好きにしろよ。でもな、冒険者の世界は甘くねぇぞ。」


 そう言い残し、カインたちはギルドの奥へと歩き去っていった。


「……感じ悪いやつだな。」


 クリスがぼそっと呟く。



「荒っぽくて、申し訳ありません。」


 受付嬢が苦笑しながら僕たちに頭を下げた。


「ギルドは優秀な冒険者たちの自由を重んじますから、互いの小競り合いには何も口出ししません。カイン様のような方はその代わりよくいますが、特に規則で禁止されているわけではないので。」


 要するに、ギルドは冒険者同士の揉め事には関与しない、ということらしい。


「とはいえ、特に国に召し抱えられるほどの冒険者様は、信頼とマナーを大事にしていますので、そうするのが、おすすめではありますが。ですが、目をつけられてしまったようですね。」


 受付嬢の表情には、どこか申し訳なさそうな色が滲んでいた。


「ま、気にしねぇよ。」


 クリスが肩をすくめる。


「それより、早速依頼を選ぼうぜ。」


「そうですね。今日のところは無理のない依頼を選んで、明日に備えるのがいいでしょう。」


 僕は受付嬢におすすめの依頼を聞いた。


「では、新人向けの依頼の中から、今の皆さんに適したものを提案しますね。」


 受付嬢が机の下から数枚の紙を取り出し、広げる。


「簡単な採取系の依頼がいくつかあります。薬草の採取や、小型の魔物の討伐などが人気ですね。戦闘の少ないものから、ある程度経験を積めるものまで選択肢はありますが、どうされますか?」


 僕たちは顔を見合わせる。


「どうする?」


 クリスが僕に尋ねる。


「まずは小手調べで、軽い討伐依頼にしよう。」


「了解。」


 僕たちは小型魔物討伐の依頼を選び、受付嬢に伝えた。


「では、この依頼で登録いたしますね。報酬は魔物の数に応じて変動しますので、なるべく多く討伐することをおすすめします。」


 受付嬢がにこやかに説明し、書類に必要事項を記入させられた。


 これで、僕たちは正式に初めてのギルド依頼を受けることになった。


 今日のところは宿に戻り、明日に備えることにする。




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