第77話 【消えた剣聖・2】
20層の安全地帯、人間だけが使う場所、そこに誰かが居た形跡があった。
そこには微かに魔力が残っていて、その魔力がユリウスさんのだと俺達は【魔力探知】を使って分かった。
ミスリルの事を話した時に20層というワードを気にしてたから、ここかなと思ってたけど当たってたみたいだな。
「このダンジョンにはユリウスさん以外、この数日間入る所は見てないって言ってたからこの魔力はユリウスさんので間違いないよね」
「ああ、間違いない。この魔力はユリウスさんのだ」
王都の周りにはいくつかダンジョンがあり、冒険者はその中から選んでダンジョン探索を行う。
その中に、岩石山のダンジョンは冒険者から中々選ばれる事は無い。
その理由は単純で、ゴーレムを倒すのが面倒だから、その為ここは鉱石を取りに来るか、ゴーレムで力試しをする以外は基本人が来ない。
まあ、だからこそ俺はこのダンジョンで金策をさせてもらってるんだけどな、ゴーレムも倒し方さえ知っていれば簡単に倒せる。
「兵士達は多分、ダンジョンの入口から下る様に捜索をすると思うから、俺達は20層から下に行こうか」
「了解」
それから俺達は安全地帯から21層へと行き、ユリウスさんの捜索を始めた。
「至る所に鉱石が捨ててあるな……基本的に鉄とか、銅だけど……」
「凄いね。これ全部、ユリウスさんがしてるのかな?」
「多分、そうだろうな……」
21層の採掘ポイントに向かった俺達の前に現れた光景は、それは鉱石を大事に扱う鍛冶師やドワーフ達からしたら怒られるような光景だった。
一カ所に集められてるとはいえ、山積みにされて放置されている。
そしてその鉱石を見る限り、この鉱石を掘った人はそこまで採掘の腕が高くない事も分かった。
「奥に行くにつれて少しずつ鉱石の掘り方がよくなってるな……これミスリルを採掘する為に、他の鉱石で試しながら進んで行ってる感じだな」
「一応、見た感じ鉄とか銅は放置されてるけど、宝石系は残ってないみたいだから、そこは選別されてるんじゃないかな?」
「……いや、違うと思う。多分、宝石系って意外と掘るのが難しいから砕けてるんじゃないか? ほらっ、ここに証拠があるよ」
ユリウスさんは選んで捨てて行ってると言ったクロエに、俺は鉱石の山から粉々になった宝石の欠片を取り出した。
それを見たクロエは「あ~……」と何とも言えないといった顔をした。
その後、俺達は21、22、23階と降りて行った。
「なんか逆にここまで来ると、この犯人がユリウスさんじゃない事を願いたくなって来たんだけど……」
「私も同じ気持ちかな……ユリウスさんって凄く優しく、出来る人だなって思ってた分、こんな事されたらちょっとね……」
20層から捜索を続けてる俺達、この3層分全ての採掘ポイントに鉱石の山が沢山築かれていた。
徐々に採掘の腕は上がっていて、宝石の欠片とかも無くなって来てたから、採掘の腕が上がってるのだと思う。
それでも鉱石をあんな山積みで放置して行ってる事に対しては、俺とクロエは少しユリウスさんを幻滅してしまった。
「いくらミスリルが欲しいからって、これは流石に……」
「まあ、取り敢えずユリウスさんを発見してからだな。もしかしたら、ユリウスさんは20層より上で採掘してて、ここの階層を採掘してる人が別にいるかも知れないし」
「……でもユリウスさん以外は来てないって、それに少しだけユリウスさんの魔力も感じるから」
俺の言葉にクロエはそう返し、俺はその言葉に返す言葉無く沈黙して先を進む事にした。
それから暫く捜索を続けていると、奇妙なゴーレムを発見した。
「なんだあの変なゴーレムは……」
「見た事無いゴーレムだね。新しいゴーレムかな?」
「いや、ここに出るゴーレムとは一通り戦ったはずだから、新しいゴーレムが居るって事は……」
俺はそこまで言ってハッとある事を思いだし、鑑定魔法をゴーレムに対して使った。
その結果、そのゴーレムの名前が〝捨てられた鉱石のゴーレム〟という名前だと分かった。
「ッ! クロエ、下がれ! あのゴーレムはやばいッ!」
「えっ?」
急に俺がそう叫ぶと、クロエは一瞬だけ戦わないの? という顔をしたが、直ぐに俺についてその場から離れた。
ヤバかった……ここまで現れなかったから、油断してた。
「ジン君、さっきのゴーレムなんだったの?」
「さっきのあれは、捨てられた鉱石をゴーレムが取り込んだ魔物だ。普通のゴーレムより更に硬く、攻撃力も高くなってるからさっきの状態だと俺達は壊滅させられていた可能性があった」
別に俺とクロエの力なら、倒せなくはないが、あんな油断してた状況ではこっちが倒されていた可能性があった。
だから俺は一先ず逃げて、体勢を整える選択をした。
「ジン君、あのゴーレム倒せるの?」
「ああ、倒せる。強くなったとはいえ、ちゃんと観察して核を見つければ簡単だからな……ただあのゴーレムの核は、鉱石を取り込んだ事で見つけるのが難しい。クロエ、多分俺じゃ見つける事は不可能だから、核を見つける役頼めるか?」
「うん、任せて!」
クロエは俺の頼みに、やる気に満ちた目をしてそう返事をした。
それから俺達は作戦を練り、再び先程の場所に戻って来た。
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