第82話 【新たな装備・1】
ユリウス捜索という大事件から数日、特にこれといって事件や事故は起きる事は無く、平和な日々を過ごした。
無事にユリウスが見つかり、元気を取り戻した姫様の様子の変化に学園での友人達も気づいてホッとした様子だった。
姫様、自分ではそんなに変わってないって言ってたけど、俺でも分かるくらいに元気になったからな……。
と、そんな事を思いながら、俺は今日も仕事をしていた。
「なあ、ジンよ。冒険者辞めて、兵士にはならないのか?」
「えっ、なんでですか?」
仕事終わり、いつもの様に訓練をしていると、訓練に付き合ってくれていたアンドルからそんな事を聞かれた。
兵士? なんで俺が兵士に?
「いや、お前ほどの腕がある奴なら、この国の兵士試験クリアできると思うんだよ。冒険者程自由ではないが、収入はそこそこ良いぞ?」
「まあ、確かに兵士試験は突破して兵士になる事は出来ますけど、俺自身がそれを望んでません。折角、俺は生まれてからずっと拘束されてた世界から、自由になったので自由な冒険者で居続けるつもりです」
アンドルは俺が元貴族で、どういった生活をしていたのか聞いている。
そんなアンドルは俺の言葉を聞いて、ハッとした様子で「そうだったな……」と少しシュンッとした様子でそう言った。
「別に兵士が嫌とか、嫌いって理由では無いので、今回の依頼が終わった後も、王城側が俺達を拒否しないのであれば訓練また付けてください。一応、こんなの持ってるので」
「それはッ! ……成程な、ジン達にそれをやったんだな王様達は」
アンドルは俺が見せた王国から渡された。
貴族の中でも数名、そして貴族以外では本当に数人しか持っていない最高級の許可証を見て一瞬驚き、それから笑みを浮かべた。
「ええ、ですからアンドルさんが俺が居なくなって訓練相手が居なくなるという事は無いので、ご安心ください」
「そうかそうか、それなら良かった。柄にもなく、勧誘なんてしちまったけど、そこが心配だったんだよな~」
俺は数十名の倒れた兵士達をチラリと見ながらアンドルにそう言うと、アンドルは嬉しそうに俺の背中を叩いて嬉しそうにしていた。
そんなアンドルと同じく、倒れ伏してる兵士達も「ありがとう。本当に、ありがとう」と泣きそうな顔をしてそう言った。
その後、俺はアンドルとの訓練を陽が落ちるまで続けた。
「ジン君、訓練お疲れ~」
「ああ、お疲れクロエ」
訓練終わり、シャワーを浴び食堂に来ると、先に来ていたクロエに声を掛けられ、今日は一緒に食事をする事にした。
「クロエの訓練はどう?」
「うん、凄く楽しいよ。魔法騎士団の人達も優しくて、上手くできない魔法も丁寧に教えてくれるんだ」
先日、クロエが魔法の訓練をしていると、魔法騎士団の団長であるリオンに声を掛けられ、そこからクロエは魔法騎士団と一緒に訓練をする事になった。
魔法騎士団、王国では実力派集団で、貴族出の多い兵士とは違い、魔法騎士団の中には平民出の者のが多い。
それは魔法騎士団の考えの一つで、血筋よりも魔法の適性を大事にしている。
その為、魔法騎士団に入れる魔法使いは極僅かで、学園の卒業生で魔法騎士団に入団した者は少ない。
「ジン君も来たらよかったのに」
「今はちょっと剣の方に集中したいんだよ。それにリオン様も、剣が満足したら来たらいいって言ってくれたし」
本当は俺も魔法騎士団との訓練をどうだ? と誘われていた。
しかし、俺の中で剣を中途半端で辞めるのはという思いから訓練は断った。
すると意外にもリオンは俺の訓練話を無かった事にはせず、俺が剣で満足したらいつでも来て良いと言われた。
「それでジン君の剣の方はどうなの?」
「まあ、ボチボチだな……良い感じに対人でも使えるようにはなって来たけど、まだまだ上に行けそうな感覚がある」
俺は手をジッと見つめながら、クロエからの質問にそう答えた。
「訓練の休憩時間にジン君の剣見てるけど、訓練を始めた時から大分動きも良くなってるよね。それでも、まだ駄目なの?」
「ああ、俺の中でこれだ! って感覚になってないんだよ。今の動きも、もっとこう出来たなって反省点がまだ多いんだ」
「ジン君って意外と凝り性なんだね」
クロエはフフッと笑いながらそう言い、俺は「今のうちに自分の剣を見つけておきたいんだよ」とクロエに言った。
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