ゴールデンウィークはお外に出よう
ここは山の上の遊園地!
我ら『フォーティーワン・アイスクリーム』のアイスクリーム軍団は今日、お店の外に出て、こんな遠くまでやって来た!
遊びに来たんじゃないぞ。出張だ。
遊園地内に場所を借りて、出張販売のブースを作ってもらえたのだ!
「バニラちゃん、なんかはしゃいでるね」
「あったりまえじゃない、オレンジソルベくん。元人間ならここへ来てはしゃがないアイスクリームはいないよ?」
「僕は初めて来たんだけど、ここはどういうとこなの?」
「遊園地だよ、ゆーえんち! 社会の歯車どもが羽根を伸ばして一時自由になった気分になれるとこ!」
「へー。人間もとろけるってこと?」
「とろけはしない! でも、ほら、見て?」
あたしは巨大な観覧車を指さした。
「あれに乗って、高いところでお客さんに食べられるの想像して? 鳥になった気分だよ?」
「鳥って、あの鳩ポッポみたいなやつ? べつになりたくはないなぁ……」
「そっか……。アイスクリームはアイスクリームのままで幸せなんだもんね。……わかんないよね」
「でも、いつもと違う気分なのはなんかいいね」
「でしょ? オレンジソルベくんもいっぱい買われて、いっぱいとろけてね。じゃ、レッツ・販売開始!」
かわいいブルーの制服にエプロンを着けたお姉さんたちが、あたしをお客さんに勧めてくれる。
「こんにちはー! フォーティーワン・アイスの移動販売ですよー!」
「まだ5月なのに暑いですよね〜! 冷たいアイスクリームはいかがですかぁ〜?」
アイスクリームのみんなも一斉に声をかける。
「あたし、美味しいよー」と、トロピカル・キャンディちゃん。
「日本人ならウチの魅力わかるはずー」と、黒蜜きなこちゃん。
「パチパチキャンディー入ってて楽しいよー」と、ポッピング・ミントくん。
あたしも声を張り上げてアピールした。
「バニラは基本〜! 基本が一番だよっ!」
オレンジソルベくんは照れくさいのかアピールはせずに、あたしを褒める。
「いい声出すね〜、バニラちゃん。惚れ惚れするよ。僕が買いたくなっちゃうぐらいだよ」
「オレンジソルベとバニラをダブルのワッフルコーンでください」
あたしたちをペアで買ってくれたのは子連れのお母さんだった。
優しい旦那さんが子供たちを見ててくれると言って、アイスクリームでひとときのくつろぎタイムのようだ。
コーンに乗せられると見晴らしが良くて、いつもより高くて気持ちがいい。
「最近ずっとカップだったから、この見晴らしは気持ちがいいね」
オレンジソルベくんがニコニコ上機嫌。
「観覧車に乗るまでもなく、コーンの上に乗るだけで最高になれたね」
あたしもニコニコ空飛ぶ気分。
お母さんの口でとろけながら、幸せに少しずつ、なくなっていく。
あっ。
お母さん、食べるの遅い。
溶けちゃう垂れちゃう! ペロペロして!
早く早く! 地面に落ちちゃうよ!




