第8話 【新人冒険者ジン・3】
その後、俺はギルドを出て少し商業区を見て回る事にした。
商業区を見る理由は三つあり、一つは新しい商品が無いかの確認。
そして二つ目は、進行度の確認。
「まあ、そもそも俺が家を出た時点でストーリーが壊れてる可能性は十分あるんだけどな……」
一応、ジンというキャラはゲームの中でもキーキャラでもある。
そんなキャラが物語開始前の時点で、既に物語から消えている。
それにより〝聖剣勇者と七人の戦女〟のストーリー通りに、この世界が進まない可能性の方が高い。
だがそうなってくれると、俺としては物凄く助かる。
ゲーム通りに行くと、俺は最終的に死んでしまう。
前世も結果としては20代で死んでしまったから、今生こそは長生きしたいと俺は思ってる。
「おっ、昨日の坊主じゃないか!」
商業区を見て回っていると、昨日通った道に昨日と同じように出店をしていた肉串屋の店主に声を掛けられた。
「坊主、もう依頼はやったのか?」
「一応、二つ依頼を達成したよ。だから、今日は普通に買いに来たんだ」
商業区へ来た目的の三つ目は、この店主との約束を果たす為に来た。
というのも昨日貰った串肉、小腹が空いた時に丁度良く、時間が停止してる【異空間ボックス】に少し入れておこうと思ったのだ。
「おっ、それは嬉しいな! それで何本買うんだ?」
「ん~、そうだな……」
在庫があっても別に困らないしな……。
「なあ、おっちゃん。今出てるので今日の分はおしまいなのか?」
「そうだな、今日の所はもう時間も時間だし今ここで焼いてる分で終わりだぞ?」
「そうか、なら今焼いてる分全部買うよ。勿論、定価でな」
俺はそう言って、二本セット銀貨一枚を一〇セット。
銀貨一〇枚分の串焼きを購入した。
「完売何て久しぶりだな、いつも何本か残って夕食に回してたんだよ」
「気に入ったし、そこまでの量じゃないからな。というか、二本セット銀貨一枚ってもととれてるのか?」
「ギリギリだな、まあ好きでやってるから儲けは良いんだよ。金は本業の方で妻と雇ってる奴等が稼いでるからな」
そういやロブはこうして出店をやってるが、本来は王都でもそこそこ名の通ってる店の店長なんだよな。
料理もめちゃくちゃうまくて、この串肉に使ってるタレも確かロブの自家製だった筈だ。
元々の仕事は宮廷料理人で、王族や貴族相手に料理を振舞っていた。
そんなロブは二〇になる少し前に、同じ料理人である奥さんとなる女性と出会った。
同じ料理人で料理の話をよく行っていた二人は、良い関係へと発展して出会って一年もしない内に結婚。
結婚後は仕事を辞めて、自分達の店を建てたという経歴の持ち主だ。
「道楽でやってる感じか」
「半分そんな感じだな、一応新しい客を店に送るって大事な仕事も任されてるからな」
ハハハッと笑うロブは、ジンの体を見て「ちゃんと食って、体大きくしろよ」と笑みを浮かべて言った。
その後、ロブと別れたジンは宿に帰宅した。
「取り敢えず、目標は達成したな」
パートナー登録、金欠対策の依頼、そして約束していた串焼きの購入。
直近のやる事を終えた俺は、ベッドに座り今後のやる事を考えた。
「まずはランクを上げる事だな……最低でも、銀クラスにならないと生活の水準を上げるのは厳しいだろう」
パートナー登録もしてる為、銀以下だと報酬金を引かれてるので安定した暮らしは出来ないだろう。
だから最低でも銀、行けるなら金クラスまで早々に上げておきたい。
「ただこの世界だと、ランクが上がるのがどれくらいなのかだな……」
調べた限り、木から銅までは意外と上がると調べて分かってる。
ただ銀クラスにあがるには、そこそこ難しい依頼だったりを何件か達成した上に、ギルドからの信頼も必要となってくる。
「ギルドとの信頼関係は、フィーネさんと良好な関係を築いて行けば大丈夫だと思うが、依頼の方だよな……パートナー登録がどこまで活躍するかが、大事になってくるな」
本来であれば俺に回ってこない依頼を回して貰える。
その恩恵を最大限に活かせれば、想定通りに事が進めば最短一ヵ月もあれば銀クラスには行ける。
装備は既に銀クラス相当の物を付けてるから、装備の更新を考えたりしなくて済むのは本当に良かった。
装備と住居に関して暫く考えないで良いのは、冒険者にとっては有難い事だ。
ランクが上がれば仕事の内容も変わって来る為、それに見合った装備を準備していかないといけない。
しかし俺の場合、シンシアのおかげで銀クラスまで装備の心配をしなくても大丈夫な状況だ。
「金に余裕が出来たら、シンシアの店で散財しないとな……」
それ位俺は、シンシアに感謝をしている。
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