第96話 【贈り物・1】
レーヴィンの魔法を教わり、数日が経った。
休日は以前までダンジョンや依頼等で体を動かしていた俺だが、ここ最近は訓練に今まで以上に取り組んでいる。
その理由はレーヴィンとリオンの魔法を教わる方が、俺にとって体を動かす以上に有益だった。
「ジン、流石儂が見込んだ男じゃな、もう殆ど儂の魔法を覚えたようじゃな」
「形は大体出来てきました。ただまあ、威力はまだまだですね。ミスリルの腕輪のおかげで、多少威力を誤魔化せてるだけですよ」
レーヴィンの教えは俺が思っていた以上に、俺の成長に繋がった。
元々、神の加護もある上に体内魔力も桁違いに多い俺は、常人よりも倍以上訓練を続け誰よりも成長している。
唯一そんな俺の成長速度に付いて来てるのは、クロエだけだった。
「嬢ちゃんの方も中々筋がいいのう。儂の孫といい勝負じゃと思うぞ」
「あはは、そんな事無いですよ。ティアナさんの方がまだまだ凄いですよ」
レーヴィンは俺とクロエが変装をし、姫様の護衛をしている事を既に知っている。
というか、言っておかないとレーヴィンが孫に自慢話で話してしまうかもと、レーヴィンの奥さんであるエイレーンさんに忠告してもらった。
「父上、そろそろ時間です。ジンとクロエは私の訓練時間です」
「ちっ、時間通りじゃな……少しはゆっくりしてくればいいものを……」
当初、日にって順番に教えるという決め事をしていたが、主にレーヴィンがその約束を破りまた喧嘩が起きてしまった。
その時は場所も外で自分達で魔力壁を張って、いい歳した親子がガチで喧嘩をはじめた。
まあ、その喧嘩を止めたのも言うまでも無く、馬鹿親子の奥様方であった。
その喧嘩から魔法を教わる日を決め、その一日で時間を決めて訓練をする事になった。
訓練の日を大分削れた理由は、その日なら奥さん方の監視が出来るからだ。
馬鹿親子は奥さん達からの信頼をこの数日間で、完全に失ってしまった結果となった。
「父上、良いんですかそんな態度をとって? 母上が見てますよ?」
リオンはしかめっ面を浮かべてるレーヴィンにそう言うと、城の建物の方を見上げた。
王城二階、訓練場がよく見渡せる部屋から、リオンとレーヴィンの奥さん達はこちらを見ていた。
「うぐっ、分かっておる……」
リオンの言葉でレーヴィンは、トボトボとこの場を去って行った。
そんな感じで案外、悪くない訓練を日々を過ごしている。
そうして今日も訓練が終わり、汗を流す為にシャワーを浴びて着替えると、廊下でユリウスが立って待っていた。
「既視感が凄くあるんですけど、まさかまたどこかに消えるとかでは無いですよね……」
「だ、大丈夫ですよ。今回はジンさんにお礼と、ミスリルの受け取りに来たんです」
一歩後ずさって言った俺の言葉に、ユリウスはそう慌てて言った。
ここ最近、ユリウスは基本的に城には居なくて姫様の頼み事の為、王都を駆け回っていた。
それが罰になるのか姫様に直接聞いたが、ユリウスに良い罰なんて無いから、取り敢えず肉体的疲労を毎日限界までやる事にしたらしい。
「それにしても早かったですね。罰の償い、もっとかかるのかと思ってました」
「いえ、償い自体はまだ終わってないんですが姫から、いつまでもジンさんに持っててもらってたら迷惑と言われまして、ミスリルの受け取りを許可されたんです」
「成程、そう言う事ですね。それじゃ、もうミスリルはここで渡しても大丈夫ですか? 一応、あの鉱石って丁寧に扱わないといけないので、どこか鍛冶屋に持っていくのでしたらそこまでついて行きますよ?」
すぐに加工する予定なら、そこまで持っていくというとユリウスは暫く考え込んだ。
これまで大事に保管してもらった恩もあり、これ以上迷惑を掛けるのはとどうやら悩んでいるみたいだ。
「別に迷惑とかではないですよ? 今度の休み、自分の訓練道具の買い足しもあって訓練もお休みの日があるんですよ。その日なら、時間は作れるので王都内でしたらついて行きますよ」
「でしたら、お願いしてもいいですか? 加工してもらう相手は王都の方なので、そこまで運んでもらえたら助かります」
ユリウスは俺の言葉に対し、頭を下げてそうお願いをしてきた。
あの時の教訓から、手を貸して貰えるならその手を取る様にと、姫様から散々言われたみたいで前みたいに自分だけでやろうとはしない感じになっていた。
「はい、それではまた休日の日に」
「はい、ジンさんも訓練頑張ってください」
そう言って俺はユリウスと別れて食堂に行き、夕食を食べた後、直ぐに部屋にも帰りベッドに横になり直ぐに眠りについた。
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