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第十三話 町への到着

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 太陽が高く昇る頃、僕たちはついに町の門へと辿り着いた。


 遠くから見てもわかるほどの高い石造りの壁が町を囲い、門の前には衛兵が厳重に警戒している。村と違い、ここには明確な"境界"が存在していた。


「おお、結構デカい町じゃねえか!」


 クリスが感心したように呟く。僕もこの町に来るのは初めてだったが、村とは比べものにならないほどの人の多さに圧倒された。


「さて、まずは入るための手続きをしないとですね。」


 アリスがにこやかに微笑む。その表情は、いつものように清らかで愛らしい。


 門番の前に並ぶと、衛兵が鋭い目でこちらを見た。


「お前たち、どこから来た?」


「近くの村からです。」


 僕が答えると、衛兵は少し顎をしゃくった。


「目的は?」


「村から出て仕事を探しに来ました。あと、修行のためです。」


 簡潔に説明すると、衛兵は一瞬だけアリスに視線を移した。


「……町に入るには金が必要だぞ。ないってんなら条件によっては援助してやるが?」


「必要ありません。いくらですか?」


 その言葉に、衛兵が一瞬眉を上げたが、特に問題にはしなかったようで「ふん」と鼻を鳴らした。


「身分を証明するものがないのなら、三人で600マネだ。」


「……高いな。」


 クリスが呟く。

 僕は財布を確認して、支払った。

 意外な手痛い出費だった。


 門をくぐると、そこには村では見たことのない光景が広がっていた。


 石畳の道が整然と敷かれ、両脇には店が軒を連ねている。行き交う人々の多さに驚きながらも、僕たちは町の中心へと足を進めた。


「うわぁ……すごい活気ですね。」


 アリスが目を輝かせながら、周囲を見渡す。確かに、村とは違い、ここには様々な職業の人が混ざり合いながら暮らしているようだった。


「おいおい、あっちの店の肉、めちゃくちゃ美味そうじゃねぇか?」


 クリスが屋台の焼き肉串を指差して言う。確かに、炭火で焼かれた肉の香ばしい匂いが鼻をくすぐる。


「確かに美味しそうだな。でも、あまり無駄遣いはできないぞ?」


「まぁまぁ、せっかく町に来たんだし、一回くらいいいじゃねえか?」


 クリスはそう言いながら、勝手に自分の分と僕の分の串焼きを買い、無理やり僕の手に押し付けた。


「ほらよ。お前も食えよ。」


 仕方なく受け取り、一口かじると、ジュワッと肉汁が溢れた。


「……うまいな。」


 思わず呟くと、クリスが得意げに笑った。


「だろ?」


「お兄様、私も食べたいです。」


 アリスが可愛らしく僕を見上げる。その仕草に抗えるはずもなく、結局アリスに僕の残りを献上した。


 食事を終えた後、僕たちは宿を探すことにした。



 市場を後にし、僕たちは町の通りを歩きながら宿を探していた。


「宿ってどこにあるんだ?」


 クリスが辺りを見回しながら呟く。確かに、町の中にはいくつか宿らしき建物があるが、どこが良いのか分からない。僕は周囲を見回しながら、それらしい看板を探した。


「まずは値段と環境を確認しながら決めましょう。」


 アリスが微笑みながら提案する。その言葉に従い、僕たちはまず一軒目の宿に入った。


 入り口には、しっかりした木製の扉があり、中からは温かい灯りが漏れている。宿屋の主人らしき中年の男性がカウンターの奥に座っており、僕たちの姿を見ると顔を上げた。


「いらっしゃい。旅の方か?」


「はい、部屋を探しています。泊まるのは三人で、安めの部屋はありますか?」


 僕が尋ねると、主人は少し考えた後、ゆっくりと口を開いた。


「うちの宿は一泊一人200マネだな。朝食はつくが、どうする?」


「三人で600マネか……ちょっと高いな。」


 クリスが小声で呟く。確かに、今の僕たちの手持ちから考えると、何日も泊まるには厳しい。


「もう少し安い宿も探してみましょう。」


 僕たちは主人に謝ると一度宿を出て、さらにいくつかの宿を巡ることにした。二軒目は安かったが、部屋がかなり汚れていた。三軒目は悪くなかったが、場所が町の端で、移動が大変そうだった。


 最終的に、程よい値段で清潔な宿を見つけることができた。受付には優しげな女性がいて、僕たちの話を親切に聞いてくれた。


「三人で泊まるなら、一部屋を三人で使えば少し割引できますよ。」


 その言葉にクリスがすぐに反応する。


「それなら、俺とバレットが一緒の部屋で——」


「クリスさん、お兄様と一緒に寝るのはダメですよ。」


 アリスがにっこり微笑みながらクリスの言葉を遮る。


「えっ? なんで?」


「……一応、男女ですから。」


 アリスの言葉に、クリスは一瞬キョトンとした顔をしたが、すぐに「ああ、そういうことか」と納得したように頷いた。


「じゃあ、俺はアリスと一緒でも——」


「それは嫌です。」


 アリスは微笑みながらきっぱりと断った。


 結局、それぞれ小さな一人部屋という形で決まり、高い宿代を支払うことにした。


 宿の部屋に荷物を置いた後、僕たちは今後のために仕事を探すことにした。


「まずは冒険者ギルドに行ってみようぜ!」


 クリスが元気よく提案する。


「ギルドがどんな仕組みなのかも知りたいですね。」


 アリスも興味深げに頷く。


 僕たちは宿を出て、町の中心にあるという冒険者ギルドを目指した。


 道を歩きながら、僕はこの町での生活がどんなものになるのか、少しだけ期待と不安を感じていた。

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