彼との甘いひととき
そのひとはアパートの部屋に一人暮らし。
ドキドキしながら、あたしは冷凍庫の隅で待っていた。そのひとに愛されるのを。
彼が浴室から出てくる音が聞こえた。
あたしは身を固くして、でも心の奥底ではもう既にとろけはじめてた。
彼がバスタオルで体を拭いている。
その音に混じって、彼の息遣いも聞こえてくる。
彼が、冷凍庫の蓋を、開けた。
暖房の効いた部屋へ、お姫様を運ぶように、そのひとはあたしを導いてくれた。
照明がムーディーな明るさに落とされてる。
ニトリで見たことがあるような、お洒落でカジュアルなネイビーのファブリック・ソファーに腰を埋めると、そのひとはあたしに愛を囁いた。
「美味しそうだよ、バニラちゃん」
優しい目を笑わせて、あたしを安心させようとしてくれる。
「美味しく食べてあげるからね」
スプーンを持った彼の手が伸びてきた。
「ひゃうっ……!」
いきなりあたしの真ん中にそれを、挿してきた。
「い……、いきなり……っ! そんなこと……されたら……っ」
白いクリームを掬うと、それが彼の口に運ばれる。
湿った音を立てて口の中に入り、舌の上で溶かされた。
「ああああっ!」
あたしは思わず声を漏らしてしまった。
体の芯が、熱い。
どんどん溶かされていくようだ。
「うーん」
彼が囁く声で、満足そうに言った。
「やっぱりフォーティーワンのバニラちゃんの味は最高だ」
そしてどんどん、止まらなくなった彼のスプーンがあたしの体に突き刺さる。
狼のように激しく、貴族のように繊細に、そのひとはあたしを食べた。
「とろりん」
彼が言った。
「とろとろ……」
あたしもそれに答えた。
あたしを一口食べるごとにすごい笑顔でとろりんって言ってくれる彼に、あたしもとろとろって答える。
その繰り返しがひととき続いた。
夢のような甘いひとときだった。
あたしはとことん、愛してもらった。
そして天国へと昇っていった。笑顔で。