流血の雷と黒い炎
「……なるほど、それは名案だな」
ギルシェルルはフッと鼻で笑い、そう言った。
「だろう?元魔王のあんたと俺で手を組めば最強だ!!こんな世界、すぐにでもぐちゃぐちゃにぶっ壊せるゼ!!」
「まあ、私はそんな話に乗らないがな」
「はーー!?なんでだよー!?いい話だろー!?あんたは元の姿に戻れるし、人間どもの阿鼻叫喚が聴けるしよー!」
「私は貴様のような笑い方が下品なやつとは手を組まん。それに、貴様ごときがあの小娘に勝てるとは思えん」
「なんだよー?さっき爆笑したこと根に持ってるのかぁ?悪かったって!なーなー、俺と手を組もうぜ~?」
そう言いながら、魔物はしゃがんでギルシェルルに肩を組んだ。が、ギルシェルルは組まれた肩を〝ぱふんっ〞と、もふもふの手で払った。
「貴様のそのテンションが不愉快だ、下等な化物が」
「……言うねぇ、さすが元魔王様。けど……下等な化物はてめぇだろうがっ!!」
魔物は声をあげながら、ギルシェルルを思いきり蹴飛ばした。
「グハッ!うぐっ……」
蹴られたギルシェルルはごろごろと地面を転がり、木に激しく背中を打った。
「あ~めんどくせぇ!イライラすらぁ!こっちが下手に出てりゃあいい気になりやがって。てめぇはもう魔王じゃねぇんだよ、役立たずのぬいぐるみなんだよ!俺様が折角お前のことを元に戻して使ってやるつってんだからよぉ、大人しく従っとけ、よっ!!」
「ぐふっ!!」
木の傍で倒れてるギルシェルルの腹部を、魔物は思いきり蹴りあげた。
「かわいいくまの魔王しゃま~、どうしましゅかぁ?もし、俺様がその小娘ちゃんをぶっ殺した後にてめぇの姿が元に戻ったら、俺様の家来になる?それとも~……今ここで死んじゃう?」
「ぐっ……うっ……」
魔物はギルシェルルの首を片手で掴み、ギリギリと絞めながら木に押し付けた。
ギルシェルルは首を絞められながら、絞り出すようにして言った。
「……フッ、貴様ごときの下等な化物の家来になるくらいなら、死を選っ!グハあっ!!!」
ギルシェルルが話してる途中で、魔物はギルシェルルの腹部に思いきり拳をいれた。
「じゃあお望み通り殺してやるよ!!ただ殺すだけじゃねえ、じわじわ痛め付けて、その小娘の魔法使いを誘きださせる道具にしてやるよ!!」
魔物はギルシェルルの首を掴みながら、腹部に重い拳を何度も食らわせる。
「グハッ!ぐっ……………」
「おいおい、これくらいでぐったりしてんじゃねぇよ。もっと声出せよ。じゃねぇと、その小娘が気づかねぇだろ。仕方ねぇなぁ~……ぬいぐるみなんかに魔力は使いたくねぇけど、使うか」
魔物は言い、ギルシェルルの首を掴んでいる方とは逆の手を、ギルシェルルの顔に乗せた。
「てめぇに俺様の力を見せてやるよ。目の前でな──……」
魔物がそう言った時だった。
「はあああああ!!!」
「グエッ!!」
魔物の頬を、木の棒で誰かが殴った。ドレールだ。魔物はギルシェルルの首から手を離し、地面に倒れた。
「大丈夫ですか?ギルシェルル様!」
「ゲホッゴホッ!……ドレール!何故ここに!?」
「戻る途中で、ギルシェルル様が行った方向から妙な音がしたので。気になって駆けつけてみましたか……何ですかこの魔──」
「流血の雷!!!」
「グアアアアッッ!!」
「ドレールッ!!」
ドレールが話している途中に、魔物はドレールに赤黒い雷のような呪文を放った。
「カ…ハ………」
口から灰色の煙を吐きながら、黒焦げになったドレールが地面に倒れると、魔物がグシャッとドレールを踏みつけた。
「コノヤロウ……俺様の顔をよくもぶん殴ってくれたな。今すぐブッ殺してやるっ!!」
「させるかー!!」
ギルシェルルは地面を蹴ってジャンプし、魔物に飛びかかろうとするが。
「どけ!雑魚魔王!!こいつの後に刻んでやるから待ってろ!!」
魔物はギルシェルルを裏拳で殴り、ギルシェルルは森の奥に吹っ飛ばされた。
「ぐ……ぅ……」
「今度はもっとでかい電撃を食らわしてやるよ。てめぇのカスも残らねぇくらいの電撃をよー!!」
「やめろおおおおオオオオオ!!!!」
ギルシェルルが大声で叫んだ時だった。ギルシェルルの口の中が黒く光り、黒い炎のようなものが放たれた。




