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アイスクリームが食べたいと泣く女
「アイスクリーム食べたい……」
女は趣味の聖闘士フィギュアを並べまくった部屋でひとり、呟いた。
「アイスクリームが食べたーいっ」
もう一年間もアイスクリームを口にしていなかったのだ。
「とろっとろの、バニラのアイスクリームが、食べたーいっ!」
バニラちゃんは彼女のことを知らなかった。
当たり前であろう、世界中のすべてのひとのことを知っているわけではないのだから。
自分のことを、これほどまでに食べたいと思っている彼女の存在に、気づいてあげられなかった。
彼女にはお金がなかった。
今月、もう一日90円しか使えない。
そんな貧乏人には縁がなかった。
人の世とは情けのないものなのである。




