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第97話 【贈り物・2】


 それから数日後、仕事が休みで訓練も休みとなった日。

 朝早くから俺は、ユリウスと共に城を出て王都の商業区へと向かっていた。


「そう言えば、ずっと聞いてませんでしたけど、なんでああまでなってユリウスさんはミスリルを手に入れようとしたんですか?」


 気にはなっていたが、罪の償いで走り回っていたユリウスに聞くのはと思い、ずっと聞いていなかった事を俺は遂に聞く事にした。


「……ジンさんは私が元孤児という事はご存じですよね?」


「はい、姫様から聞きました。まだユリウスさんが子供の頃に出会って、そのまま拾ったと」


「その時、私には孤児仲間と言いますか、まあ妹の様な存在の子が居たんですよ。勿論、姫様はその子の事も面倒を見ると言ってくれたんですけど、彼女は貴族には近づきたくないと言いまして一緒に来る事は無かったんです」


 ん? こんな話、ユリウスの設定にあったか? 元孤児で孤児仲間が居たとは明記されていた。

 だが、そんな妹の様な存在がいるなんて、本編でも設定資料にも書かれていなかったぞ?


「孤児は自分が生きる事に精一杯な考えなので、結局私は彼女を置いて姫様の元に拾われ、ここで生活をする事に決めたんです。そうして彼女と別れた訳なんですが、つい先日彼女が冒険者として、活躍してるのを見かけたんです」


「えっ、それまで手紙のやり取りとかしてなかったんですか?」


「孤児同士ですからね。別れた後の連絡手段が無かったんですよ。それで彼女に対しての償いと言いますか、子供の頃に約束した事を叶えよう。そう思いミスリルを手に入れる為に、あのような騒動を起こしてしまったんです」


「えっと、そこで何でミスリルの話が出るんですか?」


「子供の頃に彼女と話していたんです。自分が最も欲しい物で、私は剣士としての最強の称号が欲しいと言い、彼女はミスリルで出来た装飾品が欲しいと言ったんです」


 成程、それで躍起になってミスリルを見つけようと、あんなダンジョンの生態系を乱す程に鉱石を掘りまくったのか。

 なんかもっと、それなりの理由があるのかと思っていたけど、意外とピュアな理由だったな。


「子供の頃の約束の為に、ダンジョンを破壊する程になるなんてすごい思いの強さですね」


「……多分、自分はぬくぬくと温かい所で過ごして、彼女をいつ死んでもおかしくない場所に置き去りにした事が心の中でずっと自分を苦しめていたんだと思います。それを和らげるためにも、子供の頃の夢を叶えようと体が勝手に動いたんだと思います」


 あの時は色々とご迷惑をおかけして申し訳ありませんと、ユリウスは謝罪をした。

 その後、先にシンシアの店に行き色々と購入した俺は、ユリウスが頼もうとしている鍛冶屋の場所へと向かった。


「……ユリウスさん、本当にここですか?」


「あ、あれ?」


 やって来た場所の建物には、張り紙がついてあった。

 要約すると親方が倒れてしまい、弟子もまだ育ち切ってないから店を畳む事にしたと書いてあった。


「どうします? 鍛冶屋は他にもありますから、何処に頼みますか?」


「……ミスリルは扱いが難しい鉱石で、持ち込みだとしても断る鍛冶師も居るんです。なのでこのお店も探し回って、ようやく見つけた所だったんです」


 そう落ち込んだ様子のユリウスに、俺は出来るか分からないが一応ある事を言った。


「でしたら、一度リーザに頼んでみますか?」


「えっ!? ガフカの工房にですか? む、無理ですよジンさんは気に入られてるから分からないと思いますが、あの場所は王族さえも断るんですよ?」


「話を持って行って、無理なら他を探せばいいじゃないですか。ここで考え込んでる方が勿体ないですから」


 そう言って俺はユリウスを連れて、リーザの店へと向かった。

 正直、俺もリーザが受けてくれるか分からない、だけどあそこで立ち止まって考えているなら物は試しで聞くのは良いと思った。


「成程ね。それで、あたしの所に来たって訳か」


「ああ、どうだやってくれるか? 俺の知ってる鍛冶屋はここだけだし、話だけでもと思って来たんだ」


「……いいよ。やってあげる」


「ッ! 良いんですか!?」


 リーザは暫く考え込むと、やってくれると言ってユリウスは驚いた反応をした。


「ジンの頼みだしね。それに剣聖のそんな馬鹿な話を聞いて、なんかやる気がでたのよ。元孤児仲間の為に、自分が死にかけてもとってくるなんて面白いじゃない。前までお高くとまった剣聖様と思ってたけど、案外面白い奴だったんだね」


「あ、ありがとうございます」


 ニヤニヤと笑いながら言うリーザに、ユリウスは一歩後ずさって何故かお礼を言った。

 その後、ミスリルの鉱石をリーザに渡して明日には出来るからと言われて、俺達は店を出た。


「良かったですね。作って貰える事になって、試した甲斐がありましたね」


「は、はい。本当にジンさんには頭が上がりません。まさか、あのリーザさんに作って貰えるなんて、思いもしませんでしたから……」


 ここまで緊張しているユリウスは初めて見るな、それだけリーザに作って貰えるという事が凄い事なのだろう。

 そうリーザの凄さを改めて実感しつつ、俺とユリウスは用事は終わったので城に戻る事にした。

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[気になる点] 作中でも言われてるけど、 あそこまでムキになって死にかけた理由としては弱いよね 急を要さないなら、 近いうちに休暇を取ってまた取りにくればいいのだし 冒険者だからいつ死ぬか判らないと言…
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